第9話 けっきょく南極大冒険
カイコ「ただいま~。またまた遅れちゃった~」
チョコ「今日もまた呼び出し食らったのか?」
カイコ「ええ、まぁ……」
チョコ「まったく、連日先生に呼び出されるなんて、ダメな姉だなぁ」
ミコ「まったくです」
カイコ「ひどいわ~。それに、今日は先生からの呼び出しじゃなくて……」
(と、そこでなぜか口ごもるカイコ)
カイコ「……まぁ、いいわ。それより、ゲームをしましょうか」
ミコ「待ってください。なにか引っかかります」
チョコ「いったいなにがあったんだ? 正直に白状しろよ!」
カイコ「な……なんのことかしらぁ~」
ミコ「カイコ姉様はホントに嘘が下手なんですから……。
なにか隠してるのがバレバレですよ」
カイコ「う……」
チョコ「正直に言わないと、体に訊くゼ~? げへへへへ!」
ミコ「チョコ姉様、いやらしいです」
チョコ「まぁ、くすぐるだけだけどな。こちょこちょこちょ!」
カイコ「やっ、あははははは、やめて~! 言うから~! あはははっ!」
チョコ「最初から素直に従ってれば、こんな目に遭わなくて済んだんだゼ~?」
ミコ「完全に悪役ですね」
カイコ「もう、チョコったら……」
ミコ「それで、先生からの呼び出しでないなら、なんだったんです?」
カイコ「え~っと、恥ずかしいんだけど……ラブレターをもらったの~」
チョコ「おおっ! マジでっ!?」
カイコ「……ええ」
ミコ「すごいです、カイコ姉様!」
カイコ「それで、放課後、校舎裏で待ってますって書いてあって……」
チョコ「そこでタイマン張ってきたと」
カイコ「果たし状じゃなくてラブレターだってば~!」
ミコ「そ……それでカイコ姉様、どうしたんですか?」
チョコ「相手はどんな奴なんだ!? カッコいいのか!?」
カイコ「ちょっと、ふたりとも、食いつきすぎ……」
ミコ「ですが、大切な姉様に恋人ができるとなりましたら、ミコとしてもそれ相応の
覚悟というものが必要となってきますし……」
カイコ「なんの覚悟よ……」
チョコ「いや待て。相手が男とは限らないよな。可愛い女の子で百合百合な展開とか!?
おお~、それだったらオレ的にはとっても燃えるんだが!」
カイコ「チョコは相変わらず女の子好きなのね……。
残念ながら、普通に男の人だったわ~。隣のクラスの男子みたい」
ミコ「……みたい、ということは、知らない相手だったんですか?」
カイコ「ええ。だから、お断りしたわ~」
チョコ「そうなのか。せっかくだし、つき合ってみればよかったんじゃないか?」
カイコ「……私としては、普通の相手がいいと思ってるから~」
チョコ「お? そいつ、普通じゃなかったのか?」
カイコ「だって、オタクな彼女が欲しいから、なんて理由だったのよ~?
失礼しちゃうわよね~。……学校ではゲーム好きなこと、隠してるのに……」
チョコ「オーラがにじみ出てるんだろ!」
カイコ「うう、嫌だわ~……」
ミコ「カイコ姉様が、ちょっと変な男性にはモテるとわかったところで、
今日のゲームを開始しましょうか」
☆☆☆☆☆
チョコ「さて、今日はカイコ姉の担当だが、今回はアクションゲームにしてみた」
カイコ「え~? 私トロいし、アクション系はちょっと~……」
チョコ「でもさ、ファミコンだとアクションゲームが多いし、
RPGとか時間がかかるのは今からじゃちょっと難しいし。
仕方がないと思って諦めな! 可愛い系のを選んでやったから!」
ミコ「というわけで、けっきょく南極大冒険です」
カイコ「あら、ペンギンが主人公なのね。確かに可愛らしいわ~」
ミコ「なんか、ペンギンが主人公のゲームって、レトロゲームには結構ありますよね」
チョコ「そうだな。これの他にも、ぺんぎんくんウォーズとか、ペンゴとか、
バイナリィランドとか、夢ペンギン物語なんてのもあるな!」
カイコ「いろいろあるのね~」
チョコ「ともかく、今回はけっきょく南極大冒険で決まりだ!」
ミコ「どうでもいいですが、ダジャレっぽいタイトルですね」
チョコ「うむ! このセンスが素晴らしい!」
カイコ「オヤジギャグ好きなチョコの趣味にバッチリ合っちゃったわけね~」
ミコ「まぁ、始めましょう」
カイコ「そうね~。……あら?
タイトル画面には、けっきょく南極大冒険って表示されてないわ~」
チョコ「Antarctic Adventure、ってなってるな!」
ミコ「南極の冒険って意味でしょうかね」
チョコ「けっきょく南極大冒険のほうが、語呂的にもいいよな!」
カイコ「そうよね~。でも、正式なゲーム名がタイトル画面に表示されないって、
ちょっと納得いかないような気も……」
チョコ「小っちゃいことは気にするな!」
ミコ「ワカチコですか? ……すでに死語ですけど」
チョコ「確かに、見なくなったな……」
カイコ「世知辛い世の中ね~」
ミコ「それはともかく、LEVELが3つ表示されてますね」
チョコ「もちろんLEVEL3だろ!」
カイコ「……アクション苦手なんだから、LEVEL1に決まってるでしょ~?」
チョコ「ちっ……」
☆☆☆☆☆
ミコ「ゲームが始まりましたね」
カイコ「3Dっぽい画面なのね~」
チョコ「BGMは『スケーターズワルツ』だ!」
ミコ「この曲、聴いたことあります」
カイコ「有名よね~。でも、なんとなく眠くなるのはなぜかしら~……」
チョコ「単調なファミコンの音源だからってのもあるかもだけどな!」
カイコ「操作としては、左右移動とジャンプ、あとは上下で速度調整って感じね~」
ミコ「氷の裂け目を避けつつ、時間内にゴールを目指すゲームです」
チョコ「すぐに上を押して速度アップするのがコツみたいだぞ!
