第28話 ゆみみみっくす
チョコ「今日はこれにしようぜ!」
カイコ「あら、それは確か……」
ミコ「はい。父様が大好きだった、漫画家の竹本泉さん原作のゲームです」
チョコ「原作というか、原画やらまでやってたんじゃなかったっけ?」
ミコ「そうですね。いろいろとご自分でやりすぎなのでは、と思いますが」
カイコ「そういった意味でも、竹本さんの作品と言いきれるゲームって感じみたいね~」
チョコ「絵柄的には、ちょっとあっさり目か?」
ミコ「はい。ですが、独特な絵だと思います」
カイコ「そうね~」
ミコ「この作者の漫画、父様はコミックスで発売されたのはすべて買っていたようです」
チョコ「相変わらず、ハマったらとことん、って性格だな!」
ミコ「それでこそ父様です」
カイコ「お父さんの本棚にある漫画は、私も読んだけど~。
この人の漫画って、変な内容の話が多いわよね~」
チョコ「それが特徴と言ってもいい感じだよな!」
ミコ「すごく変な話か、普通に変な話、2択しかありませんからね」
チョコ「ま、早く始めようぜ!」
カイコ「なんか、意外とチョコが乗り気ね~?」
チョコ「このゲームには百合展開があるからな!」
ミコ「いきなりネタバレしましたよ、この姉は」
チョコ「女同士! いいではないか!」
ミコ「すみません、カイコ姉様。チョコ姉様がおかしな人で」
カイコ「ふふっ、それはミコのせいじゃないわ~」
ミコ「あともう1つ、すみません、カイコ姉様。今回のゲームがBLな内容ではなくて」
カイコ「そっちの設定は思い出さなくていいわよ~」
チョコ「昔のゲームでBL展開とか、基本的にないからな!」
ミコ「百合展開だって、普通はないんですけどね」
☆☆☆☆☆
チョコ「さてこのゲーム、全編フルアニメーションになっている」
ミコ「といってもムービーではなくて、すべてプログラム制御のアニメです」
チョコ「ジャンルとしてはアドベンチャーゲームだが、選択肢を選ぶだけだ。
面倒な部分なんて一切ない」
カイコ「なるほどね。アニメを見る感覚でやればいいのかしら~」
ミコ「ええ、そうですね」
チョコ「そういえば、この作者の漫画って、全然アニメ化されないよな」
ミコ「なにやら負の力が働くのか、アニメ化の話が出たとしても、
最終的には必ず立ち消えてしまう、という感じのようです。
父様はアニメになった竹本作品を見てみたい、とずっと言ってましたね」
カイコ「確か、アニメありきの企画でスタートした連載なのに、
結局アニメ自体が制作されなくなって、単なる原作ありの漫画になった、
ってこともあったのよね~?」
ミコ「『MAGI×ES』ですね。竹本さんのせいってわけでもないでしょうけど」
チョコ「ま、このゲームがアニメみたいなもんだから、これで楽しめばいいだろ!」
ミコ「セガサターンには、同じシステムの『だいな・あいだん』も出ましたしね」
カイコ「そういえば、お父さんはサターンとかも持っていたはずよね~?
