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歴戦の騎士  作者: 若葉
一章 放浪
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猛牛の力

「ふざけやがって!!いくぜ………【大地の剣(アース・ソード)】!!」

「………ほう……土属性のスキルか。」


 ゲイルがスキルを発動すると、闘技場の地面が集まり、やがて大きな剣となった。


(ふむ………大地の剣………このスキルは土を剣に纏わせるスキルだ………)


「ウオォ!!」


 叫び声と共にゲイルが踏み込む。その踏み込みはまるで象を連想させる。


(………………ふむ、『マウンテンマンモス』の幼体と差程変わらんな。)


 ガルトはゲイルの攻撃を簡単に交わした。確かに他の冒険者とは格が違う。


 だが、【大地の剣】を使ったため、ゲイルの剣はとても重くなっている。


(………バッガスよりも重く、速いか………)


「今だ!行け!!お前ら!!」

「おう!!」


 ゲイルの仲間達が俺を囲む。


(槍、弓、大盾と剣。ふむ………バランスの良いチームだ。よく考えられている。)


 流石はSランク冒険者パーティーである。


(槍使いを交わすのは簡単だ。だが避けたところで大盾が厄介になる………大盾使いを先に倒したとしても、後ろにいる弓使いに射たれるな………なるほど、ゲイルのチームは対人戦に長けている。)


「ハァッ!!」


 槍使いがガルトに向けて槍を突く。


「フッ………!!」


 ガルトはとっさに避ける。だが、すぐに槍使いの次の攻撃が来た。


「ハァッ!!」


 槍使いは槍を突き出した。その槍には回転が加えられている。当たれば肉を抉られてしまうだろう。


 ゲイルとは違い、この男の槍にはとてつもない工夫がされている。


(これは………槍に回転がかけられている……?当たれば肉が抉られ、場合によれば骨や臓器にもダメージが行く程の槍術………!!)


 一体、どれ程修行を積み重ねたのだろう。あの技術を修得するために、どれ程の時間を要したのだろうか。流石はSランクパーティーの槍使いである。


 ガルトは槍を交わすと同時に、槍使いの腹を中の威力で殴る。


「ぐううぅ………!」


 槍使いはうめき声を上げながらその場に倒れ、気絶した。ガルトの拳ならば人間を気絶させることは容易い。これで槍使いは無力化できた。


(後は弓と盾と大剣か………)


「よそ見するな!!」


 弓使いが弓を射つ。弓使いは矢を三本同時に発射した。熟練の戦士でなくては、この攻撃は対処できないだろう。


(………!矢を3本同時に射っている。そして射つまでの間隔が短い。この弓使いも至高の域まで達している………)


 俺は盾を思い切り弓使いに投げた。ガァン!!という、金属の鈍い音がする。弓使いの顔面に直撃していた。


「アガガガガ………」


 弓使いは白目をむいて倒れてしまった。


(………かなり鈍い音がした。少しやり過ぎてしまったかもしれない。だが、弓使いは気絶した。………まあ無力化できたからいいだろう。)


「ウオォ!もうやらせないぞ!!」


 ガルトが盾を拾うと同時に、大盾と剣を持った男が前に出る。


「うおぉぉぉ!!【大地の大盾(アース・シールド)】!!」


(大地の盾………これも土属性スキルか。大盾をさらに巨大化させ、広範囲かつ、最硬の盾としたか。)


「まだこれからだぜ………ウォォォォ!!」


 次の瞬間、男は勢い良く突進してきた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だ。


(ふむ………筋力が常人離れしているのか……?それとも何かのスキルか……?)


 ガルトは奴の盾の千分の一程の大きさの盾で受けた。


 ドォン!!という、とても鈍い音がした。なんとか受け止めることはできた。


「……ッ!?そんな!?大地の盾を受けとめるなど………!?」

「…【闘気解放・無】!」


(…盾に闘気を纏わせれば耐久性が大幅に上がる。闘気を纏わせた盾ならばこの程度の防御は容易い。)


 大盾使いが驚いている隙に、ガルトは土の盾の上を駆け上がる。


(この盾をもう一度使われたら面倒だな)


 ガルトは盾を破壊することにした。盾の破壊するために最適な部位を探していく。


(右、左、下、上、そして中央の順でいけるな)


 ガルトは盾の端から壊していく。右、左、下、上、そして中央。あっという間に盾にヒビが入り込み、バラバラと崩れた。


「そ、そんなばかな………」

「お前の負けだ。」

「うっ………」


 ガルトは大盾使いの首を叩いた。大盾使いは簡単に倒れた。


(さて、残るはゲイルひとりか………)


「………ハッ、やるじゃねえか。」


 ゲイルがガルトを見て言った。


(あの土属性スキルといい、腕は確かだ。油断はできん………)


「ウォォォォ!!」


 ゲイルが踏み込む。それと同時に上段から振る。

 それにしても速い。スキルで大剣も大きくなり、それなりの重さがあるはずなのに、だ。


「フッ」


 ガルトは横に避ける。この威力を受け止めることはできなくはないが、おそらく骨にダメージがいってしまうだろう。


「ドォォリャァ!」


 次は横から振る。またしても恐ろしい速さだ。ガルトはしゃがむような体制をとり、ゲイルの懐に潜り込み、顔面に拳を入れた。


「ハァ!」

「ガハァッ!」


 ゲイルは闘技場の端まで飛んでいき、壁に当たった。


「お、おい、あの新顔なにもんだ……?」

「猛牛の力がやられてるだと………?」


 観客席からザワザワと声が聞こえてくる。しかし、ゲイルもまだやられてはいなかった。


「ガハッ………ゲホッ…ゲホッ………」


(不味い………背中にダメージが………こいつ、何者だ………!?負けられるかよ……!)


ゲイルは勢いよく壁に当たったため、背中を痛めてしまった。骨は折れていないところが、流石Sランク冒険者であると言えるだろう。


「ウォォォォ!!俺様は、Sランクパーティーのゲイルだァ!!こんな奴に負けるかよォ!!」


 ゲイルは最後の力を振り絞り、ガルトに大剣を振る。渾身の一撃、と言ったところか。


 ……辺りに砂ぼこりが立ち、観客席からはなにも見えなくなった。


「ど、どうなったんだ?」

「ゲイルは勝ったんだよ……な?」


 砂ぼこりが晴れ、ガルトとゲイルが見えてきた。


「そ、そんな………!?」

「う、嘘だ、ゲイルが…………」



























「負けるなんて……!?」


「う………うぁ………テ、テメェ………」

「………俺の敵ではない。」


 ガルトの剣はゲイルの首にあった。切ってはいない。これでゲイルの負けは確定したようなものだ。そして、ガルトは他の者と同様に、ゲイルの腹を殴る。


「グボォ!!」


 ゲイルはその場に倒れた。ゲイルはもう、白目を向いている。気絶してしまった。


「………俺の勝ちだな。」

「嘘だろ………あいつ、化け物だ!!」

「俺、ゲイルに全額賭けてたのに……どうしてくれるんだよ!!」


 観客席からはガルトを非難する声が多くあるが、ガルトはそのまま闘技場を後にした。

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