137話 一歩踏み出すべきだろう
春人はこっそり美玖を店の外に呼び出した。
先ほどのことについて少し二人で話したかった。皆の前では流石に話せるようなことではない。
もう大分日が落ちるのも早くなってきた。夕焼けに夜の帳が少し差し込んでいる。
店の駐車場の隅に二人で移動すると美玖の方から口を開き始めた。
「……ごめんね、はる君。私のせいで」
本当に申し訳なさそうに眉尻も下げ謝ってくる。そんな美玖があまりにも痛々しく春人は胸がずきりと痛むのを感じながらもできるだけ優しく声をかけた。
「俺の方こそごめんな」
春人の謝罪に美玖は俯き気味だった顔を上げる。きょとんと目を丸くして驚いたような反応を示す。
「どうしてはる君が謝るの?」
「ずっと美玖に我慢させてきてるのは知ってるから。たぶん美玖は皆とこういう話をしたいんだろうなって今日の美玖を見ててそう思った」
「それは……そうだけど」
ばつが悪そうな美玖の反応にやっぱりか、と春人は心の中で決意を固めた。
やはり美玖に我慢を強いるのは間違えだった。こんな美玖が不満を抱える関係は今までと何も変わっていない。
むしろ、春人がしっかり美玖のことを思い出した今では状況は悪化しているといってもいい。
春人は覚悟を宿した瞳で美玖の瞳を真っ直ぐ捉える。
「美玖、体育祭での約束覚えてるよな?」
「え……ご褒美のこと?」
「ああ、決めたよ」
春人の言葉に美玖は、はっと目を見開く。まさかこのタイミングで約束について言われるとは思わなかっただろう。どんな要求をされるのか自然と身構えてしまう美玖。
そんな美玖の反応に気づきながらも春人は言葉を続けた。
「今度の休日……デートしようか」




