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悪女の悪あがき ~九条ロゼリアはデッドエンドを回避したい~  作者: 杏仁堂ふーこ
本編

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125.回復したので①

 水田の用意してくれた朝ご飯(結局胃に優しいものということでおかゆだった)を食べて、医者の到着を待って診察を受けて──熱が下がったので問題ないでしょう、という診断を受けた。よかった、これで自由になる。

 キキも医者がそう言うならってことで納得してくれた。なんだか最近キキが過保護になった気がするのよね。あたしの方が年上だし、キキが昔風邪引いた時だってあたしはピンピンしてたから変な感じだわ。

 

 キキに着替えを手伝ってもらっていると、心配そうな視線を向けられた。


「ロゼリア様、ご無理はなさらないでくださいね」

「ええ、わかってるわ。ところでメロとアリサはいる?」


 忘れないうちに話をしておきたいのよね。アリサには一昨日のことを改めて聞きたいし、メロにはアリサといい感じかどうかの探りを入れたい。

 キキは「どうしてその二人?」とでも言いたげな顔をした。


「え? アリサには買い出しをお願いしてるので今はいません。メロは……ふらっと消えてしまって……」

「メロは相変わらずね」

「すみません……」

「別にあんたが謝ることじゃないでしょ」


 やけにキキが申し訳無さそうにしている。

 アリサの教育係はキキだけど、メロの面倒を見るのは誰の役目でもないから謝らなくてもいいのに。

 二人ともすぐに話せないんじゃしょうがないわね。アリサの方は早めに話をしたいけど、今は一旦後回しにしておこう。


「ジェイルは?」

「いらっしゃいますよ。お着替えが終わったらお会いしたいそうです」

「そう、じゃあジェイルを呼んでくれる? 執務室にいるって伝えて」

「かしこまりました」


 そう言ってキキは一旦部屋を出ていく。

 着替えも済ませたし化粧も完了した。昨日は化粧もしなかったしずっと寝間着だったから楽だったのよね。とは言え、やっぱり身なりをきちんとするとテンション上がるから、何もしない日っていうのはたまにでいいわ……。

 ジェイルにはユキヤに倉庫街のことを連絡してもらったから、ちゃんとユキヤに伝わってるかどうかの確認をしたい。あとは、ユキヤに一言謝っておきたいから、連絡をしたい。

 そう言えば、一昨日買ったものってもう届いているのかしら? 買い物は本当に不完全燃焼だわ……。


 自室から執務室に移動して、中央にある応接セットのソファに腰掛けた。

 執務机に向かう気はないのよね。まだ。

 そう間をおかずに、ジェイルがやってきた。


「お嬢様、お待たせしました」

「ジェイル。悪かったわね、体調を崩しちゃって……」

「! とんでもございません。一日で熱が下がって何よりですが……本当にもう大丈夫ですか?」


 みんな同じことを聞いてくる。本当に大丈夫なのか、って。ちょっと面白い。

 あたしは口の端を持ち上げて笑い、ジェイルに座るように促す。


「大丈夫よ。本当に熱が出ただけなの」

「……その、熱が出る、というのは既に──……いえ、失礼しました。ご無理なさらないでください。何かあればすぐに仰っていただければと」

「心配性ね」

「お嬢様だからですよ」


 反応に困って無言になってしまった。

 こういう場合、なんて返すのが正解なの……?

 以前だったら「いい心がけじゃない」とかって偉そうに言ってたに違いないんだけど、今となってはそんなことも言えず……かと言って気の利く返事も思い浮かばない。

 目の前に座ったジェイルを見つめて、とりあえずお礼を言うことにした。


「ありがと。──ところで、ユキヤにはちゃんと伝えてくれた?」

「はい。昨日、あの後すぐに連絡をしました。ユキヤがすぐに調査をするとのことです」


 南地区の倉庫街の一角、そこで計画の一部である闇オークションや人身売買取引場が作られる。表向きは普通の倉庫として使うふりをしながら実は、ってことになってる、はず。

 ゲームでは完成タイミングはもっと後だけど、話自体は進んでて場所の確保までは確実に終わってる。周りにバレないように秘密裏に進めることになってるから、既に工事自体も始まってないとおかしいと思う。そこを確認できればかなり話が有利に鳴ると思うんだけど……まぁ、そう上手く行くか、って感じよね。

