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24 チェックメイト

 妹・唯は、お兄ちゃんを追い詰める。

 ねえ、お兄ちゃん……堅固で強い兵団を壊滅させるには、どうすれば良いか知ってる?

 隊列を組ませなければ、何も出来なくて、力を発揮できないんだよ。


 ねえ、真面目過ぎて堅実過ぎて質素過ぎて、煙たがられて誰にも必要にされなかったお兄ちゃん?

 散々みんなに馬鹿にされて、扱き下ろされて、避けられて、置いてきぼりにされて、それでも自分を曲げられなかった……違うね、曲げなかったんだよね。ずっと自分の生き方を信じて頑張ってきたのに、堅物過ぎて誰も寄り付かず、助けてくれなくて……とうとう自信も失って、それでも自分を信じ続けて……今の成功を喜んでも、成果に満足してても、望んで残念男子を自称している自信のないお兄ちゃん?

 そんな謙虚な姿勢を、私は認めないよ。

 お兄ちゃんは十分立派なんだよ。

 既に理解してるよね?


「収入はどのくらいありますか?」


 そんな質問で始まったユッチの進路相談に正直に答えたお兄ちゃんは、自分の力を再認識したはずだ。

 残念男子の謙虚な姿勢……隊列は既に瓦解した。


 チェス盤の上のお兄ちゃんの駒は、最初からバラバラに並んでいたんだよ。


「あなたと結婚するので、私を高校卒業させてください」


 ユッチのこの言葉に、勝負の幕は開く。

 先手を打つのはユッチだ。


「裕一さんのお力と人柄を見込んでこそお願いします。どうか私と結婚してください」


『チェック(王手)』

 お兄ちゃん、ユッチにはお兄ちゃんが必要だよ。

 お人好しのお兄ちゃん、どうするの?


「君が望まない結婚をするほうが、お母さんだってショックだろ?」


 さあ、私はユッチの軍師(クイーン)として戦おう。

「問題ないよ」

「お兄ちゃんがユッチを幸せにすれば、ユッチのお母さんも安心するよ」


「俺はそれが出来るほど、立派な人間じゃない」


 まだわかってないの?

『チェック』

「何言ってるの? お兄ちゃんは十分過ぎるほど立派だよ」


 お兄ちゃんは、もっと自分を高く評価するべきだ。


「お兄ちゃん、よ~く聞いてね」


 ユッチがどれだけ魅力的か、教えてあげる。


「こんな超ハイスペック美少女がお嫁に来るって言ってるのに、何が不満なの?」


「まさかお兄ちゃん、熟女が好きなの? それとも幼女が……」

 痛いなぁ……加減忘れるくらい動揺してる。

 いい感じ。


 あはは……お兄ちゃんが悩んでる。

 やっと自分しか、ユッチを助けられないってわかった?

 そうなると、お兄ちゃんがどうするか、私がわからないと思う?

 ユッチ、今だよ。


『チェック』

「私は何の対価も払わず、助けてもらいたくありません」

「私も裕一さんのために何かをするべきです」


 ねえ、律儀なお兄ちゃん?

 これは納得せざる得ないでしょ?


 あはっ! やだなあ……お兄ちゃん、動揺して転けちゃった♪


 しっかりしてよ……リザイン(投了)にはまだ早いよ。


「君のお母さんはなんて言ってるの?」


 本当に、往生際が悪いね。

 最後まで理性に従って、道義的で……そんなお兄ちゃんが私は好き。

 いい逃げ道を見つけたね。

 きっと今、落とし所を考えてるでしょ?


 さあこれで……『チェックメイト(王手詰み)』

「ユッチのお母さんは私が説得済みだよ」




 ねえ、どうする、お兄ちゃん?


 ユッチがお兄ちゃんを見つめている。

 目を左にそらせば、私が見つめる。

 後ろと右は壁で、逃げ場はないよ。


 隊列(残念な謙虚さ)が崩れ、『僧侶((ビショップ)』(お人好し)も『騎兵(ナイト)』(律儀さ)も逆手に取られて、常識的対応をとろうとして『軍師(クイーン)』(常識)も通じなくて……、ユッチと私の視線に追い込まれて、お兄ちゃんの『歩兵(ポーン)』(余裕)はどんどん狩られていく。

 隊列が崩壊して、精鋭を失い、『指揮官(キング)』(お兄ちゃんの精神)は麻痺している。


 ねえ、お兄ちゃん。

 真面目ばかりで疲れたでしょ?

 可愛いお嫁さんの前に、堕ちちゃいなよ!

 今まで頑張ってきたんだから、そのくらい、罰は当たらないよ。


 まだ、お兄ちゃん考えてる。

 さすが堅実なお兄ちゃんだね。『キャスリング(入城)』(自律&自立)がしっかりしてて、頭が堅すぎてなかなか堕ちないや。


 でもどうやって、この盤面を挽回するの?




「だから何だ……、俺は帰る」

 お兄ちゃんの答えは?

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