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山籠りおっさんのやりすぎスローライフ~拠点に遊びにくる友人たちを全力でもてなしていたら、知らない間に世界に激震を走らせていました~  作者: AteRa


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第52話 メシマズ合戦

 吹雪が止み、城から脱出できた次の日。ベリアルが俺の家のキッチンで昼ご飯を作っていた。なんかドカンとかバカンとか爆発音が聞こえるし、ものすごい異臭が漂ってきているけど、本当に大丈夫だろうか? その心配は俺だけではなく、ユイも感じているみたいで、ソワソワしながら言った。


「私のキッチン大丈夫でしょうか? 荒れ散らかしてそうでもの凄く心配です」


 今までの食事はユイに作って貰っていたから、キッチンはユイにとって第二の自室だと思っているのかもしれない。その場をベリアルに汚されるとなると気が気でないのだろう。しかしこの罰ゲームが決まってしまった以上どうしようもない。ベリアル自身が悪い意味でヒジョーにやる気を出してるから、辞めると言っても聞かないだろう。


 ドンドン! バタン! ドゴンッ!


「……うん、ダメかもしれない」

「そんなぁ……。私のキッチン……」


 心底悲しそうなユイ。レイナとアンナはこの事実から目を逸らすようにゲームで対戦して遊んでいた。それからしばらくしてキッチンから聞こえてきていた喧しい音が止む。待っているとベリアルが鍋を抱えてリビングにやってきた。


「出来たぞー!」

「うっ……! く、臭い……」


 思わず鼻を押さえてしまうレベルの異臭だ。よくベリアルはアレを抱えて平気でいられるな。てか王族のくせにそんな毒性の高そうなものを作って食べてもいいのだろうか。ガバガバすぎない? 周りを見てみるとレイナとアンナも涙目で鼻を押さえていた。そりゃそうなるよ。それからユイは「私のキッチン! 待っててください! 今助けに行きます!」と慌てたようにキッチンに向かっていった。


「こっ、これはどんな食べ物なんだ……?」


 俺は恐る恐るベリアルに尋ねる。すると彼はなぜか自信満々に答えた。


「これはカレーだ! 以前、タケルに作ってもらったときにみんなに好評そうだったからな!」


 確かにちょっと前にチラッと作ったが、全く違うもののように見える。ここでカレーを選んだのは色々と日本料理を叩き込んでる賜物とも言えるが、今回ばかりは自分が作れるものにして欲しかった。


「これを食べるんですか……?」

「うう……私は嫌だぞ~」


 恐々と鍋を見つめるレイナと、視線逸らしているアンナ。そんな二人にニヤッと笑みを浮かべてベリアルが言った。


「これは罰ゲームだが、人の作ったものを食べないなんて失礼だと思わないか?」


 それにレイナが反論する。


「ロクに練習もせず、人に不味いものを食べさせようなんて失礼だと思わないんですか?」


 まさしく正論。ベリアルの繊細な心に100のダメージ。のけ反って項垂れてしまったベリアルだが、今回ばかりは擁護できない。擁護してしまえば俺が食べることになってしまうからだ。そんなやりとりをしていると、インターフォンが鳴った。


「誰だろう?」


 俺はそう言いながらインターフォンに出る。この家に来て、かつインターフォンの存在を知ってる人なんて限られてはいるが。


「遊びに来てあげましたよ! どうせ暇してるはずですからね! 感謝してください!」


 エルンだった。おお、これは渡りに船だ。犠牲者が一人増えることによって、一人あたりの負担を軽減できる。そう思った俺は、インターフォン越しに返事をする。


「すぐに出るからな! 絶対に逃げるなよ!」

「……逃げるって?」


 俺の言葉に不思議そうに首を傾げるエルンだが、俺はそれに答えずすぐさま玄関に向かった。……良かった、ちゃんと逃げずにいてくれた。


「よく来た、エルン。ささっ、こちらに」

「なんか気持ち悪いですね……。何があるんですか……?」

「いやいや、何もないよ! ともかくこっちに!」


 俺は紳士にエルンをリビングまでエスコートする。その様子に気味悪がっていたエルンだが、そんなことはどうでもいい。今は一人でも犠牲者を増やすことが大事だ。


「って、んんん……?」


 リビングに近づくにつれエルンは違和感を覚え始めたらしい。徐々に眉を顰め始める。しかし俺に右腕を掴まれ引っ張られているエルンはなすすべもなくリビングに辿り着いた。


「何ですか、この匂い……」

「んんー、なんだろうねー」


 エルンの言葉に上手く答えられず、俺は思わず白目を剥きそうになりながら棒読みで誤魔化した。そしてエルンをリビングに引っ張り入れて、ようやく答え合わせをするのだった。


「さあ、エルン。一緒にこのカレーを食べようじゃないか!」

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