学校
ガルトが帰還してからさらに一週間が経過した。ガルトは村の畑仕事を手伝いながら、四人に剣術を教えた。
「いつもありがとうねぇ、ガルトさん。」
「どうということはない。」
ガルトは今日、隣の家のカボチャの収穫を手伝った。お礼にカボチャを三つ貰ってきた。ガルトは終始断っていたが、最後は押しに負けた。
(リナの母親に渡すか。)
ガルトはカボチャを抱えたまま扉を開け、家に入った。
「あぁ、ガルト、おかえり。おや、見事なカボチャを貰ってきたね。」
「…俺は使う予定がないから、どうぞ。」
リナの母にカボチャを渡し、ガルトは自室へと行った。いつもはギルドへと依頼を受けに行くのだが、今日は別の用事があったのだ。
部屋に入り、机に腰を掛ける。そして、机の上の紙を手に取った。先日、ギルドから持ってきたものだ。
「【王立ドラゴーネ学園】…か。」
季節は冬の始まり。まだ雪は降っていないが、あと少しで春になる。春からの新入生を募集しているという紙を持ってきたのだ。
(リナ達が望むのなら、俺ではなくちゃんとした先生に教わったほうが良いのだろうか。幸い、使い道のない金貨なら山ほどある。学費は足りる筈だ。)
ガルトは金貨の袋の中を見る。この前王都で買い物をしたとはいえ、金貨はまだ400枚以上ある。四人を学園に入学するには十分すぎる金額だ。
「…どうせ、俺が金貨を持っていても使うことはない。奴らに聞いてみるとするか。」
ちなみに、リナの両親はリナが冒険者を夢見ていることに反対していたが、必死に修練に励む姿を見て、現在は応援する形になった。そのため、学園に入学することには問題はないのだ。
その日も修行の時間がやってきた。森からは威勢の言い声が聞こえてくる。今日はスキルの練習をした。前回ガルトが見せた【十字斬】を修得するためだ。
「クロス・スラッシュ!」
四人は叫び声と共に剣を十字に切るが、斬撃はでない。
「剣に魔力を流し込め。そして魔力を投げ飛ばすイメージで斬撃を放つ。」
「はい!」
それから数時間何度も「クロス・スラッシュ!」と叫ぶが、斬撃は少しもでなかった。
「今日はここまでにしよう。」
「ありがとうございました!」
ガルトに一礼をして帰ろうとする四人を、ガルトが呼び止めた。
「待て、お前達に話がある。」
そして、ガルトは学園の話題を出した。
「お前達は王立ドラゴーネ学園というものを知っているか?」
「はい。この国で最高の学校ですよね。」
マサの返答にガルトが頷き、続ける。
「お前達は学園に行きたいか?」
「そりゃあ、行けるものなら行ってみたいですけど…」
「そうか。」
四人ともが行きたいと言ったため、ガルトは本題にはいることにした。
「…俺はかなりの量の金貨を持っている。俺はこれの使い道がない。そこで、お前達を学園に入学させることを考えている。学園ではより専門的なことを学べると思う。どうだろうか。」
ガルトがそういうと、リナが口を開いた。
「…それって、もう私達には剣術を教えてくれないということですか?」
四人からは悲しそうな、怒っているような表情が読み取れた。
「そうではない。俺が教えられるのは基礎的なことだけだ。俺よりも強い剣士はこの世に山程いる。学園の方が更に高みを目指せるだろう。」
「でも…」
四人は悩んだような表情を浮かべ、暫く黙った後、「少し考えさせて欲しい」と返事を返した。
それから、マサ、キッド、ドランは家へと帰り、リナとガルトも家へと帰ることにした。帰り際は、特になにかを話すということはなかった。