第8話 アタックアニマル学園
カイコ「ただいま~。また遅れちゃった~」
ミコ「お帰りなさいませ、カイコ姉様」
チョコ「カイコ姉、また委員会だったのか?」
カイコ「いえ、今日はちょっと、呼び出しが……」
チョコ「なにやらかしたんだよ、カイコ姉!」
ミコ「待ってください、チョコ姉様。呼び出しといっても、先生からとは限りません」
チョコ「なるほど」
ミコ「中庭の隅に呼び出されて、僕とつき合ってください、と……」
チョコ「カイコ姉じゃ、それはないな」
カイコ「ちょ……ちょっと、どういう意味よ~? ……確かに違うけど……」
チョコ「とすると……果たし状ってやつか!? 校舎裏でタイマンだな!?」
ミコ「おおっ! それも燃える展開です!」
カイコ「私はスケ番じゃないわよ~」
チョコ「スケ番って死語じゃないか? やっぱカイコ姉、年齢査証してるだろ?」
カイコ「してないってば~。普通に先生に呼び出されただけよ~」
ミコ「普通は呼び出されないです、カイコ姉様」
カイコ「う……」
チョコ「それで、結局なにをやらかしたんだ?」
カイコ「やらかしたわけじゃないわ~。掃除をちゃんとやれって叱られただけよ~」
ミコ「……やらかしてるじゃないですか。掃除をサボっていたんですよね?」
カイコ「う~、私はちゃんとやってたのよ~? でも他の人たちが遊んでて、
私が班長だからってことで、呼び出されちゃったの~」
チョコ「なるほどな。しっかり班員をまとめろ、ってことか」
ミコ「それにしても、カイコ姉様に逆らうだなんて、命知らずな人たちですね」
カイコ「学校ではおしとやかな女の子なのよ~」
チョコ「やっぱ、猫かぶってるじゃん」
カイコ「なによぉ~?」
ミコ「今日もあまりゲームをする時間がないですね」
チョコ「さくっとクリアできそうなのをやればいいさ!」
カイコ「ごめんね~」
チョコ「謝ることじゃないだろ。あっ、ところでさ、RPGとかシミュレーションとか、
時間のかかりそうなゲームなんかもあるじゃん?
そういうのって、どうするんだ? 大抵、カイコ姉の担当になると思うけど」
カイコ「う~ん、そうね~。みんなで一緒に楽しむのが基本だものねぇ~。
とりあえず、序盤だけ遊ぶって感じでもいいけど……」
チョコ「ま、実際やるときになってから考えればいいか」
ミコ「そうですね。それで、今日はなにをしましょうか? ミコの担当でしたよね?」
チョコ「ふっふっふ、今回はコレだ!」
ミコ「アタックアニマル学園、ですか?
動物がたくさん出てきて可愛らしいゲームっぽいですね」
カイコ「ふふっ。難易度は高いらしいわよ~」
ミコ「高難易度ということは、シューティング系ですね?
ミコにかかれば、どんな弾幕も怖くないです」
チョコ「まぁ、3Dシューティングだけどな」
ミコ「3D系ですか。ちょっと苦手ですが、問題ありません!」
カイコ「ふふっ、頑張ってね~」
チョコ「オレのためにな!」
ミコ「???」
☆☆☆☆☆
チョコ「んじゃ、ゲームスタート!」
ミコ「……おや? 主人公、女の子なんですね」
カイコ「主人公はスケ番よ~」
チョコ「カイコ姉だな!」
カイコ「違う~! ノッコって名前みたいよ~。
誘拐された親友を救うため、アニマル学園連合に立ち向かう、
っていうストーリーになってるわね~」
チョコ「なんだよ、アニマル学園連合って……」
カイコ「まぁ、名前のとおりでしょ~? 敵は動物とかが多いみたいね~」
ミコ「動物じゃないのも、いろいろと出てくるみたいですが……」
チョコ「どうでもいいけど、こういうゲーム、なんか見たことある気がするんだが」
カイコ「ふふっ、スペースハリアーね~」
チョコ「そうそう、それだ!」
ミコ「ミコもなんとなくわかります。遊んだことはないですが」
チョコ「完全にパクり……?」
カイコ「ゲームシステム部分はほぼ一緒よね~」
ミコ「まぁ、システムをマネしたらダメってことになったら、
なにも作れなくなってしまいますよね」
チョコ「それもそうか」
カイコ「流行り物をマネするのは、基本だものね~」
チョコ「ちなみにこのゲーム、3Dシステム対応だ!」
ミコ「3Dシステム……ですか?」
カイコ「専用の3Dメガネをかけると、立体的に見えるモードがあるのよ~」
ミコ「この頃の3Dっていうと、赤青メガネとかですか?」