基本的に最高速で駆け抜ければ大丈夫らしい!」
カイコ「氷の裂け目から魚が飛んできたり、氷の上に旗が立ってたりするわね~」
ミコ「それらは得点アイテムです」
チョコ「あとは、カーブに差しかかると外側に流されるから、ちょっと注意だな!」
カイコ「でも、あまり難しくはなさそうね~」
ミコ「とか言いながら、裂け目に引っかかってますね」
カイコ「う……」
チョコ「裂け目からは、アザラシが顔を出すこともあるんだな!」
ミコ「あのアザラシはジャンプで飛び越せませんから、左右に避ける必要があります」
チョコ「それと、たまに点滅してる旗もあって、それを取るとタケコプター装備だ!」
カイコ「え? タケコプター……? それってドラえもんの道具じゃ……」
ミコ「正確には名前が違いますけどね」
チョコ「うむ。正確には、ペギコプターだ!」
カイコ「大して違わないのね……。確かに、頭の上にそれらしいのがついたわ~」
チョコ「ペギコプターがあると、1回だけだが、長く空中を飛んでいられるんだゼ!」
ミコ「ボタン連打で、最大5秒くらい浮いていられるみたいです」
カイコ「ふむふむ」
チョコ「5秒で電池が切れるタケコプターってことだな!」
ミコ「それ、確実に不良品だと思います」
☆☆☆☆☆
カイコ「あっ、建物が見えてきたわ~」
チョコ「基地だな! そこまでたどり着けばステージクリアだ!」
ミコ「オーストラリアの旗が上がりました」
チョコ「実際、それぞれの国の基地があるってことなのかな?」
ミコ「でしょうかね? そうだとしても、随分古いデータになるでしょうけど」
カイコ「とにかく、基地で一服って感じかしら~。
最初は何度か裂け目に引っかかったけど、慣れれば問題なさそうね~」
チョコ「ま、すぐに次のステージが始まるけどな!」
カイコ「あら。音楽も画面の見た目も、全然変わらないのね~」
ミコ「道の左右が海になったり、空が夕方になったりするくらいのようです」
(そんな感じで、どんどん先のステージへ)
カイコ「BGMが私を眠りの世界へ誘うわ~」
ミコ「ダメです! 南極ですよ? 眠ったら死んでしまいます!」
カイコ「主人公はペンギンだもの、死なないわ~」
チョコ「しかし、アクション苦手なカイコ姉でも、結構余裕っぽいな!」
ミコ「連続の裂け目とかで、何度か引っかかってますけどね」
カイコ「ちょっとした失敗があったっていいじゃないの~」
チョコ「パーフェクトプレーを目指すとか!」
カイコ「私じゃ無理よ~」
(そして問題なく最後のステージ開始)
カイコ「ステージの最初に表示される地図を見る限り、ここで南極一周みたいね~」
ミコ「あと少しで目標達成ですよ、カイコ姉様!」
カイコ「……このペンギンの目標って、なんなのかしら……?」
チョコ「う~ん……。なんか、猛烈に走りたかったんだろ!」
ミコ「理由になってないです」
カイコ「まぁ、なんだっていいわ~。ほら、もうクリアよ~」
チョコ「お~!」
ミコ「おめでとうございます、カイコ姉様!」
カイコ「ふふっ。アクションゲームだって、べつに問題なさそうね~」
チョコ「いや、これは特別簡単なほうだと……いや、ま、いいか」(ニヤリ)
ミコ「なにか企んでるような顔をしてますね、チョコ姉様……。
とはいえ、喜んでいるカイコ姉様に水を差す必要もないですよね」
チョコ「だがしかし! 古いゲームだから当然ながら……」
カイコ「あら、次のステージが始まったわよ~?」
ミコ「当然ながらの無限ループ仕様なんですね」
チョコ「というわけで、24時間耐久南極レース、行ってみよう!」
カイコ「行かないわよ~!」
☆☆☆☆☆
まさか、カイコがラブレターをもらうとは。
我が娘ながら、可愛らしい顔立ちをしているのは確かだと思うが。
だが、彼氏なんてまだ早い!
……などと言える年齢ではなくなってきているのも確かか。もう高校生になったわけだしな……。
それはともかく、今回のゲームは、けっきょく南極大冒険だったな。
なかなかいいタイトルだと思う俺は、やっぱりオヤジなのだろうか……?
それにしても、単純なゲームだ。
古いゲームだから当たり前と言えば当たり前なのだが。
しかし、チョコがなにか企んでいるようだったのが少々気になるところだ。
次のカイコ担当のときに、難解なアクションでもやらせるつもりだとか……。
……おそらく、そんなところだろうな。
仲よく楽しんでくれるならいいが、意地悪し合うというのはいかがなものか。
それはそれで、ある意味仲がいいと言えなくもないが……。
ま、今さらなにを言っても仕方があるまい。
もっともそれ以前に、俺はなにも言えない状況になってしまっているわけだが。
☆☆☆☆☆
【ゲーム解説】
「けっきょく南極大冒険」
対応ハード:ファミコン 発売元:コナミ 発売日:1985年4月22日
もともとMSXで発売されていた教育ソフトをファミコンに移植したもの。
ペンギンを操作して各国の基地を目指すアクションゲーム。
……他に書くこともないため、以上で!