第二師団の憂鬱②
今日、戦闘回はお休みです。
前から書いてたネタ回ですが、団長のキャラが露わになります。
「やぁぁぁぁっと終わったぁぁぁぁぁ」
俺はゼス。誇り高き帝国軍の第二師団副団長。
皆んなからはニダフクと呼ばれている。ゼスのが短いのに。いつも鍛錬に付き合ってる一等兵に「ゼスのが呼びやすくないぃ?」と聞いたら、「いえ!!響きが面白いのであります!!」と元気一杯の返事が返ってきた。呼び捨てが憚られるとかでは無いのか、我ながらナメられ具合に危機感を覚えた。
さて。俺は今丁度、威厳たっぷりのツラして割と抜けている上官のミス、そのカバーを終えたところだ。
接待用のソファに思いっきり寝っ転がる。朝を知らせる鳥の声が心地良い。因みに三徹目。内容は王立学園の志望者、そのリストアップと受験学科の最終検査。俺じゃなきゃあと3日はかかった。何を隠そうこのゼスは有能なのである。
「あ”あ“ぁぁぁぁ……なんでこんな試験に集まるかなぁ……」
……俺も卒業生だから言えたもんではないが、この王立ヴァルキューレ学園はとんでもない脳筋学校だ。魔法科と薬学科はまだしも、剣術科といったらそれはもう酷い。なんせ選抜方法がトーナメント式のタイマンである。毎年何千人と志願者が来るのが不思議でならない。
このタイマン大会の試験監督は、毎年軍部の各師団が順番で担当している。今年は運悪く第二師団の番だったと言う訳だ。
その為の事前作業を、ウチの団長が見事にすっぽかしていた。期限4日前まで。
ミスをした張本人はと言うと昨晩からずっと団長室の椅子で寝ている。昔からの仲というのもあって、いや、その関係値でギリギリ殴りそうになっている拳を抑えている。
「おぉおぉおい、団長ぉぉ〜?終わりましたよぉ?」
割と大きめの声で言う。
けれど上官は未だぐっすり眠ったままだ。気持ちよさそうな寝息が聞こえる。
「ハァァァァ」馬鹿でかい溜息を吐いて、最終作戦を実行する決心をした。
「ふぅぅぅぅぅ」
思いっきり息を吸って、
「リリアァァァァァ!!敵だぞぉぉぉぉぉ!!」
師団本部全体に響き渡るような声で叫ぶ。
普通なら本物の敵襲と勘違いしそうな行為だが、生憎第二師団では日常茶飯事だ。
団長は威厳を保っていると思い続けているらしい。そんなことは無い。お寝坊さんのアラサー女子である。ただバカ強いってだけの。
「なにっ!?敵は何処だ!!」
「あっ、団長ぉ。終わりまし……」
脳天に激痛が走る。
「ややこしい事すんな!!このボケゼス!!」
団長は寝起きが悪い。
快眠を邪魔された怒りで、いつも俺の頭を鞘でぶっ叩くのである。
最終作戦はここまでがワンセット。お陰で眠気がぶっ飛んだ。意識も一瞬飛んだ。
「あ、終わったのね。ありがとゼス」
ピクピクする俺に構いもせず、団長は書類を箱に詰めてどっかに運んで行った。
団長が去った後、執務室に数名の団員が来て「アンタは頑張ってるよ、ニダフク」「よくやったニダフク」と慰めてくれる。コイツらは俺が率いる大隊の元隊員。10年前からの戦友だ。
「お前らぁ、ありがとぉーーーーー」
ん?待て。感謝しかけたその時、俺はある事に気付く。
コイツらは昨日今日と非番じゃなかったのか?最近、軍部にもしっかり休暇というものができて、(俺と団長を除く)団員達は決められた日数の休暇を与えられている。今俺を取り囲んでいる団員達は、たまたま重なったとかなんとかで、全員休暇を取っていると聞いたがーーーーーー
まさかコイツら。
「お前らぁ……何で手伝わなかったぁ……」
一斉に団員達が顔をそっぽに向ける。
コイツら、団長が仕事すっぽかしてるの知ってて嘘つきやがった。
普通にイジメじゃ無いのか?
「……明日からキッツイ仕事回すからなぁ、覚悟しとけよぉ?」
「そんな!ヒドイぞニダフク!」「パワハラだニダフク!」などとほざいているが、こちとら三徹の怪我人だ。文句は言わせない。
「よぉしお前らぁ、早速巡回に……」
ゆらゆら立ちあがろうとすると、過労のせいか足がふらついて倒れてしまう。
だんだんと遠くなっていく意識の中、「大丈夫かニダフク!」「働きすぎだぞニダフク!」と嫌にデカい声が頭に響く。
「あ“ぁ……もう寝かせて……」
おやすみ、俺。おつかれ、俺。
お前は良くやったよ。
ゼスはそのまま次の日まで起きなかったという。