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第3話 たけしの挑戦状

チョコ「というわけで、今回はたけしの挑戦状だ!」


カイコ「ちょちょちょ、ちょっと待って! ほんとに、それなの~?」


チョコ「もちろん!」


カイコ「今回って、私の担当よね~?

    これ、アドベンチャーゲームなの~? アクションゲームじゃあ……」


ミコ「アクションアドベンチャーゲームですから、カイコ姉様の担当で間違いないです」


チョコ「そういうことだ。観念しな!」


カイコ「ううう……だけど、いろいろ噂くらいは知ってるのよ~?

    1時間待たないとダメな部分があるとか……」


チョコ「ま、そこは別の方法もあるみたいだけどな!

    もっとも、苦労するとは思うけど。ひっひっひ!」


ミコ「チョコ姉様が悪魔のようです。

   普段の仕返しをしようとほくそえんでます」


カイコ「やっぱり、そういうことなのね~……」


チョコ「いやいや、せっかくオヤジが遺してくれたゲームなんだぞ?

    ちゃんと遊んでやらなきゃ、バチが当たるってもんだろ!」


カイコ「でも、おそらくお父さんも、こんなゲームクリアしてないと思うわ……」


チョコ「こんなゲームって言うな! 世界の北野に怒られるぞ!」


カイコ「きっと、怒らない気がする……。

    それにこのゲーム、クソゲーの代表とも言われてるわよね……」


ミコ「カイコ姉様、往生際が悪いです。早く始めましょう!」


カイコ「ううう、わかったわよぉ~。

    ふたりにはベタなゲームを指定したのに、どうして私だけ……」


チョコ「これもある意味ベタだろ! 80万本くらい売れたらしいし!」


ミコ「80万本も売れたクソゲー……。なんだか、凄まじいですね」



 ☆☆☆☆☆



ミコ「それでは、ゲームスタートです」


カイコ「ここは会社みたいね~」


チョコ「うだつの上がらないサラリーマンが主人公らしい」


カイコ「そんな主人公、嫌だわ……」


チョコ「左が社長室みたいだぞ」


カイコ「ふむ……。あっ、ボーナスをもらえたわ~!」


ミコ「今どき現金手渡しなんて、珍しいですね」


チョコ「今どきのゲームじゃないしな、これ」


ミコ「そうでした」


カイコ「社長さん、ありがとう~。……あっ!」


チョコ「うわっ! カイコ姉、ひどっ! 社長を殴ったぞ!」


ミコ「ボーナスのお礼は、こぶしですか……」


カイコ「そ……そんなつもりはなかったのよ~?

    ただ、ボタンを間違えて押しちゃただけで~……」


チョコ「ま、せっかくだし、殴り殺しとけ!

    このゲームならできるし!」


カイコ「ひ……ひどいゲームね……。そこまで悪女じゃないわ、私~」


ミコ「すでに一発殴ったあとですから、あまり説得力はありませんけどね」


カイコ「うるさいわね~。とにかく、会社の外に出るわ~」


チョコ「頑張れ、カイコ姉!」


カイコ「……きゃっ、いきなりヤクザに殴られたんだけど~!?」


ミコ「恐ろしい町ですね」


カイコ「えっ? 今度は警官まで殴ってきたわよ~!?」


ミコ「どうやら、警官じゃなくてガードマンらしいですけどね」


チョコ「ふっふっふ、世の中の厳しさを思い知れ!」


カイコ「こんな世の中、ありえないわ……」


ミコ「カイコ姉様、そんなにのんびりしてると……」


カイコ「ああ~、殴り殺された……?」


チョコ「へっへっへ、ゲームオーバーだな!」


ミコ「葬式が始まりました……」


カイコ「悲しい結末ね……。それじゃあ、今回はこれで終わ――」


チョコ「終わらね~よ! しっかりクリアするまでやるんだ!」


カイコ「えええ~~~~っ!?」


チョコ「くっくっく、血反吐を吐いても終わらないからな! 覚悟しとけ!」


ミコ「チョコ姉様が極悪人です……」



 ☆☆☆☆☆



  (カイコ、どうにか頑張って進めようとするも、まったくわからず)



