襲撃後
「いやいや、そんな...嘘、ですよね。」
アクエスは苦笑しながら言った。しかし、ガルトは首を横に振った。
「...本当だ。お互いに、力の六割も出してはいないだろう。」
「...ガルトさんの全力とは、どの程度なのですか?」
興味本位で聞いてみたアクエスだったが、次のガルトの答えに絶句した。
「...少なくとも、エルフの国は半壊するだろうな。奴も本気を出したのならば、想像もできない程の更なる被害が出るだろう。」
◇◇◇
それから、ガルト達はフラワ城へと戻ってきた。フィルティアは、「気が済んだから帰る」と言って帰ってしまった。
城へ入るなり、ヘルス国王が駆け足でガルト達の所へ来た。
「ガルトさん、我が同胞を助けていただきありがとうございます...」
息を切らしながらやってきたヘルス国王をみて、アクエスが言った。
「ヘルス国王、どうなさったのですか」
「えぇ...実は、我らの世界樹が、ガルトさんとの対話を求めているのです。世界樹直々に、私の方へ伝達が来ました。」
ヘルス国王の言葉に、城中の兵士が驚き、お互いの顔を見合せた。アクエスも目を見開いている。
「...なぜ、世界樹が俺に?」
「世界樹からは、「ガルトという男に伝えなくてはならないことがある」としか...」
「...わかった。行こう。」
ガルトはその場で決め、世界樹の元へ向かうことにした。ヘルス国王、アクエス、城の兵士たちが同行した。
◇◇◇
城から歩くと、世界樹の前に来た。城よりも大きいため、とても荘厳な雰囲気が漂っている。
ガルトが世界樹の前に立つと、世界樹に穴が空いた。穴の先には、光り輝く空間があるようだ。
「ここから先は、私たちは同行できません。」
「...わかった。行ってくる。」
ガルトはその光の空間へと足を踏み入れた...
その空間には何も無かった。突如、ガルトの目の前に緑色に光る球体のようなものが現れた。
「...貴方が、世界樹。」
「...ええ、その通りです。私は世界樹です。名前はありません。遥か昔からこの星を見守ってきた者の一人です。...それにしても、本当によく似ていますね。懐かしい...」
(...?何を言っている?)
「失礼、こちらの話です。私は貴方に伝えねばならないことがあり、呼び出したのです。」
「...その、伝えたいこととは?」
ガルトの問いに、世界樹は一拍置いてから話し始めた。
「...この世界の歴史と、剣王についてのことです。」