どこかにしまってあるのかしら……」
チョコ「そうだとしたら、なぜ別々にしまう必要があるんだろう。大いなる謎だ!」
ミコ「いや、単純にスペースの問題とかではないでしょうか」
カイコ「って、そんなことはいいから、ゆみみみっくす、始めるわよ~?」
ミコ「はい!」
チョコ「おっ、起動したら、オープニングが始まったな!」
カイコ「2匹の馬ね。ツノが生えてるから、ユニコーンかしら」
ミコ「地面に穴が開いて、落ちていきました」
チョコ「そして、主人公の弓美がベッドから落ちた、ってオチか!」
カイコ「夢だったのね~」
ミコ「どうでもいいですが、随分と可愛らしいパジャマを着てますよね」
チョコ「ピンク色でひらひらした感じだな! 実に、いい!」
カイコ「可愛げのないチョコのパジャマとは大違いね~」
ミコ「『可愛げのない』はパジャマに掛かっているのかチョコ姉様に掛かっているのか」
カイコ「両方よ~」
チョコ「おいっ!」
ミコ「まぁまぁ。ほら、歌が始まりましたよ」
カイコ「歌っているのは、高橋由美子さんなのね~」
チョコ「それにしても、このゲーム、ほんとによく動くんだな!」
ミコ「そうですね。テレビアニメレベルとまでは行かないですが」
☆☆☆☆☆
カイコ「それじゃあ、ゲームスタート~」
ミコ「主人公の弓美がベッドから落ちました」
チョコ「またかよ!」
ミコ「鼻を打ってしまったみたいですね」
カイコ「目覚ましが鳴るまであと10分もある。どうしよう? だって~」
チョコ「ここで選択肢が出るのか! 重要な選択だ!」
ミコ「寝る、今日は学校を休む、起きる、の3択ですね」
チョコ「寝たら画面が暗転して、ゲームオーバーだ!」
カイコ「ええ~っ!?」
ミコ「そんなわけないですから。どれを選んでも、普通に進んでいきますよ」
チョコ「選択によって若干流れが変わる程度で、大きな違いはないみたいだな!」
カイコ「そうなのね~」
ミコ「といっても、ゲームの最後のほうでは、展開がかなり変わる選択もあるようです」
チョコ「なにせ、マルチエンディングだからな! 3種類くらいだけど!」
カイコ「とりあえず、学校を休んじゃいましょう」
チョコ「そうしたくなるよな!」
ミコ「ですが、その選択肢を選んでも、結局は……」
カイコ「お母さんに起こされちゃったわ~。安眠妨害反対~!」
チョコ「で、学校に行くのか」
カイコ「なんというか、日常系の話、って感じかしら~」
ミコ「そうですね。正確には、日常系の変な話、ですが」
カイコ「やっぱり変なのね~」
ミコ「当然です」
チョコ「おっ、道をなんかふわふわしたのが横切ってるぞ?」
カイコ「早速変なことが起こったのね~」
ミコ「これは、あの噂に聞く……で、選択肢です」
チョコ「ケセランパサランだ!」
カイコ「それって、なに~?」
チョコ「さあ?」
ミコ「では、マルチーズです」
カイコ「犬は飛ばないし、だって~。確かにそうね~」
ミコ「トゥクトゥプ?」
チョコ「なんだそりゃ!」
ミコ「『あおいちゃんパニック』に出てきた宇宙人の名前ですよ」
チョコ「プニュームキン? マルスマティック?」
カイコ「『ユーレイ』を選ばないと、どんどん変な選択肢が出てくるのね~」
ミコ「最後には、ユーレイだけになりました」
チョコ「その下に2つほど空白があるけど……」
カイコ「じゃあ、真ん中のほう空白を……ポチッ」
ミコ「透明人間です、よくわかりましたね、だそうです」
チョコ「なんというか、選択肢で遊びすぎじゃないか?」
☆☆☆☆☆
(その後、クラスメイトの桜崎桜子と松崎真一が登場)
チョコ「桜子は現実主義者で胸が大きいんだな!」
ミコ「真一は桜子の幼馴染みで、新聞部のヒラ部員なんですね」
カイコ「弓美はここで、オバケを見たことをふたりに報告するのね~」
ミコ「選択肢の結論としては、ユーレイだったような……」
