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3 プロポーズ

 こんな女の子、絶対いない!

 まず順を追って説明します。


 私の家は母と私と小学6年生の妹の3人で、父は私が中学を卒業する頃に病気で亡くなりました。

 その後は母も一生懸命働いてくれて、それほど多くもないのですが父の生命保険もあったので、高校進学後も学費と生活費は何とかなる……はずでした。

 ですが、父には借金があったことがしばらくして判明して、その返済にも追われるようになりました。

 あ……別に返せない額ではないんですよ。詳しい額はわかりませんけど、キチンとお話しまして、10年の計画で返済することになってます。

 ですが……母も父を失ったショックからまだ完全には立ち直れていませんし、昔から体が弱いみたいで、このままだと父みたいに倒れたりしないかと心配で……。


 私が高校をやめれば、学費の負担が減って楽にはなるとは思うんです。

 でも母は、キチンと高校を卒業させて、お嫁に出すまで頑張るって言って聞きません。


 奨学金制度ですか? それはもう既に申請しました。

 それでもやっぱり厳しいんです。

 それで、悩んでるところで唯先輩が相談に乗ってくれまして……。


 え? 唯先輩との関係ですか?

 中学のときからお世話になっています。

 一度、貧血で倒れたことがありまして、そのときに介抱していただいたんです。それ以来、話す機会も多くなりまして……。

 裕一さんのことも、よく話してくださいましたよ。

 で、話に戻るんですが、唯先輩に相談したらですね、


『うちのお兄ちゃんと結婚したら? なんかね、お父さんが退職したら私の学費は俺が持つって言ってたから、お金は結構持ってるはずだよ。学費出してもらって、そのまま一生養ってもらったらいいんじゃない? ユッチのお母さんだって、ユッチをお嫁に出せて一石二鳥じゃん。私は卒業したらバイトしながら専門学校行くから、そこまでしてもらう必要ないし』


と、いう答えが返ってきまして。


 最初は唯先輩の馬鹿げた冗談だと思ったんですが……よく考えてみますと中々良い案だと思えたんです。

 ですが、自分の将来が関わるとなれば不安も多いし、裕一さんのことは唯先輩の話でしか聞いたことがありませんでした。

 絶対の条件としては経済力ですが、変な浪費癖だったり、暴力的なところがあるといけませんし、私はタバコを吸う方は生理的に受け付けない体質なんです。

 唯先輩と裕一さんにお話を伺いましたが、裕一さんは十分に条件を満たしています。


 結婚したら、家事は任せてください。掃除も洗濯もお料理も、何でもできます。

 お風呂で背中も流しますし、マッサージも頑張ります。

 でも、高校卒業まで子供は無理なので……それさえ気をつけていただければ、エッチなことも大丈夫です。


 裕一さんの人柄とお力を見込んでこそ、お願いします。

 どうか私と結婚してください。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「無理です」

 目の前の美少女・須藤 結衣の提案に、俺は即座にそう答えた。

「状況は理解できるし、君なりによく考えたのだろうけど、その解決策は行き過ぎだ」

 かといって、彼女の現状に対する解決策が思いつくわけでもない。


 学業のために借金ではなく、経済力のある相手と結婚する……なるほど、考えもしなかった方法だ。


「仮にそうやって卒業したとしよう。その後、君の人生はどうなるんだ? それで幸せなのか? お母さんだって悲しむんじゃないか?」

 俺の問いかけに、彼女は小さく首を横に振り、決意のこもった瞳で真っ直ぐにこちらを見据えて答えた。

「母にこれ以上負担をかけるよりマシです。今度はもし母が倒れたら、私はともかく、妹が耐えられません」

 彼女の決意のこもった眼差しに俺は一瞬だけ怯んだが、すぐに切り返した。

「だとしたら、君がいなくなったら妹さんだってショックだろ? 君が望まない結婚をするほうが、お母さんショックじゃないか?」


「問題ないよ」


 それまで黙って俺と須藤女史のやりとりを見ていた妹が、口を挟んだ。

「ユッチはお兄ちゃんと結婚するだけで、家族と別れるわけじゃないでしょ。お兄ちゃんがユッチを幸せにすれば、ユッチのお母さんも安心するよ。」


 ……ちょっと待て。


「簡単に言うな。女の子一人の人生に責任を持つのと、幸福を保証し実現できるのは大違いだ。俺はそれが出来るほど立派な人間じゃあない。」





「何言ってるの? お兄ちゃんは、十分過ぎるほど立派だよ」

 こういう結婚って、アリだと思いますか?

 感想あれば、よろしくお願いします。

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