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山籠りおっさんのやりすぎスローライフ~拠点に遊びにくる友人たちを全力でもてなしていたら、知らない間に世界に激震を走らせていました~  作者: AteRa


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第10話 新しい芸術の息吹です

「よしっ、いい感じの出来だぞ」


 俺は自分の書いたイラストを眺めながらそう頷いた。イラスト……というよりかは一応枠組みとしては水彩画になるのだろうか? しかし書いたのは前世で見ていたロボット風アニメの水色ショートのクーデレヒロイン風の二次元キャラである。水彩画と言っていいのかも分からん。


「ま、名称なんてどっちでもいいか。なあ、トキもそう思うよな?」

「わん!」


 俺が尋ねるとトキは嬉しそうに返事をした。精霊世界には定期的に顔を出してほしいと言われたので気が向いたらまた足を運ぶつもりである。しかし別にあっちに用事があるわけでもないので、おそらくお茶会をするくらいで終わるだろう。昨日、精霊はおしゃべりが好きだと言っていたし。


 ともかく、芸術系の魔法を使って描いたイラストの出来が思ったより良かったので、少し他人に見せつけて布教したくなってきた。オタクの本質は布教活動にあるからな。


「少しくらいは観光もしたいと思っていたからな。観光がてら商業ギルドに絵を売ってみるか」


 そう決めると立ち上がり、俺はトキのほうを見た。


「お前は……この大きさじゃあついてこれないだろうなぁ」


 絶対目立つし。そう思っているとトキは悲しそうな声を上げた。


「くぅん……」

「もう少し小さくなってくれたら連れていけるんだけど」

「くぅん!」


 俺が言うと今度はトキは嬉しそうな声を上げた。そしてピカッと光ると一回り小さくなったトキが現れた。


「小さくなれるのか!」

「わん!」

「それじゃあ一緒に街に行こう!」


 そして俺はトキを連れて、転移して初めての異世界の街に足を運ぶのだった。



+++



「おおっ、意外と賑わってるんだなぁ!」

「わん!」


 住んでいる山から一番近くの街『トートリス』の大通りを歩きながら俺は感嘆の声を上げた。それに同意するようにトキも声を上げる。


 通りの脇にはたくさんの出店が出ていて、肉の焼ける匂いやらが漂ってくる。串焼き以外にも果実や野菜などを売っている店もあった。ほかにも怪しげな道具とかを売っているのもあるな。


 人もかなり多く、特に子供が多かった。みんな楽しそうに追いかけっこなどをしていて、全体的に雰囲気が明るい。子供たちを見ている大人たちの視線も微笑ましそうだし。


「とと、ここが商業ギルドか」


 大通りを歩いていると、ちょっと前におばさんに教えてもらった看板が目に入った。酒樽と紐をモチーフにしたエンブレムが特徴的だな。


 商業ギルドの建物内も和気あいあいとしていて、みんな酒を飲みながら楽しそうに話し合っている。聞き耳を立ててみると、商売が上手くいっただとか、商売を持ち掛けていたりだとか、そんな会話たちが聞こえてきた。まあ中には借金しようとしている声も聞こえてくるが。


 とりあえずカウンターの列に並び順番を待つ。しばらくすると俺の番になったので美人な受付嬢の前に立った。


「こんにちは! 今日のご用件は何でしょうか?」


 俺は早速インベントリから自分の絵を取り出すと受付嬢に見せた。ちなみにこの絵は俺の身長ほどの大きさがある。張り切ってしまい、思わず大きすぎるキャンパスに描いてしまったのだ。


「……もしかしてインベントリ持ちですか?」

「あっ、ええ、まあそうですね」


 インベントリって意外とレアなのか? まあ空間魔法のレベル9を持ってないと使えないからな。しかし見せてしまったものは仕方がない。俺はすぐに諦めて肯定した。


「そうですか。有名な商会の方でしょうか……?」

「いや、そうではないです。ただの一般人ですよ」


 俺はそう言うが胡乱げな視線を向けられた。しかし正体を隠したがっているのかと思ってくれたのか、それ以上は追及してこなかった。別に正体を隠しているわけじゃなくて、一般人なのは本当なんだが。


「それで、その絵画を売りたいということでしょうか?」

「はい、そうですね」


 俺が頷くと受付嬢の女性は立ち上がってカウンターから出てくると絵をマジマジと見始めた。品定めしているのかと思っていたが、どうやら少し違うらしく、隅々まで見て回ると不思議そうに俺に尋ねた。


「ええと、サインが入ってないみたいですが、これはどなたが描かれたのでしょう?」

「サイン?」

「はい。普通、絵画には制作者のサインが魔法インクで書かれているはずなのですが……」


 そうなのか。しかしそんなものはない。知らなかったのだから仕方がない。


「これは俺が描いた作品ですね」


 その言葉を聞いた受付嬢は苦笑いを浮かべる。どうしたんだろうと首を傾げていると説明してくれた。


 どうやら絵画は制作者のネームバリューが絶対らしい。誰かも知らないような人が描いた作品はほぼ値がつかないとのこと。


「そうですか……。分かりました、ありがとうございました」


 俺はそれを聞いてしょんぼりと肩を落としながらギルドを出た。う~ん、やっぱりそう上手く事が運ぶわけでもないみたいだ。そう思いながらブラブラ街を歩いていると、後ろから慌てたように追いかけてくる髭面のおっさんがいた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「ええと、あなたは……?」


 そのおっさんに尋ねると彼はゼエゼエと息を切らしながらもこう言うのだった。


「俺は『サクラダ商会』の会長なんだが、先ほど取り出していた絵を俺に売ってくれないか!?」

《作者からのお願い!》


この度は、拙作を最新話まで読んで頂きありがとうございます!

この物語を楽しいと感じて下さるのは、皆さんが応援して下さることでより期待に沿える物語を書こうと前向きになれるからです! 本当にありがとうございます!

自作が読まれるのは大変嬉しい事です!

引き続き更新をしていきますので、読んで頂ければ嬉しいです!


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