カイコ「ううう……」


ミコ「何度目の葬式でしょうか……」


カイコ「こんなの無理……。どうすればいいのか、全然わからないわ~……」


チョコ「いっひっひ、カイコ姉が涙目になってるなんて、珍しいよな!」


カイコ「む~……」(いらいらいら)


ミコ「……さすがにちょっと、かわいそうな気がしてきました……」


チョコ「確かに、これ以上やると、イライラで大爆発しそうだよな。

    そんなカイコ姉の姿も見てみたいけど……」


ミコ「ですが、確実にミコたちにも被害が及びますよ」


カイコ「がるるるるるる~」


チョコ「うなり始めた! 限界が近いか! ……仕方がない!

    カイコ姉! オレが攻略サイトを見ながらナビするから!

    だからファミコンを破壊するなよ!」


カイコ「そ……そんなことしないわよ~! でも、ナビはお願い……」


チョコ「お願いしますだろ?」


カイコ「お……お願いします……」


チョコ「く~っ! 気分いいな!」


ミコ「……チョコ姉様、調子に乗ってると今度逆襲されますよ?」



 ☆☆☆☆☆



チョコ「とりあえずな、このゲーム、死んでも大丈夫だ」


カイコ「えっ?」


チョコ「死んで手足をバタバタしてるあいだに、

    Bボタンを押しながらAボタンを3回押すとその場で復活するんだ」


カイコ「な……なによそれ~!?」


チョコ「しかも体力も満タンで復活だ」


ミコ「……ゲームバランスもなにも、あったもんじゃないですね……」


チョコ「それと、セレクトボタンでメニューを開いて戻ると敵が消えるってのもある。

    これを使えば、殴られずに進むことができるぞ」


ミコ「……それもまた、ゲームバランス崩壊な感じですね……」


チョコ「バランスだとか、そんなことを考えちゃいけないんだよ!」


カイコ「やっぱり、凄まじいゲームね~」


チョコ「あとは、セレクトメニューの『おわる』でパスワードが見れる。

    それをメモっておけば、途中から再開可能だ。

    座標まで残るわけじゃないから、そんなにこまめにメモする必要はないけどな」


ミコ「パスワード……。セーブ機能はないんですね……」


カイコ「この頃のゲームだと、それが普通だったみたいだけどね~」



  (ともかく、チョコのナビに従いゲームを進めるカイコ)



チョコ「社長にボーナスをもらうだけじゃなくて、辞表を提出して退職金ももらうんだ」


カイコ「ボーナスをもらってすぐに辞めるのね……。なんだか、ひどい社員だわ~」


チョコ「当然の権利だろ!」


ミコ「ついでに、植木の中のへそくりも持っていきましょう」


カイコ「……窃盗になるんじゃないかしら……」


チョコ「気にしない気にしない! さあ、次は、カルチャークラブで技能習得だ!」


ミコ「ひんたぼ語、ハンググライダー、三味線の3つですね」


カイコ「ひんたぼ語……。そんな変な言語を覚えなきゃならないのね……」


チョコ「それじゃあ、ここから先は、ひんたぼ語で会話してみよう!

    カイコ姉、どうぞ!」


カイコ「ええっ!? え~っと……。

    ひんたぼうんたぼ……って、喋れるわけないでしょ~!」


チョコ「一瞬カイコ姉が壊れたみたいだったゼ! 面白かった!」


ミコ「今日のチョコ姉様は、とっても活き活きとしてますね」


チョコ「次は、トラベル玉川で南太平洋行きのチケットを買うぞ!」


カイコ「……もう、ストーリー展開とか完全無視って感じなのね~」


ミコ「攻略することが前提のやり方っぽいですからね、そんなもんでしょう」



 ☆☆☆☆☆



チョコ「次はパチンコ屋だ!」


ミコ「まだ18歳になってませんから、ダメですよ」


カイコ「主人公はサラリーマンだから問題なしよ~」


チョコ「そうそう。カイコ姉はおばさんだから問題なしだ!」


カイコ「ちょっと!? 私じゃなくて、主人公よ~!」


ミコ「玉を100発買いましょう」


カイコ「一番安い100発でいいのね? それじゃあ、パチンコスタート~!

