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歴戦の騎士  作者: 若葉
四章 ガルトの旅
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刺客

「...ハッ!!」


 そして、ガルトの意識は戻ってきた。


「...これが、かつての古代の戦争の末路です。」


 ガルトは少し息が荒くなりながら、世界樹に問いただした。


「俺に...何をしろと?」

「...彼の願いは、残念ながら達成されませんでした。そして、今の貴方たち人族と、魔族は戦争に発展しかけています。あなたたちが同じ悲劇を味わうのは、彼も、私も見たくはありません。この争いを、止めて欲しいのです。

「しかし…俺だけでは無理だ。」


 世界樹はそれを聞くと、声色が少し明るくなって言った。


「古代の戦争は、全員が敵であったわけではありません。彼と同じ志を持った者たちが立ち上がり、彼と共に戦ったのです。……魔術を極めし者、ウィルス。武術を極めた者、ローラン。クォールの科学技術を極めし者、サイエント。……この三名以外にも、多くの仲間達がいました。」


 世界樹は興奮しているのか、一拍置いて続ける。


「……龍人族の国へ行くのです。サイエントは未来に起こるであろう悲劇を止めるため、今も眠り続けています……とてつもなく長い時間です。そこにある遺跡の中で、彼は待っています。身勝手な願いだとは承知しています。それでも、貴方にしか頼むことができません。」


 ガルトは数秒硬直し、返事を返した。


「……わかった。龍人族のところへ行くことにしよう。」

「本当ですか……?ありがとうございます。……こんなものを渡すことしかできませんが、どうかお持ちください。」


 そういうと、世界樹からガルトは外へ出された。


「ガルトさん!!大丈夫ですか!?」


 アクエスがすぐさま駆け寄ってくる。ほかのエルフ族もだ。


 ガルトが呆然として世界樹を見ていると、世界樹に一つだけ果実が実り、ガルトの手へと落とされた。リンゴのような形をした、キラキラと美しく黄金に輝く果実だ。


「……これは……?」

「それは、世界樹の果実です。売れば三代まで続く富が手に入り、食べればどのような怪我でも、病でもたちまち治ることでしょう。……時間が経っていなければ、死んでしまった者を蘇生させることも可能です。旅先での幸運を祈ります。またいつか、お会いしましょう……」


 世界樹はそう言うと、何事も無かったかのように静かになった。どうやら眠りについてしまったらしい。


「…これが、世界樹の果実…か。」


 ガルトは果実を空へと掲げ、じっと見ている。


(…どんな味がするのだろうか。)


 この果実を見ると、無性に食欲が湧いてくる。たとえ、満腹になっていたとしても食べられそうな程だ。


「これは驚きました……まさか、ガルト殿が世界樹から果実を与えられるとは…」


 ヘルスはとても驚いている様子だ。周囲のエルフ達も果実をじっと見つめている。


「…そこまで凄いことなのですか?」


 アクエスが興味本位で聞くと、ヘルスは声を少し大きくして言った。


「えぇ、イグドラシルの歴史では、この果実を手にしたのは初代国王のみとされています。そして……」


 ヘルスはそこまでは言ったが、何故か言いにくそうにしている。


「な、なんですか?」

「…この果実を手にした者は、エルフ族の国王となることが出来ます。」


 ヘルスが言った途端に、周囲が一気に静まり返った。


「……俺は国王になるつもりは無い。」


 ガルトその一言で、その場にいた全員に少しの笑いが生まれた。ヘルスはほっとした様子だ。


 ほっとしたのもつかの間、ガルトは急に殺気を感じた。


「……!!伏せろ!!」


 ガルトの声とともに、アクエスとヘルスがしゃがみ、エルフ達はヘルスを囲い、戦闘態勢に入る。そして、ヘルスの元へと何かが飛んできた。


 兵士がそれを盾で防ぎ、ヘルスの命は守られた。ガルトは飛んできたものを見る。


「……クナイ?」

「…私の存在を見破るとは、見事。」


 澄んだ声と共に、一人の男が木の影から現れた。全身黒ずくめで、頭部も隠されている。目は銀色で、瞳孔は黒色であった。マスクをしているため、目元から下は分からない。異質な目のせいなのか、異様な圧迫感がある。


「…誰だ?」

「私は闇ギルドの者…コードネームは【刀魔】という。ある依頼によって…エルフ族のヘルス国王を抹殺させていただく……!!」


 刀魔と名乗った男は刀を背中から抜き、ガルとに向かって走り出した。


「先ずは…危険度の高い貴様から始末してくれよう……!!」


 ガルトは咄嗟に剣と盾を構え、叫んだ。


「アクエス!!ヘルス国王を避難させろ!!」

「は、はい!!」


 刀魔は刀を構える。


「【影切流 一閃】!!」


 刀魔が刀を横に降ると、斬撃が生まれた。


「ハッ!!」


 ガルトは盾で斬撃を弾いた。


「【影切流 轟天連斬剣(ごうてんれんざんけん)】」


  次の瞬間、刀魔の動きが速くなり、残像が見えるまでになった。剣術も同様だ。


(まるで複数人を相手にしているかのような…面白い技だ。初見では対応が難しい。)

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