スミス
ダイモンは奥から出てきたドワーフを見ながらガルトとジュラドに言った。
「紹介するぜ。こいつはスミス。この国一番の鍛冶師だ。俺のハンマーもこいつに作って貰ったんだ。」
「こんにちは。私はスミス。どうぞよろしく。」
スミスはドワーフの中でもかなりの長寿である。ドワーフは普通、五百歳前後まで生きるが、スミスは六百歳を越えているのだ。
「こいつはドワーフの中でも長生きでな。その分技術や知識を多く持ってるんだ。」
「ホホホ、ただ長く生きているだけさ。私はドワーフの中でも鍛冶がとても好きでね、鍛冶を極めることを目標に五百年以上ここで働いていたよ。今はもう昔みたいに鍛冶ができなくてね。たまに顔を出しているのさ。」
「俺はガルトだ。よろしく頼む。」
「俺はジュラドです。」
スミスは二人と握手を交わした。スミスはガルトの剣をちらりと見た。
「…すまないが、腰に掛けている剣と、背中の盾を見せてくれないか?」
「あぁ、構わない。」
ガルトは剣を抜き、スミスに渡した。
「エンシェントドラゴンの骨…これは…ミスリルとオリハルコンの合金か。そして、地獄の石…」
い
スミスは剣を返すと、今度は盾を受けとった。
「素材は先程のものと同じ合金か…これは、地獄の石か。そうか、そういうことか…」
スミスは盾を返し、こう告げた。
「…お前さんは選んだのだな。この武具も喜んでいるだろう。幸せな武具だ。」
「…?どういうことだ?」
疑問を持つガルトを他所に、スミスは奥へと歩いていく。
「いやぁ、いいものを見せて貰ったよ。久しぶりに業物を見た。昔の好奇心が甦ってきたようだよ。これはそのお礼だ。」
スミスは壁に掛けてあるナイフを取り、ガルトへと渡した。
「これは…?」
「…これは、ミスリルとオリハルコンの合金、そしてエンシェントドラゴンの骨と地獄の石を取り付けたナイフだ。かつて、お前さんの鎧を使っていた騎士が所持していたナイフだ。」
「…前の持ち主か。」
「…歴戦の騎士、か。まさかこのナイフと同じ剣と盾を持つものが来るとはなぁ。これも運命だな。持っていけ。そのナイフも、その方がいいだろう。」
ガルトはよくわからないといった様子であったが、気にしないことにした。
「そうだ…水袋はあるか?革製の物が欲しい。できれば耐久性の良いものを。どの魔物の革でも構わない。」
「なら、ブルードラゴンの革がいいだろう。水属性で、水を清潔に保ってくれる。ちょうど在庫があったはずだ。」
スミスは店の棚からブルードラゴンの水袋を取りガルトに渡した。
「金貨3枚だ。高いと思うだろうが、品質は保証する。」
「今回はアカツチ国王陛下が支払っていただけるそうだ。請求は国王陛下に頼む。」
「あいよ。」
それから、ジュラドは何か気に入った物があったようで、会計を済ませて、三人は店を後にした。
「また来てくれよ。ナイフや剣に異常があったら持ってこい。久しぶりに鍛冶をしたくなった。」
「あぁ。その時は頼む。」
上機嫌で店から出てきたジュラドに、ガルトは歩きながら尋ねた。
「…何を買ったんだ?」
「あ、ペンダントですよ。地獄の石を使ったペンダント。」
「…地獄の石は高いだろう。」
「金貨十枚でした。小さめの物ですからね。でも、今回はアカツチ国王が支払ってくださるので大丈夫でした。」
ガルトは何故ジュラドがわざわざ地獄の石を使ったペンダントを選んだのか気になり、再び尋ねることにした。
「何故、地獄の石にしたんだ?」
「ガルトさんの剣やナイフに着いていたからです。ガルトさんの様に、俺は強くなりたいんです。」
「…そうか。」
(俺の様に……か。)
「ガルト、お前はこいつの師匠か何かなのか?」
「…予定では、な。」
ガルトはどこかそわそわしたような気持ちになったが、あまり気にしないことにした。
それから歩くと、【王立ドワーフ歴史博物館】が見えてきた…