チョコ「ディスクシステムで発売された、とびだせ大作戦ってゲームだと、
そういうメガネが付属してたみたいだけどな。でもこれは違う」
カイコ「セレクトボタンを押してみなさいな」
ミコ「ふむ。ぽちっ。……ブレた映像になりましたね。ですが、赤青じゃありません」
カイコ「左右の映像を交互に表示して、メガネのほうでも左右を交互にシャットアウト
する方式で、左右の目に別々の映像を映すって感じになってるのよ~」
ミコ「そ……それって、今ある3Dテレビと同じなんじゃ……?」
チョコ「そのとおりだ! 実はこんなに前から実現していた技術だったんだな!」
カイコ「もっとも、ハード性能の問題で左右の切り替え速度が遅いから、
とっても目が疲れるっていう問題点があったみたいだけどね~」
チョコ「時代を先取りしすぎたんだな!」
カイコ「実際、対応ソフトもあまり出なかったみたいよ~。
それに、メガネだけでソフト1本分くらいの値段だったらしいし~」
ミコ「バーチャルボーイよりも前に、そんな失敗もあったんですね、任天堂」
カイコ「その黒歴史には、触れないでおいてあげましょう~」
チョコ「ま、3Dメガネはないみたいだから、普通のモードに戻そうゼ!」
カイコ「そのままだと、単なるブレた画面なだけだものね~」
☆☆☆☆☆
ミコ「1面のボスまで来ましたよ」
チョコ「コアラがガクラン着てるぞ!」
カイコ「さすが、アニマル学園ね~」
ミコ「どうでもいいですけど、すごく目つきの悪いコアラです」
チョコ「ちなみにボスは倒せない。周囲を飛んでるザコを全滅させたらクリアだ!」
ミコ「ボス、意味ないじゃないですか……」
カイコ「弾はたくさん撃ってくるわよ~」
チョコ「取り巻きがいなくなったら、覚えてろよ~! って言って逃げるってことか!」
ミコ「倒せないボスなんて、納得いかないです……」
カイコ「と言いながら、倒したわね~」
チョコ「ザコが全滅したら、ボスも爆発したな!」
ミコ「ほんとに、納得がいかないです……」
(それはともかく、2面スタート)
ミコ「背景の色が変わりましたね」
カイコ「砂漠とかのイメージかしら~?」
チョコ「いや、もっと別のところに注目しようゼ!」
カイコ「え……?」
ミコ「あ……主人公のスカートが短くなってませんか?」
カイコ「あら、ほんと」
チョコ「うむ、そのとおり! かなり際どいところまで見えてるな!」
カイコ「……チョコ、これが楽しみだったわけね……」
ミコ「脱衣シューティングですか? もしかして18禁……」
チョコ「ファミコンにそんなのないって!」
カイコ「それに、ファミコンの絵で、しかも小さめのドット絵じゃあ……」
チョコ「そこは妄想力でカバーするのさ!」
ミコ「チョコ姉様といいカイコ姉様といい、妄想パワーが凄まじすぎですね」
カイコ「ちょっと、私までこんな変態と一緒にしないでよ~」
チョコ「さらっと変態って言いやがった!」
ミコ「同じ穴のムジナです」
カイコ「……ムジナは出てこないのかしら~」
チョコ「出てきたとしても、このゲームじゃ可愛くなさそうだけどな」
ミコ「そして出てきた敵は、ガイコツです」
カイコ「アニマルじゃない……」
チョコ「動物の骨なんだろ! 明らかに人間っぽいけど……」
ミコ「サルとかチンパンジーとかだと考えておきましょう」
カイコ「そうだとしても、骨が襲いかかってくるのは恐ろしいわ~」
☆☆☆☆☆
(そんなこんなで2面もクリア)
チョコ「さて、3面だ!」
ミコ「また、変わりましたね、主人公の服装が」
カイコ「体操服ね~」
チョコ「下はブルマだ!」
カイコ「今ではブルマは穿かないものね~。時代を感じるわ~」
ミコ「どうでもいいですが、どうして体操服に着替えたのでしょう?」
チョコ「2面までの戦いで暑くなったんだろ。汗もかくだろうしな!」
カイコ「2面でスカートが短くなってたのも、暑かったからだったのね~」
チョコ「ちなみに3面は、火山ステージだ!」
ミコ「ちょ……っ!? 戦いの舞台は、アニマル学園連合じゃなかったんですか?」
チョコ「火山地帯にある学校って設定なんだろ!」
カイコ「そんな場所の学校になんて、通いたくないわね~」
ミコ「ですが、確かに火山地帯なら暑いのも頷けますね」
(そして3面もクリア)
チョコ「で、4面だな!」