チョコ「いやいや、透明人間だっただろ?」
ミコ「それはお遊びですってば」
カイコ「どうでもいいけど、桜子ってずっとなにか食べたり飲んだりしてるのね~」
ミコ「ですが、太らない体質のようです」
カイコ「うらやましいわ~」
チョコ「カイコ姉のここは、ぶにょぶにょだしな!」
(手を伸ばし、カイコのおなかの肉をつかむチョコ)
カイコ「はうっ! やめなさいよ~!」
チョコ「……思った以上に、すごかった」
カイコ「そ、そんなこと言わないで~!」
ミコ「まぁまぁ。カイコ姉様はお美しいですよ。たとえデブっていても」
カイコ「追い討ちで120ポイントのダメージ~!」
ミコ「すみません、つい本音が」
カイコ「ミコ、ひどい……」
ミコ「冗談ですよ。ほら、新しいキャラが登場しましたよ」
チョコ「部長か! いきなり弓美に抱きついた!」
カイコ「……この人、名前は?」
ミコ「どうやら設定されていないみたいですね」
チョコ「新聞部の部長で、放送委員の委員長で、英語部の副部長なのか」
カイコ「だから、弓美たちがそれぞれ、違った呼び方をしているのね~。
真一が部長、弓美が委員長、桜子が副部長って呼んでるわ~」
ミコ「あっ、部長、今度は桜子に抱きつきました」
チョコ「女の子に抱きつく癖があるんだな!」
カイコ「チョコみたい~」
チョコ「そうだな!」
ミコ「……否定しないんですね」
☆☆☆☆☆
(教師に命令され、プリントを取りに行った弓美)
カイコ「あっ、緑色のスライムみたいなのが飛び跳ねてるわね~」
ミコ「でもそこで、弓美が貧血を起こして倒れてしまいました」
チョコ「気がついたら、プリントが廊下に散らばっていて、
髪を留めていたリボンも外れて落ちてるな」
ミコ「スライムもいなくなってます」
カイコ「あら? 女の子がこっちを見てる~」
チョコ「ショートカットのメガネっ子、キターーーーー!」
ミコ「チョコ姉様は、そういう属性もあったんですね」
カイコ「ポニーテールやツインテールが好きなんじゃなかった~?」
チョコ「ポニーもツインもロングもショートも好きだ!」
ミコ「女の子ならなんでもいいんですね」
チョコ「似合ってればいい、ってことだ!」
カイコ「まぁ、それはそうかもね~」
ミコ「と、女の子が弓美にすり寄ってきました」
カイコ「すり寄ってきたといか、抱きついてきたというか……」
チョコ「百合展開キターーーーー!」
ミコ「実際、背景に百合の花が咲きました」
カイコ「でもこの子、なにを言っているのか、わからないわね~」
チョコ「不思議ちゃんキターーーーー!」
カイコ「それはもういいから~」
ミコ「穴は縫い合わせたのねとか、そこらじゅう穴だらけになってしまったとか、
なんなんでしょうね?」
カイコ「体育館に明日の晩、行かなくてはいけない、って言われてるわね~」
ミコ「そして……うあっ。この子、頬ずりしてきましたよ!?」
カイコ「選択肢だわ~。突き飛ばす、逃げる、頬ずりされるまま。どうする~?」
チョコ「ここは続けるべきだろ!」
カイコ「チョコってば……」
ミコ「と言いつつも、頬ずりされるままを選ぶんですね」
カイコ「だって、面白そうだし~。
あら? 今度は、あなたはあたしのこと愛してる? って訊いてきたわ~」
チョコ「もちろん、愛してるだろ!」
カイコ「初対面なのに~」
ミコ「と言いつつも、愛してるを選ぶんですね」
カイコ「再び頬ずりされたわ~。
体育館に大きな穴ができるから縫い合わせてね、忘れないでね、だって~」
ミコ「あっ、女の子が正気に戻ったみたいです。でも、なにも覚えてなさそうですね」
チョコ「オレもこの女の子に見惚れて、言われたことなんてなにも覚えてない!」
ミコ「チョコ姉様のは単なる病気です」
☆☆☆☆☆
(弓美は桜子と真一に相談。ショートカットの女の子を見かけて話しかける)
