表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/65

20 考える結衣(2)

 妹・麻衣の思いに結衣は……?

 麻衣はあの時、公園にいたの?

 私と唯先輩の話を聞いていたの?


 とても信じられなくて起き上がった私を、妹は真っ直ぐに見つめていた。

「お姉ちゃん。私は先輩さんを信じていいと思う。お姉ちゃんは会ったことないみたいだけど、お兄ちゃんは優しそうな人だったよ。お父さんが死んじゃう前に1回だけお兄ちゃんと会ったんだけど、先輩さんがあんなに甘えてるところ、幸せそうに笑ってるところ……あの時以外に見たことがなかったよ。だからきっと、お姉ちゃんは幸せになれるよ」

 そう言って妹はベッドから降りると、窓から差し込む月明かりに照らされて、とても小学生の子供とは思えない大人びた顔で、目で、声で、

「だからお姉ちゃんは、お兄ちゃんと結婚して。大丈夫……お母さんは、私が頑張って支えるから」

そう言って、どこか寂しそうに、私に笑いかけてくれた。

 大きな瞳の奥に、何か決意が滲んでいるように見えた。

 そして、いつもの子供っぽい無邪気な笑みに戻ると、

「大丈夫だよ。私が小さいときから、お姉ちゃんは家の事何でもやってたでしょ? お姉ちゃんの妹の私に、できないわけないじゃん? お掃除もお洗濯も、お料理もお買い物だって、お仕事してるお母さんのサポートは、私にぜーんぶ任せてよ。」

ね? と可愛らしく小首を傾げて言ったのだった。

「麻衣は……強いね」

 気づいたときには、私は妹を抱きしめていた。


 私はそれから、唯先輩の語ってくれたお兄さんの話や、麻衣の見たお兄さんの話、お母さんがお兄さんと会った時の話を思い出しながら、ずっと考え続けた。

 考えて、考えて、考えて……それでもまだ不安で、また考えて……。


 唯先輩……私は決めたよ。


 期末試験が終わった日、私は入学してから初めて、唯先輩のいる教室を訪ねた。




「唯先輩……お兄さんに、会わせて下さい」

 結衣の答えは?

 運命の日は刻一刻と近づく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