ミコ「今度は、スクール水着ですか……」
カイコ「どうして水着に……」
チョコ「ここは、水中ステージだからな!」
ミコ「水中なんですね。たしかに泳いでますが」
カイコ「いや、それを言ったら、3面までは空を飛んでたわよ~?」
チョコ「……そこはスルーで!」
カイコ「理由が思いつかなかったわね……?」
ミコ「ところで、ここが水中だとして、どうやって息をしているんでしょう?」
チョコ「ずっと息を止めてるんだよ! スケ番だから我慢強いんだ!」
カイコ「凄まじく長く息を止めていられる人なのね~」
チョコ「世界記録保持者だ! ギネスにも載ってる!」
カイコ「勝手な設定を追加しないの~」
ミコ「あっ、よく見ると、足がヒレみたいになってますね」
チョコ「超高速で泳げる足ヒレを装備してるんだゼ!」
カイコ「また勝手な設定を……」
(4面も楽々クリア)
カイコ「次は5面ね~」
ミコ「これは……なんでしょう?」
チョコ「よくわからんコスプレだ!」
カイコ「コスプレって言っちゃった~」
ミコ「一応、なにかの制服なんでしょうかね?」
チョコ「知らないが、ステージクリア後に生着替えしてると考えると、萌えるよな!」
カイコ「同意を求めないで~」
ミコ「どうでもいいですが、この面の背景は暗いですね」
チョコ「暗闇面だからな!」
カイコ「どういう設定なのかしらね~?」
チョコ「細かいことは気にするな!」
☆☆☆☆☆
チョコ「よし、6面、すなわち最終面だ!」
ミコ「結構短いですね」
カイコ「……そして、別の短いものを発見しちゃったわ……」
ミコ「見たところ、2面と同じでセーラー服姿ですが……おや?」
チョコ「そう。スカートがさらに短くなってるんだゼ!」
カイコ「っていうか、見えてるわよね~?」
チョコ「うむ! 完全にパンチラだ! いや~、いい眺めですな~! じゅるり」
ミコ「1ドット分、白いのが見えているだけですが……」
チョコ「そこはもちろん、妄想力だ!」
カイコ「はいはい。もうツッコミは入れないわよ~」
ミコ「この面は、雲が見えてますね」
チョコ「空中ステージだからな!」
カイコ「え? 地面、あるけど……」
チョコ「それは地面じゃないんだ! 見えてるけど、ほんとは見えてないんだ!」
ミコ「とにかく、さくさく進めますよ」
カイコ「難しいかと思ったら、そうでもないみたいね~」
ミコ「ミコにかかれば、ちょちょいのちょいです」
チョコ「きっとカイコ姉だとトロいから、ボコボコにされると思うゼ!」
カイコ「うっ、確かにそうかも……」
チョコ「そして哀れスケ番カイコは敵に捕まり、あんなことやこんなことを……」
カイコ「ちょっと、変な想像しないの~! っていうか、私はスケ番じゃない~!」
ミコ「まぁまぁ。あっ、どうやらラスボスのようです」
チョコ「ラスボス、ヤマタノオロチだな!」
ミコ「頭が2つしかないですが……」
チョコ「6本の頭は散歩中だ!」
カイコ「頭だけで出かけることができるんだ……」
チョコ「ちなみに攻略法は、今までのボスと変わらない!」
ミコ「周りのザコを倒すだけですね」
カイコ「結局ラスボスまで、そうなのね~」
☆☆☆☆☆
(というわけで、ラスボスも撃破)
ミコ「倒しました」
カイコ「あっ、女の子が倒れてるわ~」
チョコ「親友だ! 名前は無い!」
ミコ「名前くらいつけてあげればよかったのに……」
チョコ「親友に駆け寄る主人公。そして――」
ミコ「倒れてる親友を心配して、前かがみになって声をかけてる感じですかね」
カイコ「だけど、スカートが短いから……」
チョコ「うむ! もちろん、パンチラだ! 今度は2ドットある!」
ミコ「2倍に増えましたね」
カイコ「たった2ドット……」
チョコ「されど2ドットだ! じゅるっ」
カイコ「はぁ……。どうでもいいけど、チョコだって女の子なのに、
女の子のパンツを見て嬉しいの~?」
チョコ「なんか、いいじゃん!」
ミコ「いいんですか……」
カイコ「……チョコ、もしかして、以前撮った私のパンチラ写真も、
そういう目で見てたりするの~?」(若干引き気味)
チョコ「いや? カイコ姉のじゃ萌えないしな~」
ミコ「1ドットに負けましたね、カイコ姉様」
カイコ「べつにいいんだけど、なんだか納得がいかない気もするわ……」
チョコ「画面はエンディングになってるな!
