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山籠りおっさんのやりすぎスローライフ~拠点に遊びにくる友人たちを全力でもてなしていたら、知らない間に世界に激震を走らせていました~  作者: AteRa


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第27話 下界に行くことになりました

 さらに一週間が経ち、ロシュやレイナたちはすでに帰ってしまった。そうなると暇なので、俺は彼女たちとオンライン対戦ができないか試してみることにした。


「おっ、早速マッチングしたぞ……って、あれ?」


 知らないユーザー名のプレイヤーとマッチングした。しかも初心者みたいでメチャクチャ弱い。ロシュもあれから練習をし、それなりに上手くなっていたので、ここまでではなかったはずだ。


 どういうことだろうか? 俺がしきりに首を傾げていると、対戦が終わった後にその人からメッセージが飛んできた。


『もしかして貴方が『叡智の大賢者』様ですか!?』

『叡智の大賢者……?』


 なんだそれは? 俺がチャットでそう返すと、彼(彼女?)は色々と説明してくれた。


『叡智の大賢者は魔道具に革命を起こしただけではなく、ゲームという新しい遊びをこの世の中に浸透させ、新しい芸術を巻き起こし、ハイエルフ様に温泉という癒しの空間を授けたとされるお方ですよ!』


 ……ん? んん? 確かにゲームを作ったのも二次元イラストを芸術として広めたもの、温泉をエルフに教えたのも俺だが。本当に俺のことなのか? 叡智の大賢者というものは。いやまて、それにハイエルフだって? あの人食い花に食われまくっていたエルンのことか?


 とりあえずその人とのメッセージは放置し、とりま通信用魔道具でアンナとエルン、それにサクラダ商会のハカトに連絡を取ることにした。


『ああ、ゲームの構造の解明をして、量産できるようにしたな〜。一応、前に確認とったはずだぞ〜』

『はい! あの温泉とやらには衝撃を受けたので、部下たちに温泉を掘らせ、今では毎日堪能できてますよ!』

『確かにタケル様の描いたイラストは飛ぶように売れ、今では一大流行を築き上げています』


 ……本当だった。そんな馬鹿な。そこまで目立つつもりはなかったのに。しかし転生した時に女神が言っていたのはこの世界に変化を起こして欲しいってことだった。だから図らずともそれは成し遂げているわけで……。いや待てよ。女神は何もしなくてもいいと言った。つまり俺が意図的に何かをしなくても、いずれこうなることを予測していたのでは?


「くそっ、そういうことか!」


 気がついてしまった。俺がこの世界に転生した時点で、この世界に革命を起こし目立ってしまうことは決まっていたのだ。……だが、今更どうしようもないし、冷静に考えれば別に怒るようなことでもない。この森の家は他には知られていないみたいだから、ここに籠っていれば平穏は保たれるはず……。


 そう思っていたのも束の間。


 家のチャイムが鳴った。インターフォンで確認するとアンナの姿が。俺が玄関を開け顔を出すと、アンナは勢いよく頭を下げた。


「ごめんな〜、タケルさん。どうやらうちの学会の学会長が、タケルさんと一緒にゲームできたと言っていてな〜」

「……ん? 学会の学会長?」


 もしかしてあれか? さっき一緒にオンライン対戦をしたあの人か?


「そうなんだよ〜。ネットワークアダプターの量産をしようとしてたんだけど、その試作品のテストプレイで運悪くタケルさんと当たったみたいで〜。うちの学長が『今すぐにでも叡智の大賢者に会いたい! 会いたいったら会いたいの!』って言って聞かなくて……」


 凄く申し訳なさそうにそう言うアンナ。


「それって、俺が会わないとどうなるんだ?」

「まず凄く不機嫌になるんだよ〜。そして物に当たりだし、気がついたら国が滅ぶってことにも……」


 ええ……そんな馬鹿な。学会の学会長ってそんなに強いのか。


「本当に申し訳ないんだけど、少しくらい顔を出してくれると助かるかな〜……」


 そこまで言われては仕方がない。アンナも本当に申し訳なさそうにしているし、そもそも俺が撒いた種で俺の責任でもある。


「分かった。学会とやらに顔を出してみるよ」

「おお〜! すごく助かるぞ〜! ありがとう〜!」


 俺が頷いて言うと、アンナはホッとした表情になった。そんなに板挟みになっていたのか。


 まあそんなわけで、俺はイラストを卸しに行って以来、久しぶりの下界に足を運ぶことになるのだった。

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