 ユキヤがちゃんと調べてくれる、はず……。


「ただ、少し時間がかかるかと……」

「それはしょうがないわね。ユキヤ、無理をしてないと良いんだけど……」

「慎重な男なのでその点は大丈夫だと思います」


 幼馴染のジェイルがそう言うなら大丈夫でしょう。あたしもユキヤのことは信用してる。

 ユキヤには後で連絡するとして、もう一つ確認。


「……それはそれとして、全然話が変わるんだけど」

「何でしょう?」


 なんかジェイルに聞くようなことでもない気がするけど……一昨日の買い物に同行してたし、椿邸のことも色々管理してるから、多分把握してくれてる、と思いたい。


「一昨日買った服ってもう届いてる?」

「ああ、届いています。ご覧になりますか?」

「本当!? 一応確認したいわ!」


 スカートとトップスのセットとちょっとした小物しか買えてないけど! 戦利品を一応確認しておきたい。

 あたしがうっかり目を輝かせてしまうと、ジェイルが微笑ましげに口元を緩めた。なんかちょっと気まずい。なんでそんな生暖かい視線を寄こすのよ。

 しれっとした表情を作ると、ジェイルがユウリを呼んで一昨日の戦利品一式を持ってきてくれた。


 これまでの買い物の時と比べると数は全然少ないけど、真新しい服を見るとテンションが上がる。

 一つずつ確認していくと、その中に買った覚えのないブラウスが一着。

 シンプルながらに襟元にレースがついててちょっと華やかさがプラスされている一着。こんなの買った覚えがないのよね……店員が間違えて入れちゃったのかしら?

 あたしはそのブラウスを手に取り、ジェイルとユウリを振り返った。


「これ、買った覚えがないんだけど……」

「そうなのですか? では、返却を」

「あ、あの、そちらはユキヤさんからだそうです」


「「え?」」


 あたしとジェイルの声がハモった。

 手に持ったブラウスをまじまじと見つめてから、もう一度ユウリを振り返る。


「……ユキヤから?」

「はい」

「なんで?」

「す、すみません、流石に理由までは……届けに来た外商の方がそう言っていただけなので……」


 一瞬デパートからのサービスかと思ったけど、それならわざわざユキヤの名前を出す必要はないのよね。ってことは、やっぱりユキヤが購入して、うちに届けるように言った、ということ……。

 というか、これは二軒目で見た気がする……。

 その場でユキヤが選んだブラウスはあまりにシンプルすぎて面白みがなかったのを思い出した。

 考え込んでいるとジェイルがブラウスにそっと触れる。


「返却しましょうか?」

「──いえ、いいわ。あたしからユキヤに確かめるから。結構可愛いし、このまま貰っておくわ」

「そう、ですか……」


 ジェイルの反応は微妙だった。返す手間が省けるのに何なのよ。まぁいいや。

 戦利品一覧を見て満足したわ。やっぱり自分の目で買ったもの全部確認しなきゃね。はー、買い物にまた行きたくなっちゃった。今は無理だけど、またいずれ……!

 ブラウスを元の場所に戻して、ジェイルとユウリを交互に見つめた。


「これはクローゼットに入れるように言っておいて」

「承知しました」

「はい、では一旦回収しますね」


 ユウリは持ってきた服を全て回収し、部屋から出ていった。


「ジェイル、ユキヤの予定って聞いてる? 電話しても大丈夫かしら?」


 言いながら、自分の携帯を取り出した。

 早めに連絡したいけど、今日中にできればいいかなという程度。ジェイルが何か予定とか聞いてるならすぐに行動するつもりもなかった。


「詳しくは聞いていません。が、お嬢様からの電話ならすぐ取ると思います」

「そう、じゃあかけてみるわ。……出れないなら、折り返しもあるでしょうし……」

「はい。では、自分も一旦失礼します。──何かあればお呼びください」


 電話をかけると言ったからか、ジェイルが立ち上がって部屋を出ていく。

 あたしはソファに腰掛けたまま、携帯を持ち上げるのだった。

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