    ……なによ、全然入らないじゃない……」


チョコ「下手くそだな! まぁ、それでいいんだけど」


カイコ「む~。玉がなくなっちゃう」


ミコ「そこでコレの出番です!」


カイコ「2コン?」


チョコ「そうだ。玉が0になったら、2コンのマイクで叫ぶんだ!

    玉が出ね~ぞ、こら~! ってな!」


カイコ「あのねぇ……」


ミコ「いえ、カイコ姉様、これは本当です。攻略サイトにも書いてあります」


カイコ「ええっ!?」


チョコ「ほら、玉がなくなるぞ! カイコ姉、でっかい声ではっきりと叫べよ!」


カイコ「う……、わかったわよ。ふぅ~……。

    た……玉が出ね~ぞ、こら~!」


ミコ「おお~! カイコ姉様らしからぬセリフです!」


チョコ「結構燃えるシチュエーションだな!」


カイコ「変なことに燃えないで……」


チョコ「のんびりしてる暇はないぞ! ヤクザが出てきてる!

    さくっと殴り倒してしまえ、暴れん坊カイコ!」


カイコ「誰が暴れん坊よ! ……えいえいえい、倒したわ~!」


ミコ「さすがカイコ姉様です」


カイコ「ミコも密かに、私を陥れて楽しんでる感じよね……」


ミコ「い……いえ、そんな、めっそうもございません……」


カイコ「どうして目を逸らしてるのかしら~?」


チョコ「まぁまぁ。

    とりあえず、玉を5000発ゲットしたから、それを三味線に交換だ」


カイコ「ヤクザからパチンコ玉を巻き上げるなんて……。

    この主人公、ほんとに、うだつの上がらないサラリーマンなの~?」


ミコ「カイコ姉様、細かいことを気にしてはいけません。

   スーパーマリオのときに、さんざん言われましたよ?」


カイコ「そ……そうだったわね……」



 ☆☆☆☆☆



チョコ「さて、次はカラオケスナックあぜ道だな!

    とりあえずお酒を2杯飲んで3杯目を断ると、カラオケタイムだゼ!」


カイコ「なんだか、嫌な予感……」


ミコ「…………」



  (ミコは無言で、2コンをカイコに手渡す)



チョコ「さあ、歌え!」


カイコ「やっぱり~!」


チョコ「選べるのは4曲しかないけどな。

    元気よく、はっきりと、大声で歌うんだぞ!」


ミコ「3回連続で、上手いと褒められないといけないんですよね」


チョコ「演歌を選んだな! 雨の新開地、歌うは我が家の長女、カイコ~!」


ミコ「よっ、待ってました!」(パチパチパチ~!)


カイコ「ちょ……ちょっと、そういうのやめてよ~」


チョコ「ほら、始まるぞ!」


カイコ「あ……あ~なた~のた~めな~ら……」



  (恥ずかしがりながらも歌いきるカイコ。でも――)



チョコ「下手くそ! だってさ!」


ミコ「1度でも下手くそ判定になったら、お酒を飲むところからやり直しだそうです」


カイコ「むむむ……面倒なのね……」



  (再びカラオケに挑戦するカイコ。だけどやっぱり――)



チョコ「下手くそ! もっと大声でしっかり歌え!」


ミコ「カイコ姉様、他の歌もありますよ? はとぽっぽとか……」


チョコ「おっ、そっちのほうがバカっぽい! じゃなくて……」


カイコ「本音がだだ漏れね……」


チョコ「ともかく歌え! カイコ姉、はとぽっぽだ!」


カイコ「わかったわよ~。ぽっぽっぽ~、はとぽっぽ~……」



  (何度も何度も挑戦。だけど、どうしても成功せず)



