ミート村
「………朝か。」
夜が明け朝になった。ガルトは一晩中微量の闘気を出していたので、魔物は全く来なかった。
「あ………おはようございます。」
少女も起きたようだ。金髪の髪が寝癖でくしゃくしゃになっていた。
ガルトは少女の名前を聴いていなかったことを思いだし、少女に問いかけた。
「……名は何と言う?」
「あ、私はリナといいます。 」
「そうか。リナ、覚えておこう。」
「貴方のお名前は?」
「………ガルトだ。」
その後、二人はリナの村まで歩いていった。そして、リナの村、ミート村へと着いた。
リナが帰ってきて村人たちが集まってきた。
すると、奥から一人の女性が、ものすごい剣幕で近寄ってきた。
「リナァ!!」
「お、お母さん……」
母親はリナにげんこつをくれた。ゴン!という凄まじい音がする。
(………あれは俺でも食らったら二発程度は耐えられるかどうか………)
そして、ガルトはリナの家へと連れていかれた。リナの両親から礼を言われた。
「本当にあんたには迷惑をかけたねぇ………うちのバカ娘を守ってくれてありがとうよ。」
「いや、たまたま通りがかったところを助けただけだ……」
「俺達の娘を守ってくれてありがとう。」
父親は深く深く頭を下げた。
「あんた、これからどこかへ行くのかい?」
(………そうだった。これから俺は何をすればいいのだろうか。復讐をしてからは何もやることがない。)
「いや、特に無いな」
「だったらこの村に住まないかい?これからお礼もしたいし、部屋が一つ空いてるからさ。あんたみたいな冒険者がいてくれれば、この村は安心なんだけどねぇ………」
「私もガルトさんにお礼をしたいです……。」
ガルトはリナを送り届けたら自害するつもりだった。
しかし、この暖かい家庭を見て、父と母を思い出してしまった。
そして………決めた。
「………わかった。ここでしばらく厄介になろう。」
「あぁ!大歓迎さ!!」
その夜、村は宴をした。ガルトの歓迎会だそうだ。ガルトのジョッキに酒が注がれる。
(………酒なんて初めて飲むな……………)
「………兄ちゃん、酒飲む時も鎧を取らねえのか?」
村の老人が聞く。
(ん、鎧。着けたままだった。まあいい、口の部分だけ開ければ良い。)
ガルトは酒を飲んだ。幼い頃に父に飲まされたことはあった。あの頃は苦味しか感じなかったが、今は不思議と旨さを感じる。
「よし、もっと飲め飲め。」
老人たちは俺のジョッキに次々に注ぐ。楽しい宴を過ごし、ガルトは寝た。
「………朝か。」
いつもとは違う、ベッドの上だ。だが、鎧は付けられたままだ。脱がし方がわからなかったのだろう。
そうだ、昨日からこの村に住んだのだった。
一応この村にもギルドがある。
(なにか依頼を受けてこようか………)
そう考えながら、ガルトは一階へと降りた。
「あ、ガルトさん、おはようございます。」
「………おはよう」
「あ、朝ごはん食べます?作ったんですけど………」
(ふむ、食事か。そういえば、家庭での食事は実に五百年していない。……………母さんのシチューがとても美味しかったことが強く記憶に残っている………)
「今日は朝からシチューです!パンと一緒に食べてくださいね!」
(………シチューか。)
「……頂こう。」
ガルトは席に着いた。………いい香りがする。懐かしい。五百年ぶりに、誰かの作った食事をする。
ガルトはスプーンでシチューをすくい、口へ運んだ。
「ど、どうですか………」
「………とても旨い。暖まるな。」
季節は夏。といってもまだ少し肌寒いくらいなので、暖かい食事はとてもありがたかった。それに、どこか母のシチューの味がするような気がした。
俺はシチューとパンを一気に平らげた。
「旨かった。ありがとう。」
そういってガルトは扉の方へ歩く。
「あ、お出かけですか?」
「……あぁ。ギルドへ行ってくる。」
「気をつけてくださいね。」
ガルトは外へ出た。
そして、ガルトはミート村のギルドへと歩いていった。
ギィィィィ………
ガルトはギルドの扉を開けた。
「おい!どういうことだよこれ!!ちゃんと頼まれたものは持ってきただろうが!!なのになんで報酬が貰えねぇんだよ!!」
冒険者が数人、受付に怒鳴っている。
「で、ですから、依頼人が依頼を取り下げたので、こちらから報酬をお渡しすることはできません………申し訳ありません。」
「はぁ!?ふざけんなよテメェ!!」
受付に向かって拳が飛ぶ。
「………やめておけ。」
ガルトはそいつの拳を止めた。
「な、なんだテメェ!!」
(気配が一切しなかった!?………こいつ何者だ……!?)
