20 考える結衣(2)
妹・麻衣の思いに結衣は……?
麻衣はあの時、公園にいたの?
私と唯先輩の話を聞いていたの?
とても信じられなくて起き上がった私を、妹は真っ直ぐに見つめていた。
「お姉ちゃん。私は先輩さんを信じていいと思う。お姉ちゃんは会ったことないみたいだけど、お兄ちゃんは優しそうな人だったよ。お父さんが死んじゃう前に1回だけお兄ちゃんと会ったんだけど、先輩さんがあんなに甘えてるところ、幸せそうに笑ってるところ……あの時以外に見たことがなかったよ。だからきっと、お姉ちゃんは幸せになれるよ」
そう言って妹はベッドから降りると、窓から差し込む月明かりに照らされて、とても小学生の子供とは思えない大人びた顔で、目で、声で、
「だからお姉ちゃんは、お兄ちゃんと結婚して。大丈夫……お母さんは、私が頑張って支えるから」
そう言って、どこか寂しそうに、私に笑いかけてくれた。
大きな瞳の奥に、何か決意が滲んでいるように見えた。
そして、いつもの子供っぽい無邪気な笑みに戻ると、
「大丈夫だよ。私が小さいときから、お姉ちゃんは家の事何でもやってたでしょ? お姉ちゃんの妹の私に、できないわけないじゃん? お掃除もお洗濯も、お料理もお買い物だって、お仕事してるお母さんのサポートは、私にぜーんぶ任せてよ。」
ね? と可愛らしく小首を傾げて言ったのだった。
「麻衣は……強いね」
気づいたときには、私は妹を抱きしめていた。
私はそれから、唯先輩の語ってくれたお兄さんの話や、麻衣の見たお兄さんの話、お母さんがお兄さんと会った時の話を思い出しながら、ずっと考え続けた。
考えて、考えて、考えて……それでもまだ不安で、また考えて……。
唯先輩……私は決めたよ。
期末試験が終わった日、私は入学してから初めて、唯先輩のいる教室を訪ねた。
「唯先輩……お兄さんに、会わせて下さい」
結衣の答えは?
運命の日は刻一刻と近づく。