カイコ「ううう……」


ミコ「またしても、カイコ姉様が涙目に」


チョコ「やっぱ気分いいな! ま、これくらいで許してやるか!」


カイコ「え……?」


チョコ「ここ、2コンのマイクで歌わなくても大丈夫な方法があるんだよ」


カイコ「さ……先に言いなさいよ~!」


ミコ「まぁまぁ、カイコ姉様。チョコ姉様の首を絞めないでください」


チョコ「ごほごほっ! マジで首を絞めてくるとは、カイコ姉、ひどいゼ……。

    ともかく、2コンの下+Aボタンでマイクの代用もできるんだ。

    それで、歌い始めから押しっぱなしにして、最後にウィンドウが消える瞬間、

    ボタンを離すようにすると、結構楽にクリアできるみたいだゼ!」


カイコ「知ってて教えないチョコのほうが、よっぽどひどいわ……。

    ああ……私、何度も大声で歌っちゃった……。

    ご近所に聞こえたりしてないかしら……」


チョコ「バッチリ聞こえてたと思うゼ!」


カイコ「ううう……」



  (ともかく、どうにかカラオケをクリア)



ミコ「あっ、ヤクザが出てきました」


カイコ「またなのね~」


チョコ「さくっと倒しちゃえ、カイコ姉」


カイコ「はいはい」


ミコ「殴り倒すことにも慣れてきましたね、カイコ姉様。さすがです」


カイコ「もう、ミコったら、またそんなことを~。……ヤクザ退治終了っと」


チョコ「完全に慣れてるじゃん。ほら、じいさんが出てきたぞ」


ミコ「殴り倒すんですね!」


カイコ「あなたたちは、また、そういうことを……。

    殴ったりなんて、しないわよ~。私はおしとやかな淑女なんですから」


チョコ「…………」(ニヤリ)


カイコ「……?」


チョコ「まぁ、とりあえず、ホステスが邪魔だから倒そう」


カイコ「ちょ……ちょっと、それはひどいでしょ~!」


ミコ「いえ、倒さないとじいさんが話しかけてくれないみたいです」


カイコ「えええ~? そうなの~? ……仕方ないわね……」


チョコ「容赦なくホステスを殴り倒すカイコ姉!」


カイコ「私じゃなくて主人公が勝手にやっただけよ~」


ミコ「……じいさん、白い紙を渡してくれましたね」


カイコ「あっ、これ知ってるわ~。1時間待つとかいう……」


チョコ「大丈夫。水に浸けるを選べば、5分待ちでOKだ」


カイコ「それでも5分は待つのね……」



  (そして、5分後)



チョコ「ここで歌うと、地図が浮かび上がるんだ!

    さあ、カイコ姉、マイクに向かって歌うんだ!」


カイコ「歌わないわよ~! ……2コンの下+A……っと」


ミコ「む~、つまらないです、カイコ姉様」


カイコ「ふん。ゲームが進めばいいのよ~!

    これ以上恥ずかしい思いなんてしたくないわ~!」


チョコ「ま、歌う必要もなかったんだけどな。

    マイクでなにか喋るだけで大丈夫だったし」


カイコ「チョコ……」


ミコ「ほら、カイコ姉様! 無事、地図をゲットしましたよ!」


チョコ「よし! それじゃ、じいさんを殴り倒そう!」


カイコ「だから~! そんなことしないって、さっきも言ったでしょ~?」


チョコ「いいのか?」


カイコ「え……?」


チョコ「倒さないとクリアできないぞ?」


カイコ「えええ~っ!?」


ミコ「カイコ姉様、残酷なようですが、これが現実というものです……」


カイコ「ちょ……、ほんとに?」



  (こくん。黙って頷くふたり)



カイコ「……うう、ごめんなさい、おじいさん……」


チョコ「カイコ姉がじいさんを殴り倒した!」


ミコ「カイコ姉様、人でなしです……」


カイコ「……ほんとにクリアに必要なの~!? 騙してない~!?」


チョコ「くっくっく、さて、どうかな~?」


カイコ「もう~!」



 ☆☆☆☆☆



チョコ「それじゃあ、カイコ姉。次は酒を飲んで酔っ払って潰れてくれ」


カイコ「な……なによそれ~!?」


ミコ「いえ、それも必要なんですよ」


カイコ「む~……。ぱたり」


チョコ「カイコ姉が酒飲んで暴れて潰れた~!」


カイコ「暴れてない~! だいたい、私じゃなくて主人公だってば~」


ミコ「でも、奥さんが怒ってますよ!」


カイコ「結婚してたのね、この人……」


チョコ「奥さん、殴ってきてるけどな!」


カイコ「ちょっと! また殴り倒すの? ……あっ、なにか選択肢が……」


ミコ「ここで、離婚するわけですね」


カイコ「離婚しちゃうのね……。なんだか、悲しい……」


チョコ「いやいや、酒飲んで潰れただけで、容赦なく殴りかかってくる嫁だぞ?

