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34話 成長してからやる人生ゲームは昔とは違う楽しみ方ができる

「それじゃあ次は何しようね」


 春人のアルバムも見終わりやることが無くなった。香奈が早速次の遊びを要求してくる。


「疲れないのか?香奈なんかずっとしゃべってるだろさっきから」


「折角春人の家来てるのにもったいないじゃん」


 そんなに楽しんでもらえているのなら春人としても嬉しいが逆になんでそんなにとも思う。


「何をするか……ボードゲームとかならあった気がする。人生ゲームとか」


「人生ゲーム懐かしっ、え、やりたい!」


 なぜか人生ゲームに強い興味を示す香奈に春人は少々驚く。


「そんな食いつくほどやりたいか?」


「だって人生ゲームとか久しぶりだし、あたし最後やったの小学生くらいだよ。高校生になってからやる人生ゲームっていろいろ理解できて楽しそう」


 目を輝かせて力説する香奈に気圧されるが春人も少し共感できる部分はあった。


「確かにここ最近やった記憶ないな。ゲーム内に出てくる保険とかも何となく入ってたけど意味が分かるとなんか重みがあるかも」


「でしょでしょ!ねーやろうよ皆ー」


 もう香奈の中では人生ゲームの口なのだろう。やりたくてしょうがないらしい。駄々をこねる子供を見てるようでつい笑ってしまう。


「そうだね私もなんかやってみたくなってきた」


「持ってきた」


 同意する美玖の言葉と同時に琉莉が人生ゲームの入った箱を持ってきた。琉莉もやる気になったらしい。


「ならやりますか。机少し片づけるぞ」


 春人は机の上に広がったアルバムを整理し机の下に置くと人生ゲームのボードを広げる。


「わー懐かしい。そうそうこの車が駒なんだよね」


「結構小さかったんだね。昔はもっと大きく感じてたけど」


 ボードを広げただけで話が盛り上がる。懐かしさを共有できるだけで話してて嬉しいものだ。


「これってお金の単位ドルなんだよな。俺ずっと円だと思ってた」


「あ、私もー」


 ちょっとしたことでも楽しく思えてしまう。


「ややこしいしドルでいくけどいいか?」


「私はいいよ。皆に合わせる」


「あたしもー」


「うん、大丈夫」


 全員の意見が合い早速最初のお金と駒を配る。あとは最初に自動車保険に入るかを選べるがここは全員入ることを選んだ。


「んじゃ最初はあたしだねー」


 じゃんけんで決めた順番で香奈からルーレットを回す。


「とうっ……六!一、二、三……プログラマーになるだってー。かっこいいしこれにしよう!」


 香奈はそのままマスに従い七マスほど進み給料日のマスに止まる。


「えーと……プログラマーだから一万五千ドル貰える。あと生命保険五千ドル。入ったぁっ!」


 元気いっぱいに五千ドル札を叩き出し生命保険の紙を貰う。


「最初からテンションマックスだな」


「いやいやこれからだよー。次美玖ね」


 あまりにも楽しそうな香奈に春人はつい苦笑する。これでも本人はまだ全開ではないらしい。


「私の番、えい……七か。えーと……タレントになるか」


「なんからしいマスに止まったな」


「うん美玖さんにちょうどいいとこ」


「なんか照れるけどじゃあこれにしようかな。私もこのまま給料日か」


 タレントの給料はルーレットを回して×五千ドルだ。美玖は見事に十を出し五万ドルの給料と生命保険代を払う。


「次は私……十だ……政治家になれる……うん、政治家なる」


「一番似合わんな」


「兄さんどういう意味?」


 にこっと圧を向けてくる琉莉から視線を逸らす。

 琉莉もそのまま給料日まで行き三万ドルと生命保険代を払う。


「最後は俺だな。それっ……二。二ってまだ仕事にもつけねえじゃねえか。えーと、祖母からおこづかいを千ドル貰う。やった!」


「仕事できる年になっておこづかい貰うとか兄さん恥ずかしくないの?」


「そういうマスなんだから仕方ないだろ!」


 軽蔑するような視線を飛ばしてくる琉莉に春人も言い返す。そんな二人を見ながら美玖たちも笑っている。


(確かにこういったやり取りは昔はなかったな。成長してから感じることだな)


