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悪女の悪あがき ~九条ロゼリアはデッドエンドを回避したい~  作者: 杏仁堂ふーこ
本編

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242.ドレスコード?②

 キキってこんなにしっかりした子だったんだ、という感慨深さがある。あたしが全然そういうのを知ろうとしなかっただけで、実は結構お姉さん気質とか長女気質なのかも。あたしより年下だけど考えとかはしっかりしてる。

 ちょっと悩んでから『陰陽』や八雲会との関わりなどを伏せて、今回の計画について簡単に説明した。単純にアキヲを捕まえるために外部の力を借りて、倉庫街の一角で捕縛劇のようなものが展開されるという説明。

 流石に驚いていたけど、計画やその背景についてキキは聞こうとはしなかった。単純に興味がなさそう。


「……な、なるほど。そういう場に出席? する場合の服装……」


 しかし、当たり前のように困ってしまっている。あたしだってユウリに聞かれた時に全然考えつかなかったんだからキキだって困るわよね。

 キキは少し俯いて考え込む。黙って反応を待っていると、困った顔のまま顔を上げた。


「ロゼリア様の役割などを聞くと、……ドレスとまではいかなくとも、多少なりとも存在感のある服装の方が良いのではないでしょうか。それでいて、フォーマルな格好がいいと思います」


 どちらかと言うとメロやアリス寄りの意見。まぁ、それ以外に案が出てないんだけどね。

 でも、存在感と言われてちょっと納得した。特にアキヲにはあたしが計画を潰しに来たということがわかるようにしなければいけない。だから目立たないような格好は好ましくない。今のあたしはジャージなんて持ってないけど、ジャージみたいなラフな格好も相応しくない、と。

 メロやアリスに言われるとちょっと不信感が湧いちゃうものの、キキに言われると納得は、できる。これまでずっとあたしの服装や髪型のことをやってきてくれてたしね。


「フォーマルなワンピースや、華美でないドレスならいくつかあったかと思います」

「それ、あたし多分全然着てないヤツよね?」

「はい。いずれ必要な場面があるかもと言われて購入されたのですが、機会に恵まれず……仕舞ったままになっています」


 多分金を使うのが目的だった時に買ったヤツだわ。だってどんなものだったのか覚えてないもの。


「わかったわ。ちょっと確認しましょ」


 そう言って立ち上がる。

 そのワンピースやドレスが動きづらそうなら却下だし、そうじゃなかったらそれでいい。心情的に気合は必要だけど、服装に気合を入れていく必要性を感じないわ。メロやアリスはドレスアップを希望しているけど、わざわざそこまでする必要性があるとは思えないのよね……。っていうか、単純にアキヲのために気合を入れてるみたいでちょっと癪。

 キキとアリスもあたしに合わせて立ち上がり、執務室を出て衣装部屋へと向かった。

 ……これまで意識してなかったけど、あたし専用の部屋って多いわね。前世の頃だったら考えられないわ。私室に寝室、執務室、応接室、衣装部屋etc──あとはお風呂なんかも実質あたし専用だし……。今更使わないなんて言う気はないけど、ほんと贅沢な身分だわ……。

 衣装部屋に入ると、キキが「失礼します」と言って奥にあるクローゼットに向かっていった。


「確かにこちらに……」


 カバーをかけられて一着ずつ綺麗に収められている。それを確認しながらキキがさっき言っていたドレスだかワンピースを探し出した。しばらく探してから、一着のドレスを取り出して、あたしの方に向けた。


「こちらとか──。あ、アリサ、奥にある黒いワンピースを出してくれる?」

「あっ、はい!」


 あんまり広くないからか遠慮していたアリスがちょっと笑顔になってキキの指示通りに同じ場所に収められていた黒いワンピースを取り出した。そして、キキと同じようにあたしに見せてくれる。

 ダークネイビーのイブニングドレスと、黒のワンピース。

 どちらも本当に『無難』という言葉が似合うシンプルなものだった。


「……黒い方、喪服だったりしない?」

「えっ!? い、いえ、流石にそんなことはない、ですよ?」


 アリスが黒いワンピースを慌てて確認する。けれど、そうじゃないらしい。

 ま、まぁ喪服は喪服でちゃんと持ってるからそうじゃないとは思ってるけど……こんなの買ったっけ? と過去の自分を疑いたくなるくらいに好みじゃない。フリルやレースが付いてたり、刺繍がされていたり装飾が凝っていたり、派手なのが好きなのよ。もちろん二つとも生地がいいのはわかるものの、あたしのテンションが上がるタイプの服じゃない。

 ってことは、やっぱり何かの買い物の時に「いつか着るかも知れないから」と適当に追加したんだわ。金を使う目的で。

 勿体ない。勿体ないけど、無難すぎてつまらない。


「こちらはいかがですか?」

「丈が長すぎて足元が不安。高いヒールを履くつもりはないし……」

「仰るとおり、裾が足に絡みそうですね……少しお待ち下さい」


 キキに問われて、申し訳無さを感じつつ不満な点を告げた。キキは傍にドレスを掛けておき、アリスが持っている分もその横に掛けてしまう。比較ができるようにということだろう。

 再度クローゼットの中を探し、更に二着のドレスを取り出した。片方をアリスに預けて、両方をあたしに見せてくれる。

 両方とも黒いドレスだったけど、さっきよりは華やか。

 キキが持っている方はワンショルダータイプで太ももから大胆にスリットが入っているタイプ。アリスが持っているのはAラインのドレスで前の丈が短めで、後ろが長いタイプだった。

 こんなのもあったんだ……。さっきよりはマシ。


「ロゼリア様。私の基準で華美ではないと判断するとこの二着までかと思います。──あとはレースや刺繍などがあしらわれており、やや派手なものになっていくかと……」

「なるほどね。……あんたたちはどっちがいいと思う?」


 悩ましいところではあるけど、あんまり深くも悩みたくなくて──。

 ということで二人の意見を聞くことにした。

 キキもアリスもきょとんとしてから顔を見合わせる。

 そして間髪入れずに答えた。


「こちらです」

「わたしもこっちがいいです!」


 二人が選んだのはキキが持っている方だった。スリットが入ってるやつ。


「ふーん。じゃあ、それにする」

「よろしいのですか?」

「普段着でいいって思ってたくらいだもの。これというドレスコードもない状態だし、あんたたちの意見を聞くことにするわ」

「あ、りがとうございます」


 お礼を言われてちょっとくすぐったくなった。キキはそれで良さそうだったのでアリスを見ると、何故かちょっとワクワクしてた。


「アリサ、あんたの希望とは違うと思うけど──……」

「えっ? いえ、ぜんぜん! ぜんぜん素敵です! この格好でかっこよく決めるロゼリアさまが今からとっても楽しみです」

「そ、そう……」


 かっこよく決めるつもりもないのに、変な子。

 アリスに聞きたかったことも聞けたし、当日の服装も決まったし……これでいいかな。


「キキ、アリス。悪いんだけど、それに合う靴とあと上着を選んでおいてくれる? 上着は何でもいいわ。けど、靴だけは何足か候補をしておいて。試し履きしたいし」

「はい、かしこまりました」

「まかせてくださいっ!」


 キキはいつも通り冷静に、アリスは元気よく返事をした。

 これで服装とかのことは二人に任せておけばオッケー、と。あとは明日の打ち合わせね。

 アリスが明日までにジェイルと話をしておいてくれると助かるけど……どうかしら。心配になってアリスを見ると「だいじょうぶです」とクチパクで伝えてきた。ちょっと不安だけど、一旦任せておこう。

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