チョコ「この子は、森下りえ、っていうのか」
カイコ「ゆみみたちの1学年下なのね~。
典型的なおとなしい性格の女の子で、好きな歌手は北島三郎、だって~」
ミコ「ただ、この前のことはやっぱり覚えていないみたいですね」
カイコ「よろしく、と言って握手しようとしたら、突然光り始めたわ~」
チョコ「そして、りえが抱きついてきた! よっしゃあ!」
カイコ「そこまで気合いを入れて喜ばなくても……」
ミコ「今夜体育館に行って、必ず穴を縫い合わせるのよ、と言ってますね」
カイコ「詳しく聞こうと思ったら正気に戻ったわ~。今回もなにも覚えてないのね~」
(ともかく、弓美たちは夜の学校に忍び込むことにする)
チョコ「夜の校舎窓ガラス壊して回るんだな!」
ミコ「違いますって。体育館に忍び込むんですよ」
カイコ「なにも起こらなくて、桜子がイライラしてきてるわね~」
チョコ「イライラを食欲で紛らわしてるんだな! さっきから食べまくりだ!」
ミコ「やけ食いしても太らないんですよね」
カイコ「うらめしい~」
チョコ「どうでもいいが、そんな大量な食べ物、どこに隠し持ってたんだか」
ミコ「あっ、なにか起こりそうですよ?」
カイコ「なんか変な生き物が、視界の隅っこを通っていったわね~?」
チョコ「おおっ? 体育館の下のフロアに、大きな穴が開いてるぞ!?」
カイコ「穴……なのかしら~。空中に浮いてるけど~」
ミコ「その穴の中に、でっかな怪獣みたいなのが……!」
チョコ「ここで弓美が貧血だと!? 大事な場面で意識を失うな、こら!」
ミコ「という抵抗も空しく、画面は暗転しました」
カイコ「場所移動したわね~。ムッシュドーナツだって~」
チョコ「さっき相談してた場所は、ワクドナルドだったよな!」
ミコ「まぁ、店の名前に関してはスルーでいいでしょう」
カイコ「桜子と真一が、なにがあったか語ってくれて、回想シーンに入るのね~」
(体育館に穴が開いたあのとき、弓美の髪がするするとほどけ、ツノが生える)
チョコ「なんか弓美っぽくないな。ちょっと大人っぽい感じか? 口紅もついてるし」
ミコ「そうですね」
(弓美が穴のほうまで下りていき、中から出てこようとしていた怪獣を押し返す。
最後に穴を縫い合わせて、桜子と真一のもとへ戻る。
そこで弓美は桜子に近づき……頬ずりをし始める)
チョコ「弓美×桜子のカップリング、キターーーーー!」
カイコ「チョコ……」
ミコ「桜子は嫌がってますね」
チョコ「嫌よ嫌よも好きのうち!」
カイコ「本当に嫌がってそうだけど~」
ミコ「というところで、弓美が意識を取り戻したんですね」
☆☆☆☆☆
(それから、おかしな展開はさらにエスカレート)
チョコ「びよよん!」
カイコ「おかしな物体が飛び跳ねてる~。なにこれ~?」
ミコ「棒でつついてみましょうか」
チョコ「つついたら、増えやがった!」
(そこへ、真一とりえ、部長も合流)
カイコ「この部長、りえの所属する文芸部の部長でもあるのね~」
ミコ「いったい、いくつ掛け持ってるんですかね、この人は……」
チョコ「部長がりえに抱きついたぞ! オレも抱きつきたい!」
ミコ「いったい、なにを言ってるんですかね、この姉は……」
カイコ「で、背景がまた百合の花になったわ~」
ミコ「りえは弓美に触れると、こうなっちゃうみたいですね」
(体育用具置き場に行くと、なにかが動いている。
で、中からびよよんと飛び跳ねる物体がたくさん出てくる)
カイコ「ここで、ひづめの音が~」
チョコ「貧血になる前に、必ず鳴ってたよな、この音」
ミコ「で、弓美が変身しました。ツノの生えた、大人っぽい姿に」
チョコ「弓美のアダルトバージョンだな!」
カイコ「チョコが言うと、なんだかとってもいやらしいイメージになるわね~」
ミコ「今回の弓美は、倒れませんね。ちゃんと意識を保ってます」
