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歴戦の騎士  作者: 若葉
一章 放浪
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冒険者

 そしてガルトはギルドを後にした。本当は依頼を受けたかったのだが、質問攻めにされても嫌なので、仕方なく依頼を諦めた。


 今は森に来ている。リナの母に山菜でも渡せれば…と思って森に来た。


「………ふむ、【マジック草】に【ヒールダケ】、おまけに【ドラゴン草】か。」


 マジック草とは薬草だ。煮るとポーションになる。ポーションとは薬のことで、飲めば魔力が回復する。この世界では誰もが使う薬だ。


 ヒールダケ。これはキノコで、普通のキノコが魔力を過剰に吸収し、が変異したものだ。食べれば魔力が回復し、身体の自然治癒力を高める。


(………まぁ、回復魔法の方が何十倍も良いのだが。)


 この国では回復魔法は教会が独占している。回復するのに一回金貨一枚もかかる。


 この世界の通貨は金貨、銀貨、銅貨がある。銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚となる。ちなみに銅貨五枚でリンゴ一つ、銀貨五枚で鉄の剣、金貨一枚で装備一式が買える程度だ。


 こうしてみると教会の回復魔法がいかに高いかがわかるだろう。


 因みに、基本とされる六属性以外の魔法は無属性魔法という。無属性魔法という枠の中に神聖魔法というものがあり、神聖魔法という枠の中に回復魔法がある。魔法系スキルはややこしいため、本当に才能のある者しか使いこなせない。


 そして、ドラゴン草。この国ではとても希少で、魔力の多いところにしか生えない。これを他の材料と混ぜ、薬にすれば魔力の限界をあげることができる。どんな生物にも体内にも保有できる魔力の量は限りがあるが、このドラゴン草を使えば魔力の限界を越えることができる。


(………修行していた頃に良く使ったな。)


 ガルトはドラゴン草を食べてはいたが、魔法系のスキルを覚えることが出来なかった。しかし、スキルは魔力を使うものが多いため、ガルトの魔力の限界値は最大に達してはいる。


 ドラゴン草は通常は金貨三枚、どんなに安くても金貨一枚だ。


(これを売ればリナ達の生活も少しは楽になるだろう。)


「ウワァァァ!!く、来るならこい!」

「キッド!!俺がやるから囮になってくれ!」


 ガルトの後ろの方から複数人の男の声が聞こえる。ガルトが駆け足で向かうと、森の中で三人の冒険者が戦っていた。


三人の冒険者は【フォレストボア】と戦っていた。フォレストボアは森の中で生息している、猪のような魔物だ。


畑を荒らすため農家からは忌み嫌われているが、その肉は美味である。個体数が多いため値段は安い。安くて美味しいため、駆け出しの冒険者にとっては嬉しい魔物だ。


(ふむ……フォレストボア、か。この森にも生息しているのだな。素人には手強い相手だが…)


「ドラン!今だ、やれ!!」

「ハアッ!」

「ブォォォォォ!!」

「ヒ、ヒィ………」


 フォレストボアの叫び声が聞こえる。それを聞いた一人の冒険者は腰を抜かしてしまった。


「ドラン!?速くこいつを………アァッ!!」


 もう一人の冒険者が転ぶ。転んだ冒険者目掛けてフォレストボアが突進してくる。


「だ、誰か助けてくれぇ!!」


(いかん、このままでは奴らがやられる。)


 ガルトはとっさに飛ぶ。そして盾で防いだ。フォレストボアの突進を片手で防いで見せたのだ。


「ボオッ……ブオォ………」


 ボアがよろめく。今がチャンスだ。


「お前達は離れていろ。俺が仕留める。」

「は、はい、ありがとうございます………」


 冒険者達はその場から離れた。


(こういう魔物は全体的に刃物のダメージが効きにくい。肉で防がれて、致命傷を与えられないのが厄介なところだな。)


「ブォォォォォ!!」


 ボアが突進してくる。冒険者達を逃がしていたら回復してしまったらしい。再度、ガルトは勢い良くボアの目に盾をぶつけた。


「ハァァァ!」


 ガン!という音を立てて、またしてもボアがよろめく。


「ブォォォォォ………」


(これで目を潰せた。次は足だ…!)


 ガルトは素早くボアの足に対して垂直に刃を入れる。4本足のボアはすぐに倒れた。これでボアが立つことはない。


「悪いな、お前の命は無駄にはしない。」


 グサッという音を立てて、首から刃を入れた。こうすれば即死する。苦しませることなく。


「あ、ありがとうございます」


 冒険者達が側へよってくる。


「……いつもこのような狩りをしているのか?」

「は、はい、そうですが…」

「なら、冒険者はやめた方がいい。ボアに苦戦するようでは、冒険者としてやってはいけんだろう。」


 フォレストボアは初心者にとっては手強いが、それは一人で狩る場合だ。彼らのように複数人で挑んで苦戦するようではお話にもならない。ガルトは忠告した。


「でも、俺らがやらないと………誰もやらないんです」


 黒髪の青年が下を向きながらそう言う。


「………?他にも冒険者は居るだろう?sランクパーティーの『猛牛の力』も居るではないか。」

「……Sランクパーティーは高ランクの依頼しか受けないんです。だから、俺たちがやらないと村のみんなが被害に会うんです………」


 茶髪の青年が言う。確かに、Sランクパーティーにもなるとフォレストボアなどという低ランク、低報酬な依頼を受けたがらない。それに、当のゲイルがあの性格ではやることはないだろう。


(まぁ、確かにゲイルがあの性格では低ランクの依頼は引き受けはしないだろう。)


「………そうか。俺にお前達を止める権利はない。だが、忠告はしておこう。」


 ガルトはその場を後にしようとした。


「ま、待ってください!!」


 金髪の青年が呼び止める。


「………なんだ。」

「あの、あなたのさっきの技は、なんというか、すごく経験して得た技のように感じました、お願いです、俺たちを、あなたの弟子にしてもらえませんか!!」

「弟子………?」


(………弟子だと?俺は人に教えられるほど大層な人間ではない。ましてや、俺が習得した技術も復讐のためだ。人に教えるつもりは端から無い。)


「いや、すまないが、俺は弟子をとれるほど大層な人間ではない。」

「そこをなんとか!!」

「お願いです!本当に基礎のことだけでもいいです、教えてください!!」


 三人揃って土下座をした。ガルトは三人が頭を勢いよく地面にぶつけたことに少し驚いた。


(ここまでされては断りにくいな………)


「………わかった。俺で良ければ基礎だけなら教えよう。」

「あ、ありがとうございます!!」


 ガルトが許可した途端に三人の顔が笑顔に変わる。


「お前達の名前は?」

「あ、俺はキッドっていいます。」

「俺はドランです。」

「俺はマサといいます。」


 茶髪がキッド、金髪がドラン、黒髪がマサである。


「わかった。俺はガルトだ。よろしく頼む。」

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