古代の戦争の末路
「剣王...」
「えぇ、彼はとても強く、善き心を持った者でした。貴方は彼の作った祠で修行をしたのでしょう?」
剣王の修行場で修行をしたことを当てられ、ガルトは少し驚きながら頷く。世界樹はそのまま続ける。
「...貴方は、クォール人が引き起こした戦争をご存じですか?」
「...古代の戦争か。」
「...えぇ、その通りです。あれは、私達、世界を見守ってきた者達の唯一の汚点と言える出来事でした...止めることが出来なかったのです。」
世界樹の声色は、どこか悲しげなものであった。
「...彼は、その戦争をどうにか食い止めようと奮闘していました。しかし、クォール人が六種族を奴隷のように扱ったため、六種族の怒りは止められませんでした。...最終的に、彼は自身の【オーバースキル】を使い、クォールの兵器や都市を、大陸ごと破壊したのです。」
世界樹の話の中で、ガルトは聞きなれない言葉があった。【オーバースキル】だ。
「...その、【オーバースキル】とは?」
「オーバースキルは肉体の限界を超えるものです。とてつもない威力ですが、ほとんどは即死します。」
(都市ごと破壊するほどのスキル...剣王という人物は、今の俺の実力よりも遥かに上かもしれん。)
「...今から、貴方にはあの戦争の最後をお見せします。」
唐突に、世界樹は光出した...
◇◇◇
(...ここが、あの戦争...)
ガルトはその光景を見て驚いた。辺りにあるのは壊れた兵器の残骸、様々な種族の死体...そして、ある男と騎士。
(あの男は...剣王!?)
そこには、剣王と、一人の騎士がいた。騎士は全身に傷を負い、とても疲れている様子であった。
「はぁ...はぁ...剣王とまで呼ばれたお前が、なぜクォールの意思に従わぬのだ...地位も、名誉も、決して悪くはなかったはずだ...」
「...そうだな。私もそう思う。」
剣王は、どこか寂しそうな顔をしながら、一言呟いた。すると、騎士は大きな声で叫んだ。
「ならば、何が不満だと言うのだ!!」
剣王は騎士の一声に、一瞬、驚いたような顔をしたが、すぐに哀れんだような顔へと変わった。
「...貴様には聞こえぬのだな。彼らの怒りが、悲鳴が...」
「...何を言う...強者が弱者から搾取するのは当然のこと、それのどこが悪いというのだ!!」
騎士は剣王の言葉に対して、至極当然というように言い返した。騎士がそう言うと、剣王は剣を抜いた。
「もう...いい。このような悲劇は終わりにしよう。」
次の瞬間、剣王からとてつもない闘気が溢れ出す。
(あの眼...どこまでも広く、一切の濁りがない。まるで...星空。剣王の闘気もだ。あれは闘気という言葉で 表して良いものでは無い。もっと、別の何かのような...)
「...【聖気覚醒・穹】」
次の瞬間、剣王の闘気が紺色と、金銀に輝く闘気へと変化した。
(闘気までもが星空のように染まった...美しい。ただただ美しい。それだけしか...わからない。)
「【闘気解放・鋼】!!」
騎士は剣を抜き、闘気を解放した。騎士からは鼠色の闘気が溢れ出す。
次の瞬間、剣王と騎士の刃がぶつかり合う。
「【不死鳥ノ舞】」
剣王は容赦なく剣を振り続ける。その剣術は舞のようで、一切の隙がない。剣からは炎の闘気が溢れ、とても軽やかに剣を振っている。
(ん...あれは?剣王の眼の色が...)
ガルトは気付くのに遅れたが、剣王の眼はいつの間にか緋色へと変わっていた。
騎士は防戦一方といった様子で何も反撃ができない。
「グゥゥ...負けんぞ!!」
「【海龍ノ舞】」
そして次は、流れるような、優しい剣術へと変化した。しかし、動きの正確さは失われていない。剣は水属性の闘気が溢れ出した。剣王の眼の色はまたしても変わり、深い青色へと変わった。
(...ホムラやアクエスの眼とは違う。それに...眼の色が変わるなど聞いたことがない。)
「ウォォォォ!!【十字斬】」
「【風狐の舞】」
剣王は十字斬を華麗に交わした。いつの間にか剣がひとつ増えている。闘気を使って即席で作ったものだろう。
剣からは風属性の闘気が溢れ出し、2本の剣に騎士が圧倒されている。
そして、とうとう騎士の剣が折れ、騎士はその場に倒れ込んだ。
「ばか...な...私の闘気を纏わせた剣が折れるだと...!?」
「...1度言ったはずだ。闘気は纏わせただけでは駄目だ。流し込むことでより強い力を発揮する。」
剣王の闘気が最初のものへと戻り、闘気の剣は消えた。そして剣王は空高く飛び上がり、剣に闘気を流し込む。地響きが起こり、地面が割れ始める。
「な、なにを...まさか、お前...!?」
「...今のままではダメだ。ここまで来たら、壊して作り直すしかない。非人道的なクォールそのものを壊さない限り、この悲しみの連鎖は消えない...」
剣王はまたしても寂しそうな顔をしながら、闘気を最大限に溜め込んだ剣を振り下ろす...
「させぬ!」
咄嗟に騎士が剣王に飛びかかろうとするが、数秒遅かった。
「【流星】」
次の瞬間、剣王の剣から、光り輝く刃が、一つ放たれた。放たれた刃は空から地上へと向かう。その様は、まさに流星のようであった。
「行かん!!間に合わぬ!!!ウワァァァァァ!!」
そして、その流星は都市に直撃した。都市は一瞬で全てが崩壊し、大地は大きく揺れ、大陸には大きな亀裂が入った。その亀裂へとクォールの兵器や建物の残骸が落ちていき、何もかもが崩壊していった...
重大な変換ミスしてました。すみません。