チョコ「だが、自分の意思とは無関係に、体が勝手に動くみたいだな」
カイコ「弓美が飛んでいったわ~」
ミコ「体育館の上に立って、ツノの先から光の糸みたいなのを伸ばして、
びよよんを捕らえて穴の中に入れていきます」
カイコ「最後に穴を縫い合わせて終了ね~」
チョコ「で、りえと抱き合うんだな!」
ミコ「りえにもツノが生えてますね」
☆☆☆☆☆
(りえ自身はなにも覚えていないが、弓美と触れることで、
もうひとりのりえ(?)を呼び出し、詳しい話を聞く。
その話によると、この宇宙にはたくさんの世界が存在しているらしい。
とびはね虫の世界、スライムの世界、トンビナイ魚の世界、などなど)
チョコ「トンビナイ魚!? なんだよ、それは!」
ミコ「それも、『あおいちゃんパニック』に出てきた名前です」
カイコ「とびはね虫は、あのびよよんって飛び跳ねてたやつよね~」
(それら無数の世界の重なり合う部分が、地球を含めたこの世界。
この世界と他の世界には、境目の世界が存在する。
それが、りえに取り憑いている彼女たちの世界だという)
チョコ「話の最中に頬ずりしてきたり、愛してる? とか訊いてきたりするのが、
百合チックな展開ですごくいいよな!」
ミコ「同意しかねますが」
カイコ「りえにごろごろと抱きつかれた弓美の、
脳みそがカマンベールチーズになってしまう~ってセリフ、
妙に納得できるわ~」
(開いていた穴からこの世界へと落ちてきたところに、弓美とりえがいた。
重なり方が異なるので、変身する状況が違う。
ふたりは恋人関係で、ゆみみに重なっているほうは、男だったりする。
で、穴がすべてなくなれば自動的に戻れるはず。残りは5つか6つくらい。
というわけで、結論としては、穴を塞げばいいということに)
ミコ「こうして、弓美たちの穴塞ぎな毎日が始まるんですね」
(で、次々と穴を塞いでいく弓美たち。
しかし、随分と穴を塞いだはずなのに、一向に終わる気配がない)
チョコ「どうなってるんだ?」
ミコ「りえいわく、穴あけネズミがいるのでは、とのことです」
カイコ「放っておくと、どんどん穴を開けてしまうのね~」
チョコ「たまたま何百年かに一度の穴がその穴あけネズミの世界にできたせいで、
こちらの世界に出てきて、穴を開けまくってる、って状況なのか」
ミコ「そいつらの世界の穴を塞がないと、一生穴塞ぎの人生になってしまいます」
カイコ「弓美、お婆さんになっても穴を塞いでいる自分を妄想してるわ~」
チョコ「それはそれで面白そうだけどな」
☆☆☆☆☆
(朝。学校に着いた弓美の目の前には、大雪の降り積もる光景が)
ミコ「うわっ! なんか校舎より背の高い変な物体が、雪を降らせてます!」
(桜子や真一と合流した弓実。
りえのクラスに向かうが、体育館に着替えを忘れて取りに行ったとのこと。
入れ違いにならないよう、二手に分かれて体育館を目指す)
カイコ「真一とは別行動になるのね~」
ミコ「こっちは桜子と弓美のふたりですね」
チョコ「ん? なんか、フヨフヨしたのが……」
ミコ「中から、猫の顔っぽい生き物が出てきましたね」
カイコ「あら、可愛い~♪」
チョコ「弓美もそう言って抱き上げてるな!」
ミコ「あっ、なにか取り出しました。ああっ! 穴を開けてます!」
チョコ「こいつが穴あけネズミか!」
(穴あけネズミはカゴに捕らえて連れていく。
どこからカゴを取り出したのかは謎だが……)
ミコ「体育館へと続く渡り廊下は、雪で埋まってますね」
チョコ「足跡があるな。どうやら真一は先に行ったみたいだ」
カイコ「どうにか渡り廊下を抜けて、体育館に着いたわ~」
ミコ「雪でびしょ濡れになってしまいましたけどね」
(で、体育館の中を見ると……)
チョコ「なんだありゃ!?」
カイコ「よくわからないけど、大きな物体があるわね~」