    離婚されて当然だろ!」


ミコ「ミコには、どっちもどっちに思えます……」


チョコ「とりあえず、慰謝料を取られて所持金が半分になったから、

    銀行で預金を下ろそう。5万しかないけどな」


カイコ「もっと貯めておきなさいよね……」


チョコ「そして、日本を出る!」


カイコ「国外逃亡~!?」


ミコ「カイコ姉様、違いますよ。

   宝の地図をゲットしたわけですから、宝探しの旅に出かけるんです!」


チョコ「もっとも、この先も困難の連続だけどな!」


カイコ「……もっと平穏な人生を送りたいわ~……」



 ☆☆☆☆☆



  (飛行機で日本を飛び立ち、ひたんぼ島に到着)



カイコ「あっ、服装が変わってるわ~」


チョコ「南の島だからな!」


ミコ「……現地の人も殴ってくるんですね」


カイコ「旅先も危険がいっぱいってことね~」


チョコ「ここでやることは、銀行で両替して、

    土産物屋で刺繍、装備屋で水筒と銃を買うことだな」


ミコ「そしてリゾートセンターからハンググライダーで飛び立ちます」


カイコ「攻略サイトのナビありだと、言われたとおり進めるだけね~」


チョコ「おっ、それじゃあ、ここからは自力でやってみるか?」


カイコ「……嫌よ~。きっとこの先も、不条理なクリア法とかなんでしょ~?」


ミコ「バレてますね」


チョコ「ま、そういうゲームだってことだな!」



  (そしてハンググライダーステージへ)



カイコ「敵が出てきて、弾も撃てて、シューティングゲームみたいね~」


チョコ「ま、ハンググライダーだから上に移動できないけどな!」


カイコ「あら、ほんと……。一気に難易度上がった感じがするわ~」


ミコ「風に乗ると、少し上昇できますけどね」



  (案の定というかなんというか、全然クリアできないカイコ)



カイコ「ううう……。こういうのはミコの得意分野なのに~」


チョコ「カイコ姉は、反射神経鈍すぎだからな!」


ミコ「頑張ってください、カイコ姉様!」


カイコ「……代わってくれたりは、しないのね……」


チョコ「そりゃあ、今回の担当はカイコ姉だからな! くっくっく!」


カイコ「……次回、覚えてなさいよ、チョコ……!」


ミコ「まぁまぁ、カイコ姉様。

   ケンカをするためにレトロゲームをしてるわけじゃないんですから。

   天国にいる父様だって、楽しく遊ぶミコたちの姿を見たいはずです」


カイコ「……そうね。ミコは、やっぱりいい子ね~」


ミコ「代わったりはしませんけどね」


カイコ「やっぱり悪い子ね……」


ミコ「カイコ姉様、ひどいです」



 ☆☆☆☆☆



  (苦労はしたものの、ハンググライダーをどうにかクリア)



カイコ「ようやくクリアできたわ~」


チョコ「まぁ、まだ先は結構長いけどな!」


ミコ「頑張ってください、カイコ姉様!」


カイコ「そろそろ気力も限界に近いけど……」


チョコ「ま、さっさと進めよう。ここはチョバリン島だな!」


ミコ「ほこらに入って出ると、ワープしてるみたいですね」


カイコ「敵もたくさん出てくるけど、復活できるし問題なしね~。

    やっぱり、このゲームって普通じゃないわ……」


チョコ「ここはしっかりナビしてやるかな。

    ジャングルを抜けると、民家がある。そこでは、一番最初の民家に入ること」


カイコ「……間違うとどうなるの?」


チョコ「出られなくなる」


カイコ「不条理だわ……」


ミコ「おや? なにやら、捕まってしまいましたよ?」


カイコ「えっ? ここもハズレなの~?」


チョコ「いやいや。芸をすれば抜けられる。

    三味線を持ってて、しかもちゃんと習得しててよかったな!」


カイコ「ほんと、不条理な展開だわ……」


チョコ「さあ、カイコ姉! 芸を見せないと! 三味線を弾きながら歌うんだ!」


カイコ「えっ?」



  (ミコ、無言で2コンを手渡す)