「………依頼人が依頼を取り下げたのだろう?それならばこの冒険者に非は無いはず。非があるのは、こいつらが依頼品を取りに行った後に依頼を取り下げた、依頼人にあるのでは無いのか?」
俺は、受付に向かって言った。
「お、おっしゃる通りです………」
「ならば、ギルドはこいつらに報酬を支払う義務があるはずだ。払え。」
「で、ですが、報酬は依頼人が持っていってしまいまして………」
「………ならば一度ギルドから支払い、後々依頼人から回収すれば良いだろう。彼らは報酬を貰う権利がある。」
「わ、わかりました………」
受付は慌てて立ち上がり、袋に金貨をいれて冒険者たちに渡した。
「ケッ………最初からそうしろよな。気分が悪くなったから酒場にでも行ってくるわ。」
冒険者たちが立ち去ろうとしようとしたので、ガルトは彼らを呼び止めた。
「待て、お前たちにも話がある。」
「あぁ?なんだよ………」
「………確かに、お前たちには報酬を貰う権利があり、非もなかった。しかし、お前たちのような力のある奴らが、受付嬢を殴ろうとするのは違うのでは無いか?」
ガルトは彼らに問いかける。冒険者のような腕っぷしの強い奴らが一般の人を殴れば、下手をすれば死んでしまうかもしれない。
「はぁ………これだから嫌なんだよ……正義を貫こうとするやつ。本当に嫌だねぇ………」
「………受付嬢に謝罪をするべきだ。」
「はぁ?俺たちが謝る?笑わせるなよ。俺たちは被害者だぜ?」
「だからといって非力な者に暴力を振るうのは違う。お前の拳なら、下手をすれば受付嬢は死んでいた。」
「………はぁ………お前、本当に面倒だな………。だったら決闘で白黒着けようや。な?」
「おお、いいぞ!!やれ!やれ!」
周りの冒険者が囃し立てる。
(………決闘とはなんだ?どういう形式で行われるのか。)
「よーし!!おい!無能受付!闘技場借りるぜ!!」
「は、はい……!」
受付はまた奥に走っていき、今度はギルドマスターが出てきた。
「………こいつから話は聞いた。闘技場を使いたいのか。」
「おう!!この新顔に各ってのを見せてやるよ。」
「………わかった。殺しは無しだぞ。」
ギルドマスターが闘技場の扉を開ける。入ると、
周りから歓声があがった。
「うおおおぉ!ゲイル!やれ!やれ!」
「新顔なんかやっちまえ!!ゲイル!」
………一瞬で闘技場の席が満員となった。
血の気の多い輩が多そうだ………と思っていると、冒険者が大剣を抜く。
「申し遅れたな。俺の名はゲイル、チーム『猛牛の力』のリーダーだ!!俺たちはミート村唯一のSランク冒険者チームだ!!覚悟しろよ?」
「ふむ………ちょうどいい………」
「あぁ?」
「Sランク冒険者がどれ程か………試す機会にちょうどいいな………」