ミコ「太すぎる気もしますが、ケーブルらしきものもつながってるみたいですし、
なにかの機械的な装置でしょうか」
チョコ「って、桜子が糸に巻かれて連れていかれた!」
カイコ「選択肢だわ~。どうするべきかしら」
ミコ「まずは考えましょう」
カイコ「カゴのネズミと引き替え、話し合う、ひとまず逃げる……」
チョコ「ここは取り引きすべきだな!」
カイコ「そうね、わかったわ~」
(その結果……)
チョコ「弓美まで捕まってしまった……」
カイコ「交渉決裂だったのね~」
ミコ「卑怯なことをするからですよ」
チョコ「りえと真一も捕まってたんだな。あと部長も」
カイコ「あの大きな機械、見たことのある形だって話してるわね~」
ミコ「確かに……。なんでしょうね?」
チョコ「穴あけネズミが穴を開けたときに持ってたやつだな!」
カイコ「とすると……」
ミコ「とっても巨大な穴を開けようとしているってことですか!?」
チョコ「ま、そうなるな!」
カイコ「弓美たちも気づいて、焦ってるわね~」
ミコ「カイコ姉様は全然焦りませんね」
チョコ「そういうときは、この写真を……」
(チラッと、カイコのパンチラ写真を見せる)
カイコ「ちょっ……!? それは捨てなさいって、あれほど言ったのに!」
チョコ「このように、簡単に焦らせることが可能だ!」
ミコ「便利なアイテムです」
カイコ「それはもう忘れなさいな。ほんと、しつこいわよ~?」
チョコ「はいはい」
ミコ「と言いつつ、写真をポケットにしまい込むチョコ姉様でした」
チョコ「ふっ……。まだ利用価値はあるからな」
ミコ「実に悪役っぽいセリフです」
カイコ「まったく、あんたたちは……。ほら、また選択肢が出てるわよ~?」
ミコ「大声で騒ぐ、根性で変身、歌をうたう、ですか」
チョコ「歌ってもらいたい気もするが……ここは根性だな!
カイコ姉には似合わないが!」
カイコ「ひと言余計よ~」
ミコ「ですが、チョコ姉様がそんな選択肢を推すなんて、なんだか珍しい気が……」
チョコ「いや、だって、根性で変身なんて、絶対に失敗しそうじゃんか!」
カイコ「そういう魂胆だったのね~」
(チョコの予想どおり結局変身はできず、騒いで気を引く作戦に出る。
だがそのせいで、もっと高い位置にまでつり上げられてしまう)
チョコ「残念、逆効果だったようだな!」
ミコ「おや? なにか音が……」
(機械が起動、大きな穴が開き、そこから巨大トーテムポールが出現する)
カイコ「りえにツノが生えてるわ~」
ミコ「もちろん、弓美にも生えてます」
チョコ「弓美、縛られていたはずなのに、するっと抜けて飛んでいったぞ!」
ミコ「変身するとスタイルもよくなって、細くなるんでしょうか?」
カイコ「うらやましい~」
ミコ「体育館から外に出た弓美が、光の糸でトーテムポールを絡めつつ、
てっぺんまで登っていきます」
チョコ「画面も動きまくりだ!」
カイコ「トーテムポールを押し戻して、穴を縫い合わせたわね~」
ミコ「穴あけネズミも、どんどん穴の中へと帰していきますね」
チョコ「あっ、1匹のネズミが、穴を持って逃げたぞ!?」
カイコ「でもそれを、真一たちが捕まえたわ~」
ミコ「さらには巨大な機械も光の糸で持ち上げて、穴の中へ」
チョコ「真一が捕まえた1匹も穴の中に戻して、最後に縫い合わせて作業終了だな!」
☆☆☆☆☆
カイコ「これで弓美は、ようやく普通の女の子に戻れたのね~」
ミコ「妄想癖はもともとですけどね」
チョコ「弓美と真一、なんだかいい雰囲気になってるな!」
カイコ「少女漫画が元ネタだって、本編のナレーションにもあったものね~」
ミコ「そしてエンディングでも、高橋由美子さんの歌が流れるんですね」
チョコ「おや? エンディングが終わっても、まだ続くのか……?」
