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山籠りおっさんのやりすぎスローライフ~拠点に遊びにくる友人たちを全力でもてなしていたら、知らない間に世界に激震を走らせていました~  作者: AteRa


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第49話 猛特訓をするはずが

「タケルさん。スキーに行きましょう」


 次の日、朝起きて早速レイナがキリッとした表情でそう言ってきた。どうやらスキーにハマってしまったらしい。もしくは昨日失敗続きだったのが悔しかったか。……なんか後者な気もするけど。続いてアンナも起きてきて、リビングに入るや否や。


「今日もスキーするからな〜」


 アンナもやりたいらしい。その後、朝食を食べていると、うちにベリアルがやってくる。彼は王族のくせに毎日うちに来てるけど暇なのだろうか?


「はあ。疲れたから今日は休みにきt──「ベリアルさん、スキーしますよ」


 どうやらベリアルはスキーの後、ちゃんと仕事をしたらしい。とても疲れた様子だった。しかしそんなベリアルの言葉に被せるようにレイナが言う。なんて鬼畜の所業。恐ろしい子。ベリアルはレイナの言葉に目を見開いて彼女の方を見るが、レイナのやる気に満ち満ちた顔を見てもう一度ため息をついた。


「はあ……。しょうがない、スキーやるか」


 ベリアルって苦労人というか、かなり尽くしてしまうタイプだよな。絶対真っ先に損をするタイプだ。てかこれで王族とか大丈夫か? 少し心配だ。まあ俺が心配するようなことじゃないと思うけど。それともプライベートとオフィシャルで切り分けてるのかもな。ともかく俺も同意して二日連続スキーをすることになった。


「やっぱり雪景色はいいですね!」


 昨日もきた雪山に到着すると、レイナは声を弾ませてそう言う。少し嫌そうにしていたベリアルも一面銀世界を見て調子を取り戻していた。


「くくくっ、今日こそは上手く滑ってやる!」

「私も負けないぞ〜」


 そして頂上まで行き、スキー板を履く。何度か登り降りを繰り返して──。


「くそ〜、やったな、レイナ〜!」

「ふふふっ、さっきのお返しです!」


 みんなスキーに飽きていた。あれから三回滑っただけで満足したらしい。レイナとアンナは雪合戦を始め、ベリアルは一人黙々とかまくらを作り始めていた。そんな中、俺はポツネンと一人寂しく立つ。スキー、もう少ししたかったなぁ……。


「あはは〜。レイナめ、かかったな〜」

「むぅ! やりましたね!」

「そんな攻撃、私には効かないよ〜」


 って、いつの間にか雪合戦がなんでもありの恐ろしい遊びに変わっている。レイナはキモいくらいの挙動で雪玉を避けてるし、アンナもアンナで魔法を使いまくっている。……ベリアルは大丈夫か? そう思ってベリアルの方を見てみると。


「……なんか城が建ってる」


 さすが王族。やることのスケールが違う。雪だけで小型の城まで造ってしまうとは。そこまでは想像していなかった。普通かまくらって丸っこいヤツじゃないの? 異世界だと認識が違うの? そう異世界のスケール感の違いに置いていかれそうになったその時。重たい雲で太陽が陰る。……む、嫌な予感。そして嫌な予感は大抵当たるものだ。


 ゴォッ、っと一瞬で吹雪になった。山の天気は変わりやすいと言うが、唐突すぎないか? 一瞬パニクる俺の手をレイナが取り、ベリアルの建てた城にまで引っ張ってくれた。


「とりあえずここでやり過ごしましょう!」

「そうだな〜。一応保護魔法かけておくか〜」

「……造ってて良かった。寂しかったけど」


 なんか最後に聞こえたな。あれって一人になりたかったんじゃなくて、一人にならざるをえなかったんだな。あの二人の間に入り込むのは勇気が入りそうだったし、安全をとって一人でかまくら(城)を造ってたんだな。その物悲しさに同情と共感を覚える。俺に話しかけてくれれば良かったのに。……てか、なんで俺に話しかけてくれなかったんだ? もしかして俺、ベリアルよりも下に見られれてる? そんなバカな。まあ普通に考えれば、スキーをしたがってる俺にスキーをしたくないベリアルが近づいてくるわけないよな、うん。


「ううっ、寒くなってきましたね」

「一旦、保温魔法も使っておくか〜。ただ城が溶けそうならすぐやめるけど〜」

「助かる。俺も寒くなってきた」


 こうして俺たちはベリアルの建てた城の中でどうにか吹雪を乗り過ごそうとするのだった。

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