カイコ「わかったわよ~。……なにを歌えばいいの~?」


チョコ「はとぽっぽで、いいんじゃね?」


ミコ「そうですね。頑張ってください~!」


カイコ「ううう……。ぽっぽっぽ~、はとぽっぽ~……」


チョコ「ふう。堪能した!」


ミコ「もちろん、マイクで歌う必要なんてなかったわけですが」


カイコ「途中で気づいたわ~。下+Aでよかったのよね~」


ミコ「いえ、それすら不要だったんですが」


チョコ「うむ! 面白い余興であった!」


カイコ「ちょ……チョコ~!?」


ミコ「まぁまぁ、カイコ姉様。まだゲームは続いてますから」



 ☆☆☆☆☆



カイコ「山の上にほこらがあるわね~。でも、ジャンプしても登れないわ~」


チョコ「しゃがんだ状態でジャンプすると、大ジャンプできるゼ!」


カイコ「……あら、ほんと。知らなかったわ~。ここまで全然必要なかったものね……」


ミコ「このためだけにある仕様って感じですね」


チョコ「ほこらの仙人には、水筒をプレゼントだ!」


カイコ「なぜに水筒……」


ミコ「そしてまた、最初の民家に戻って、今度は刺繍をプレゼントです」


チョコ「お礼に聖なる石をもらえるぞ!」


カイコ「不条理よね~。どれが当たりだとか、ヒントってあるの~?」


ミコ「なさそうですよね……」



  (ともかく、一番高い山へ)



チョコ「まず、あの山の頂上へ登るんだ!」


カイコ「大ジャンプね。……1回じゃ無理だわ~。

    でも……途中の足場に乗ってさらに大ジャンプでOKね~」


ミコ「カイコ姉様、さすがに、このゲームの世界に慣れてきてますね」


カイコ「あまり染まりたくはない世界だけど~」


チョコ「で、攻略の続きだけど、頂上でウンコするんだとさ」


ミコ「ほほう」


チョコ「というわけで、カイコ姉、今ここで実際にウンコを――」


カイコ「しないわよ~! まったく……。

    きっとこうでしょ~? 座るだけとか……。ほら~」


ミコ「やっぱりカイコ姉様、この世界に染まってます」


カイコ「嫌~、染まりたくない~!」



 ☆☆☆☆☆



  (というわけで、洞窟内部へ潜入)



チョコ「ここから地下4回まで降りていくんだ。下への道は、またウンコだけどな!

    カイコ姉、ここでも実際にウンコを――」


カイコ「しないって言ってるでしょ~?

    だいたい、仮にも女の子なんだから、そんな汚いこと言わないの~」


チョコ「仮にもってなんだよ……」


ミコ「それはともかく、マップは結構広いですよ?」


チョコ「カイコ姉、教えてほしかったら、せめてウンコ座りでお願いしろ!」


カイコ「どうしてウンコ座りなのよ~?」


ミコ「……カイコ姉様も、汚いことを口にしましたよ?」


カイコ「う……。ふん、いいわよ、自力で座る場所を見つけるから~」



  (数分後――)



カイコ「……チョコ……、お……お願いします……」


チョコ「ふむ! ほんとにウンコ座りまでするとは!」


カイコ「チョコがやれって言ったんじゃない……」


ミコ「またカイコ姉様が涙目です。次回の仕返しが怖いですね、チョコ姉様」


チョコ「カイコ姉が勝手にやっただけだし。オレは冗談で言っただけだったのにさ!」


カイコ「ひどい……」



  (ともかく、どうにか地下4回までたどり着く)



カイコ「合計3回も、ウンコ座りでお願いする羽目になるなんて……」


ミコ「カイコ姉様の勇姿、ミコの目にしっかりと焼きつけました!」


カイコ「焼きつけないで~」


チョコ「こっちは写メも撮ったけどな!」


カイコ「ううう……」


チョコ「……おや? 制服のスカートのまま深く腰を落としてるせいで、

    完全にパンツまで見えてるな、この写真!」


カイコ「ちょ……ちょっと~! さすがにそれは消してよ~!」


チョコ「いい脅しアイテムをゲットできたゼ!