カイコ「スタートしたときと同じように、弓美がベッドから落ちたわね~」
ミコ「寝相が悪いのは、ユニコーンが重なっていたのとは別問題だったようです」
チョコ「ということで、話も落ちた、と」
カイコ「今度こそ、終わったみたいね~」
チョコ「いや~、なかなか面白かった!」
ミコ「そうですね」
カイコ「ゲームと呼んでいいのかは、ちょっと疑問だけど~」
チョコ「選択肢もさほど多くなくて、見てる時間がすごく長いしな!」
ミコ「ま、いいんじゃないですか? 竹本さんの作品として堪能すれば」
カイコ「そうね」
チョコ「だな!」
ミコ「それでカイコ姉様、夕飯はなんですか? ミコ、もうおなかペコペコです」
カイコ「あ……」
チョコ「あ?」
ミコ「ま……まさか……」
カイコ「ごめんなさい、なにも考えてなかったわ~」
チョコ「おいっ!」
カイコ「う~ん、買い物もしてないし……。まともな食材あったかしら~……」
ミコ「カイコ姉様、そんなオチは嫌です!」
☆☆☆☆☆
今日は「ゆみみみっくす」か!
当時、何度もプレイしまくって、セリフもほぼ覚えていたっけな。
文字表示のないゲームだから、一部なにを言っているのか全然わからないセリフなんかもあったが。
ミコが言っていたように、俺は竹本さんの全部のコミックスを購入していた。
リニューアルして何度か出し直された漫画もあるが、その場合は、どれかひとつのバージョンさえ持っていればOK、というルールにしてあった。
漫画といえば、このゲームに出ている松崎真一と同じ名前のキャラが、竹本さんの他の読みきり作品にも出ていたのを記憶している。
顔も完全に一緒だが、同一人物というわけではないはずだ。
なにか意図があってそうしたのかは不明だが……。
セガサターンで発売された「だいな・あいらん」も悪くはなかったが、話としては「ゆみみみっくす」のほうが面白かったな。
コミックスを集め始めたのも、この作品を遊んだのがきっかけだった。
その前に1度だけ竹本さんの漫画を読んだことがあって、絵柄が独特なため記憶に残っていて、あ~、あの人が原作なのか~、と思ってなんとなくゲームを買ってみただけだったのだが。
まさかそれから、ここまでハマることになろうとは。
いやはや、人生とはわからないものだ。
……と、そこまで大げさな話ではないか。
だが、本当に人生とはわからないものだ。
俺自身、愛する3人の娘たちを残して、死んでしまったわけだからな……。
☆☆☆☆☆
【ゲーム解説】
「ゆみみみっくす」
対応ハード:メガCD 発売元:ゲームアーツ 発売日:1993年1月29日
漫画家の竹本泉さん原作の、変な話のアドベンチャーゲーム。
アドベンチャーゲームというより、アニメーションに近く、たまに選択肢が出てくる以外はほぼ見ているだけとなる。
なお、一応マルチエンディングではあるが、大きく変わるのは最後のほうだけ。また、ゲームオーバーなどはない。
竹本泉さんは原作なだけでなく、絵コンテなんかも含め、大部分を手がけていた模様。
そのせいもあってか、当初のスケジュールから大幅に遅れまくった、という経緯もある。
最初は目パチ口パクくらいの簡単なアニメ程度の予定だったが、どんどん動きまくるようになり、完全にテレビアニメっぽい感じにまでなった。
総動画枚数2800枚、との最初の発表から、最終的に7000枚にまで膨れ上がったとか。
オープニングとエンディングは、高橋由美子さんが歌っている。
ただ当初は、竹本さん作詞の曲が使われる予定になっていたらしい。
曲自体は作られなかったが、セガサターンに移植された「ゆみみみっくすREMIX」の小冊子にそれらの歌詞が掲載されている。
まったく同じタイプのゲームとして、セガサターンで「だいな・あいらん」というゲームも発売された。
そちらも「ゆみみみっくす」同様、竹本泉さん原作となっている。