親友の肩を抱きながら、画面に向かって銃を撃つ。いいシーンじゃないか!」
カイコ「どうして銃を撃ってるのよ……」
ミコ「撃った瞬間、主人公と親友が目をつぶってるのが、ちょっと細かいですね」
チョコ「うむ! それにしても、今日は堪能した!」
カイコ「なんだか、実際にゲームをしていたミコよりも満足そうね~」
ミコ「それで、今日の夕飯はなんでしょう?」
カイコ「それはもちろん、食パン2枚で……」
チョコ「パン2(ツー)かよ! そんな小学生みたいなダジャレなんて……」
ミコ「それに、夕飯のメニューじゃないです」
カイコ「ごめんなさいね~。
今日は遅くなると思ってなかったから、なにも用意してなかったのよ~」
チョコ「む~……」
カイコ「とろけるチーズがあるから、コーンとかハムとかを乗せて焼きましょうか」
ミコ「ミコはとろけるチーズ大好きです!」
チョコ「朝食みたいだけど、ま、いいか。今日は堪能したし!」
カイコ「そればっかりね~。やっぱりチョコは、変態だわ~」
チョコ「カイコ姉も大概だけどな。こんなBL本読んでるし」
カイコ「ちょっ!? 勝手に人の部屋のものを持ってこないで~!」
(チョコとカイコの、取っ組み合いのケンカが始まる)
ミコ「おふたりとも、いつもどおりです。そんな姉様方が、ミコは大好きです」
カイコ・チョコ「……ミコも変わってるわよね~(よな~)」
ミコ「ど……どうしてですかっ!?」
☆☆☆☆☆
今日のゲームは、アタックアニマル学園……か。
どうしてこんなのを買ったんだったっけな……。
さすがにソフト1本分の値段という、3Dメガネは持っていなかったが。
それにしても、主人公はスケ番だったのか。
スケ番といえば、スケ番刑事なんかも流行ったが……って、全然関係ないな。
チョコはカイコをスケ番呼ばわりしていたが、そんな雰囲気でもないだろうに。
もちろん、家では長女としての役割を果たしているから、妹たちにしてみれば怖い存在なのだろうが。
足もとまであるくらいの長いスカートにマスクをして、釘バットやらチェーンやらを持っているカイコの姿は、ちょっと見てみたい気もするな。
……イメージが古すぎるだろうか……。
☆☆☆☆☆
【ゲーム解説】
「アタックアニマル学園」
対応ハード:ファミコン 発売元:ポニーキャニオン 発売日:1987年12月26日
ほぼ、セガの『スペースハリアー』のシステムそのままといった感じの3Dシューティングゲーム。
主人公がスケ番のノッコで、ステージごとに衣装が変わるのが特徴的。
ファミコン3Dシステムに対応していて、専用のメガネで立体視が可能。
本編では触れいないが、お地蔵さんを取るとパワーアップする。
スタート時、弾は画面上に2発までしか出ないが、最大4発まで出せるようになる。
お地蔵さん1つ取るごとに、3連射、スピードアップ、4連射、スピードアップ、1UPとなるらしい。
また、お地蔵さんを1UPまで取ると、ショットで障害物も破壊できるようになる。