    さて、ゲームを進めよう、カイコ姉! もうちょっとで終わりだ!」


カイコ「うぐぐぐ……。わかったわよ~……」



  (そして財宝とご対面)



カイコ「ようやく……ようやくクリアなのね~……!」


チョコ「ちなみに、じいさんを倒してないと、ここで財宝を横取りされてジ・エンド」


カイコ「ひどい! でも、倒さないとダメっていうのは、ほんとのことだったのね~」


ミコ「カイコ姉様、ミコたちを信用してなかったんですか? ひどいです……」


カイコ「さんざん人をもてあそんでおいて、なにを言うのかしらね~」


チョコ「で、エンディングだけど……」


ミコ「この顔は、たけしさんですね」


カイコ「えらいっ! ……って、なによ、これだけ!?」


チョコ「慌てるな。5分待つと真のエンディングがあるゼ!」


カイコ「……もう、嫌だわ、このゲーム……」



  (で、5分後)



ミコ「あっ、新たにメッセージが出ました」


カイコ「え~っと……。

    『こんなゲームに、マジになっちゃって、どうするの』……?」


チョコ「これで本当に終わりだ!」


カイコ「ひどいわ~!」


ミコ「それに、スタッフロールなんかも無いんですね」


チョコ「これぞ世界の北野クオリティ!」


カイコ「そう言っちゃうのは、いろいろと問題がある気がするけど……」


ミコ「とにかく、カイコ姉様、クリアおめでとうございます!」


カイコ「なんだか、素直に喜べない結末だったわね~」


チョコ「いっひっひ! 今日はたっぷり楽しませてもらったゼ!」


カイコ「あら、楽しみはまだ終わってないわよ~?」


チョコ・ミコ「え?」


カイコ「今日の夕飯で、た~っぷり仕返しさせてもらうから、覚悟しといてね~?」


ミコ「ちょ……っ!? カイコ姉様、ミコもですか?」


カイコ「ふふっ、当たり前よ~!

    ふたりの嫌いな食材、目いっぱい使っちゃうからね~♪」


チョコ・ミコ「そ……そんなぁ……」



 ☆☆☆☆☆



料理を作るのがカイコの役目になっているのだから、

こういった仕返しが来るのは目に見えていたと思うのだが。

チョコもミコも、まだまだ子供ということか。



だが、なんといか……。

よくあのゲームをクリアしたものだな。

今はネットで攻略法も簡単に見られるから、楽な世の中なのかもしれないが。


俺があのゲームを買った頃は、クリアなんてできるとは思えなかったな。

攻略本は発売されていただろうが、さすがに買わなかったし……。



それにしても、できればもっと楽しくゲームをしてもらいたいところだ。

和気あいあいと対戦ゲームでもして遊べばいいのに。

……いや、あの3人だと、凄惨な騙し合いとかになりそうだな。


今後もいろいろと意地悪の応酬が繰り広げられそうで怖いが……。

もっとも、それはそれで、ひとつの遊び方ではあるのか。



 ☆☆☆☆☆



【ゲーム解説】



「たけしの挑戦状」


対応ハード:ファミコン 発売元:タイトー 発売日:1986年12月10日



ビートたけしが監修したゲーム。本編でも触れたとおり、クソゲーと言われることも多い。

タイトルが示しているとおり、ビートたけしからの挑戦という感じの作品。

「謎を解けるか。一億人。」というキャッチコピーだった。

とはいえ、この不条理さは、ゲームとしてはどうなのか……。

なお、テレビCMには、ビートたけし本人が出演していた。


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