遺物
ガルトは考えた末、ギルドへ報告することにした。後々この事実が発覚したところで不利益にしかならないと考えたからだ。
「ひとまず、俺はギルドへ帰る。人を呼んでくるからそれまで待っていてくれ。」
「了解しました。」
ガルトはガーディアンにそう言って遺跡を後にした。外へと出ると、雪が降っていた。
「…もう、そんな季節か。早いものだな。」
ガルトがミート村に来たのは夏の終わりであった。秋にヒフキヤマ王国へと行っていたため、秋を感じる時間は少なかった。
ガルトは雪が降る中、ギルドへと歩きだした。
しばらく歩き、ギルドへと到着すると受付がギルドの玄関先を掃除していた。
「おや、ガルトさん。依頼は終わったんですか?今日は随分と速いんですねぇ。あー、寒い。」
寒さのせいで受付は顔を赤くしている。
「いや、少し問題がある。遺跡の中の遺物が動いている。ギルドの幹部を呼んでもらえないだろうか。」
「え?遺物が動いてる?本当ですか?」
受付の問いにガルトは頷く。受付は駆け足でギルドの中へと入っていった。少し待つと、眼鏡を掛けたギルドマスターがやってきた。
「ポールから話は聞きました。遺物が動いているとは本当ですか?」
「ポールとは誰だ?」
ガルトがそう言うと、受付がギルドマスターの後ろで「えっ?」という顔をしている。
「ガルトさん、ひどい…僕はガルトさんと毎回話をしてるのに…だいぶ前に自己紹介もしたのに…」
(こいつの名前だったのか。)
「…オホン、それで、遺物はどんな状態ですか?危険性などはありますか?」
「俺が見た限り、危険性は見られない。遺物自体に武装なども見られなかった。」
「了解です。後は我々に任せてください。」
「俺は行かなくていいのか?」
ガルトが聞くと、ギルドマスターは残念そうな顔をした。
「申し訳ないのですが、ガルトさんの信頼はあります。この依頼はガルトさんのランクでは受けることができません。フォレストドラゴンの件で高ランクの依頼を受けることは私の権限で許可していました。ですが、このレベルだと難しいのです。」
ガルトのランクは今最低ランクのFランクだ。フォレストドラゴンを討伐した件で、特別に高ランクの依頼を受けることがギルドマスターの権限で許可されていたのだ。しかし、この依頼はギルドマスターの権限でも難しい。
「…わかった。俺は帰るとしよう。」
「報酬はまた後程支払います。さぁ、ポール。行きましょう。」
そう言うと、ギルドマスターとポールは足早にその場を後にした。ガルトはギルドからリナの家に帰ることにした。