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第6話 ビーフシチューを作ろう

「あっ、気がついた」


 レイナが白目を剥いてぶっ倒れた十分後、ようやく目を覚まして辺りをキョロキョロと見渡した。


「ええと、私は……って、肉! そうだ、あの肉ってもしかしてドラゴンの肉ですよね!?」


 すぐに記憶が蘇ってきたのか、バッと起き上がると、大声を出しながら俺の顔にグイッと自分の顔を近づけてきた。透き通るような綺麗な青色の瞳を近くで見ながら、俺は若干引き気味に頷く。


「ま、まあ、そうだけど。そんなに驚くことか?」

「驚くことですよ! あんなの、王族の誕生日パーティーでも出てこないですよ!」

「ほへ〜、そうなのか。確かに美味しいもんな」


 白目を剥いてぶっ倒れるのはやりすぎだと思うけど。気持ちは分からんでもない。しかし王族の誕生日パーティーでも出てこないことを知ってるってことは、意外とお偉いさん? 確かに礼儀正しいし品の良さは感じるが。おそらくどこかの貴族の令嬢で『こんな窮屈な暮らしはやめてやる!』とか言って駆け出し冒険者をやっているとかなんだろうな。


 それに気がつくと、何だか微笑ましく見えてきた。俺ももう三十六歳だし、普通に結婚していたら子供がいてもおかしくない年齢だ。自分に子供がいたらこんなふうな気持ちなんだろうな、とか思い始めて生温かい目でレイナを見てしまう。


「な、何ですか、その目は」

「いや何でもないよ」

「……そうですか。まあそれよりも、このドラゴンの肉は自分で狩ったとかですか?」


 恐る恐るそう尋ねられた。何でそんな怖がっているのか分からないので、俺はなんてことないように頷いて答える。


「そうだよ。適当に剣でスパパパパっと」

「て、適当に……。もしかして赤い鱗とかだったりしました?」

「うん、確かに鱗は赤かったな」


 レイナの問いに頷くと彼女は考え込むように俯いてブツブツと呟き始めた。


「秘境『カイアナ山脈』で一人暮らし。災害級とも呼ばれるSSSランクのバーニングドラゴンを難なく倒し、作る料理も衣服も異常な完成度。もしかして彼が噂に聞く『叡智の大賢者』様なのでは? 大賢者様の存在はただの伝説だと思っていましたが……」


 声が小さくて何を言っているのか聞き取れなかった。ただ聞かせる気のない独り言をわざわざ聞き直すほど無神経な俺ではない。それよりも冷めて硬くなったステーキ肉をどうするか考えていた。


 これだったらビーフシチューとかにしてもいいかも……? 煮込みすぎると余計に硬くなりそうだから加減が難しそうではあるが、このまま温め直すよりもいい気がする。でもビーフシチューを作るならご飯も欲しいよな。シチューにご飯が合わないとかいう人もいるが、俺は絶対に欲しい派だった。


「レイナはビーフシチュー好き?」

「びーふしちゅーですか?」


 俺が聞くと考えるのをやめ、レイナは首を傾げた。ふむ、この世界にはビーフシチューがないのか。


「そうか、知らないのか。それじゃあちょっくら作るから、食べてみてよ」


 俺が言うと彼女はなぜか緊張した面持ちで頷いた。


「分かりました。タケル様に作っていただけるのであれば、何だっていただきます」

「タケル様って……。さっきみたいにタケルさんでいいんだけどなぁ」


 いつのまにか様呼びになっていた。そんな偉い人間ではないのでむず痒く感じる。しかしなぜかレイナは首を横に振ると言った。


「いえ、先程の呼び方が間違っていたのです。私なんかがタケルさんなんて、おこがましいです」

「そんなことないと思うけど。そんな高尚な人間じゃないし」


 しかし意固地に様呼びしてくるので、俺は諦めて受け入れることにした。いつかはまたさん呼びに戻ってくれるだろう。


 ともかく今はビーフシチュー作りだ。俺は冷めてしまったステーキを手にキッチンに再び立つと素材変換しながら作り始める。


 今回はお米も用意した。普通は米を炊くのにも時間がかかるが、時空魔法を応用して一瞬で米が炊ける炊飯器を作った。これですぐにお米が食べられるはず。流石魔法。


「これは何ですか……?」


 鼻歌を歌いながら調理していると、興味深そうにキッチンにやってきたレイナが炊飯器を指さして尋ねてきた。


「ああ、これは炊飯器って言ってね、お米を炊くのに使う機械だよ」

「炊飯器? お米? 機械?」


 俺の言葉に頭上にはてなマークを浮かべまくるレイナ。いちいち説明するのも面倒だったので、俺は適当にこう言った。


「まあ見てなって。見てれば分かるよ」

「なるほど。見て学べってことですね」


 いや、学ぶことなんてないと思うけど。普通にお米を炊くのを時空魔法で早めてるだけだし。そんな特別なことは一切してないはずだ。確かに前世だったら時空魔法とか凄いことだったんだろうけど、ここは異世界だしな。これくらいは普通だろう、多分。


「こちらの薄い板みたいなのは何ですか?」


 今度はお手製のIHの方を見てそう尋ねてきたので、俺は何となくで説明する。もちろんIHの仕組みなんて俺も知らん。とりあえず『クリエイト・ハウス』で作れるみたいだったから、ボタンポチーで設置しただけだ。


「これはIHって言って、この上にフライパンとかを置くと温めてくれるんだ」

「仕組みは……やはり教えてくれないですよね」


 俺も知らんからな。教えようにも教えられない。ただそう言うのは何だか恥ずかしかったので、見栄を張って微笑むだけにしておいた。


「とと、ビーフシチューも煮込み終わったし、今度こそちゃんと食事にしよう」


 そうしていい香りの漂うシチューを皿に盛り付け、お米も茶碗に盛り付けて今度こそ昼食にするのだった。

《作者からのお願い!》


この度は、拙作を最新話まで読んで頂きありがとうございます!

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自作が読まれるのは大変嬉しい事です!

引き続き更新をしていきますので、読んで頂ければ嬉しいです!


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