魔族幹部会議
フレイアが敗北し、重傷を負ったことはすぐに魔王軍に広まった。急遽、幹部に召集がかけられた。
「一体何事だ。フレイアが敗れるなんて……」
ライデンは会議室に向かっている途中でシルフィーと合流した。フレイアが対人戦で負けたことが信じられなかった。
「フレイア……」
シルフィーは心配そうな顔をして、ライデンの後を追いかけるに歩く。
会議室前に到着し、二人は扉を開けた。
「っ!?」
会議室の扉を開けて、二人は部屋に入ることを躊躇った。そこにはもう既に到着していた、水、土、光、闇の魔将が席に座っていた。その中で、闇魔将であるシュラが震えながら邪気を放出していた。会議室内はシュラの邪気で溢れ、とてつもない圧迫感で充満していた。
「……シュラ様、恐れながら申し上げます。邪気の放出をお控えください。」
水魔将、アクアリスがそう言うと、シュラは邪気の放出を止めた。ライデンとシルフィーが席に着く。これで、魔将が炎を除いて集結した。全員が席に着いたことを確認したシュラが口を開いた。
「……フレイアがアストラルのアイシクル・ブリザードに敗れた。全身に傷を負い、重体だ。一時は命の危機もあった。」
その場にいる全員が沈黙した。なぜなら、シュラがここまで怒りを顕にするのは初めてだからだ。シュラはそのまま続ける。
「……我はこれからアストラルへと侵攻を始める。魔王様からも許可を頂いた。他の魔将は『欠片』と、残る『十二大魔剣』の在処を探せ。以上だ。なにか質問はあるか?」
シュラが話し終えたところで、ライデンが手を挙げた。
「すみません。俺は魔将になったばかりで……その……十二大魔剣とは一体……?」
ライデンは震えながら聞いた。全身が熱くなり、汗が止まらない。すると、シュラに代わって光魔将が答えた。
「……十二大魔剣とは、我ら魔族の先祖が作ったもの。種族の存亡に関わる事態を打破するために、特別に作られた魔剣のことだ。今代の魔王様が作りし武具よりも、遥かに上回る強大な力を秘めている。」
「な、なるほど……し、しかし、何故それを探すのですか?」
「それは……」
光魔将が返答に困ったところで、シュラが一言呟いた。
「人族を絶滅に追い込むためだ。」
その場にいた者が全員硬直した。人族を絶滅に追い込むほどの力を秘めているものが存在していることが信じられなかったのだ。
「し、しかし、それにどのような力が秘められているというのですか?」
シルフィーが修羅に尋ねた。
「……『十二の剣、全て集まりし時。 一つの剣と交わり、神代の力を甦らせる。』」
「「……は?」」
突然、シュラが意味不明なことを語り出したため、ライデンとシルフィーは困惑した。シュラは驚く二人に構うことなく続ける。
「……これが、魔王の一族に代々伝えられてきた伝承だ。現に、十二大魔剣のうち、9本は確認がされている。そして、もう一つの伝承にある『欠片』の存在も明らかになった。人族を滅ぼすには今が好機と言えるだろう。」
「あ、あの、すみません、いいですか?」
シルフィーがおどおどしながら手を小さくあげた。話を遮られたことに腹が立ったのか、シュラは鋭い眼差しで睨みながら尋ねる。
「……何だ。」
「いや、あの……さ、流石に人族を直ぐに滅ぼしてしまうのはどうかと……」
「……まさかとは思うが、人族に情が湧いたのではあるまいな。あの闇の勇者とやらか?」
シュラが厳しくそう言うと、シルフィーは目が大きくなり、慌てて否定した。
「そ、そんなわけないです。あ、で、では私はこれで……」
シルフィーはそう言って、そそくさとその場から逃げ去ってしまった。ライデンもシルフィーに続いて部屋を後にした。
「……新しく魔将となった奴らは怪しいな。」
シュラは深くため息をついた。しかし、その瞳には強い決意が秘められている。自身の左胸に手を当て、腰に携えている刀と交互に見比べた。