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4話 兄思いの妹

 春人たちは自販機の前で止まると商品に目を彷徨わせていた。


「何にするかな。炭酸がいいかな……」


「私はお茶でいいかな。炭酸苦手だし」


「え?そうなの?」


「うん。なんか喉をしゅわしゅわしたのが通っていくのが慣れなくて」


「へー、俺はどっちかというとそれが好きなんだけどな。炭酸も強めの方が好みだし」


 飲み物の好みについてあれこれ話していると後ろから声を掛けられる。


「あれ?兄さん?」


 声の感じと呼び方から春人は振り向かなくてもその人物に予想が付いた。


琉莉(るり)。どうした?お前も飲み物買いに来たのか?」


「ううん、教室戻ろうとしたら兄さんがいたから声かけただけ」


 彼女は百瀬琉莉。春人の双子の妹だ。目元や顔つきがとても似ていて昔はよく春人が女の子と間違えられたりもしたが成長するにつれてそんなこともなくなった。琉莉の方は成長しても幼さが顔に残り高校生と思われることはまずない。それでもその愛くるしい顔と常にアンニュイな感じを醸し出していることから一部の生徒に人気だったりもする。


「兄さんはまたジュース?そんなに飲んでると身体壊すよ?」


「いうほど飲んでないだろ。一日一本に抑えてるし」


「それは抑えてるとは言わないよ。いいからお茶とかにしときなよ。これは私が貰うから」


 そう言うと琉莉は春人の手からジュースを奪い取る。


「あっ、こら琉莉!」


「怒っても駄目だから妹としては兄さんの身体が心配なの」


 落ち着いた口調でそう言うと琉莉は美玖へ顔を向ける。


「初めましてですね。兄さんの友達?ですか?」


「おい、なんで友達の部分そんなに強調した」


「兄さんにこんな綺麗な友達がいるとは思えなくて……多分私の勘違いですね、ごめんなさい」


「勘違いじゃねえよ!頭下げんな!」


 勝手に納得し美玖へ頭を下げる琉莉。兄への扱いが雑過ぎると春人は顔を引きつっていた。

 しばらく春人たちの会話に置いてけぼりになっていた美玖がそっと口を開く。


「えーと、百瀬君の妹さん?でいいんだよね?」


「はい。初めまして百瀬琉莉です。いつも兄が迷惑をかけており申し訳ありません」


「何が迷惑じゃコラ」


「兄さん、世の中には社交辞令ってものがあるんだよ。挨拶の流れ的に私は悪くないよ」


「あ、そういうこと。悪かった俺が早とちりして」


「まあ、本心で言ってるから間違ってないけれど」


「お前喧嘩売ってんのか!」


 再び琉莉と言い合いになりそうだったが美玖が目を丸くしている様子に気づき春人は熱くなった頭を振って何とか冷静さを取り戻す。


「悪いな桜井、妹が悪ふざけして」


「私は本音を言っただけだよ?」


「質が悪いわ余計に。たく……、えーと琉莉、この人は――」


「桜井美玖さんだよね?知ってるよ」


「なんだ知ってたのか」


「むしろ知らない人の方が珍しいでしょ。学校一可愛い女の子」


「あはは、それやっぱり知ってるんだ」


 美玖が頬を掻き苦笑する。


「うん。知ってる。近くで見るとこの噂にも納得できる。仲良くしてもらえると嬉しいかな」


 あまり表情を変えない琉莉が目を少し細めて微笑む。


「ええ、こちらこそよろしくね琉莉ちゃん」


「うん、よろしく美玖さん」


 気づけば仲良く下の名前で呼び合っていた。女の子ではこれが普通なのか、春人の感覚とは大分違うので少々困惑する。


「それじゃあ、私は教室戻るから、兄さんジュース買ったらだめだからね」


「はいはい。わかったよ」


 春人は適当に右手を振って答えると琉莉は教室の方へと歩いて行った。


「百瀬君妹がいたんだね」


「ああ、隠してたつもりはなかったけど話す機会もなかったからな」


「しっかりした子だね琉莉ちゃん。お兄ちゃんの健康何て普通気にしないよ」


「……しっかりか、まあ、そうだな」


「ん?なんか引っ掛かる?変なこと言ったかな?」


 春人が歯切れの悪い言い方をしたため美玖が不思議がる。


「いや、桜井の見たとおりだと思うよ。あれはどう見てもしっかりした妹だ」


「んーなんか気になる言い方」


「気にしないでくれ、それより俺たちも早く戻ろう、授業が始まるぞ」


「あ、うん、行こうか百瀬君」


 二人並んで廊下を歩いていると朱莉が口を開く。


「妹がいるなら百瀬君じゃややこしいね。春人君って呼ぼうか?」


「ちょっ!それは今は止めてくれ……」


 悪戯好きな笑顔を作る美玖に春人はわかりやすく動揺する。


(うわぁー、名前呼び破壊力やばっ。女子ってよくいきなり名前で呼び合えるな)


 さっきの美玖たちの会話を思い出しながら感心する。


「そう?残念」


 いつもの調子で淡々と言う美玖からは何も読み取れない。


(今の残念は嘘なのかそれとも……)


 毎回毎回揶揄われているせいで疑心暗鬼になってしまっている。

 教室に戻って授業が始まっても春人は美玖言葉の真意が気になって全く集中できなかった。

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