 実際にやってみて実感できる。働いてる人間がおこづかいをもらう。確かに言われてみればおかしいと感じる。まだ序盤も序盤だが春人たちは大いに楽しんでいた。


 また一周が周り春人の順番がやってくる。


「よーし次こそ就職するぞ……九だ!なになに……職業が決まってなければフリーターとして社会に出る。給料はルーレットを回した×千ドル……え?俺フリーター?」


 もう一度マスを数え直すが間違いない。春人の職業が決まった。


「ぷふっ、いつもふらふらしてる兄さんらしい職だね」


「おい何笑っとんじゃ。フリーターバカにすんな」


 さっきの仕返しかおかしそうに笑う琉莉。


「しかもこれ給料日マスまで行かんのか。ここでおわりだ」


「ふっふっふっ、それじゃああたしの番だね。春人が温めてくれた空気無駄にしないよ」


「別に好きで温めたんじゃねえよ」


「ほいほいそんじゃあっと!……一か。んと……懸賞応募にはまりハガキ代三千ドル払うって何枚買ってんのさ!」


 香奈は大げさに頭を押さえる。


「でも確かに買いすぎだよね。何枚買えるんだろ」


「まあ、ゲームの中だしその辺は気にしないと」


 気にしだしては多分ここからどんどん出てくるだろう。多少現実離れしているところはスルーしないといちいちつっこんでいてはきりがない。


「はい私ね。と……三っと……パーティーのビンゴゲームで五千ドル貰う。やった」


「またすごい金額だな……っと気にしちゃいかんな」


 値段を理解できる今ついつい気にしてしまう。


「次は私。ここでみんなと差をつける。……一……」


「ぷっ」


「あははっ!琉莉フラグ回収だね!」


 思わず吹き出してしまう春人。香奈の言う通り本当に見事なフラグの回収だ。


「兄さん」


「なんで俺だけ責められるんだよ」


 冷たい視線を向けられ春人は不満を口にする。全員笑ってたんだぞと。


「まあいいや。それで内容は……携帯電話を買う……九千ドル払う……どんな携帯?」


 琉莉が文章を読んで固まっている。だが気持ちもわかる。日本円で百万を超えるのだから。


「すげえ携帯だな。スマホでもそんなしねえぞ」


「実際昔はそんなにしたのかな?」


 流石にないだろうと皆口をそろえる。


「それはそうと俺の番だな。とりあえず給料がほしいぞっと……三。とりあえずこれで給料だな」


 ルーレットを回し貰える給料を期待する。


「……二って……ん?二千ドル?俺の給料二千ドル?」


 他の三人が一万ドルを優に超えてるのに比べあまりにも少ない金額だった。


「あはは、どんまい春人」


「うるせえよ。まあしゃあない。あと生命保険入るのに五千ドルかおばあちゃんの千ドルなかったら入れなかったぞ」


 これでいきなり春人のお金は無くなった。


「計画性のないところも兄さんそっくり」


「うっさいなさっきから。今に見とけよ。俺が億万長者になるからな」


「あと春人君止まったマスの内容が残ってるよ」


「おお、そうだった。ここに一発逆転のことが書いてたら俺にもまだチャンスあるからな。どれどれ……スピード違反。罰金五千ドル払う。自動車保険は没収…………え、俺いきなり借金背負ったんだが」


 開始三ターン目で借金生活となった春人。


 この年になると借金という言葉がとても重く感じる。先の不安を感じ始めた春人はまさに人生ゲームの奥深さを実感していた。

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