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歴戦の騎士  作者: 若葉
四章 ガルトの旅
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ヒフキヤマ王国 観光 part2

食事を終えたガルト達。時刻はもう夜だ。


「もう夜だな。この先を真っ直ぐ行くと宿屋がある。そこに泊まると良い。じゃ、俺は帰るぜ。明日また観光をサポートしてやるからな。じゃあな。」


そう言ってダイモンはハンマーを担いでいった。


「行きましょうか、ガルトさん。」

「…あ、あぁ。」


酒のせいなのだろうか。ガルトは少しぎこちなく歩いている。実は、あの後ビールやワインをジョッキに五杯程飲まされたのだ。酔わないはずがない。もはや、まともに動けるのは酒を飲んでいないジュラドだけだ。


やっとの思いで宿屋についた。ジュラドは店主に宿代を支払い、ガルトに手を貸して二階へと上がっていった。


「ガルトさん、お風呂はどうしますか?」

「…問題ない。俺一人で入れる。」

「いいですけど…もし、お風呂の戸を叩いて返事がなかったら、俺が戸を開けますからね!」

「…あぁ。」


そして、ガルトは脱衣所の戸を閉めた。



























…10分、20分が経過した。ガルトはまだ出てこない。


「まさか、溺れたんじゃ…」


ジュラドが風呂場へ走る。脱衣所の戸を勢い良く開け、風呂場の戸を叩く。


「ガルトさん?起きてますか?」

「…あぁ。問題ない。もうすぐ上がるから待っていてくれ。」


ガルトの安全を確認し、ジュラドはほっとした様子で部屋に戻った。


それから5分すると、ガルトが現れた。風呂から出たばかりだと言うのに、また鎧を着ている。


「…また鎧を着るんですね。」

「あぁ。これが俺の私服のようなものだからな。」

「えっ?いつも着てるんですか…?」

「そうだが。」


ジュラドは自分で納得し、風呂場へと歩いた。そして、ガルトは鎧を着たまま、壁にもたれ掛かって寝た。
















































「…さん、ガルトさん、朝ですよ。」

「…朝か。」


ガルトは久しぶりに良く眠れた。こんなに気持ち良く眠ることが出来たのは幼少期以来かもしれない。本当に良く眠れた。


(ふむ、酒を飲んで寝ることも悪くはないな。)


「この宿屋さんはどうやら朝食がないそうです。ダイモンさんが外で待っています。どこかで食べるそうですよ。」


そして、ガルトは寝起きのまま宿屋を後にした。


「おはようございます。」


部屋の扉を開けると、王都からの使者が居た。


「…いつからここに?」

「昨日からです。いやぁ、偶然同じ宿に泊まりましたね。私はこれから一人で旅k…オホン、町を見回ってきますのであなた方はごゆっくりなさってください。」

「…今本音でませんでした?」

「ジュラド様、気のせいですよ。お気になさらず。そうそう、今日の夕方には王都ボルケーノを出発する予定です。集合場所は関門でお願いします。では。」


そう言って使者は気分良く宿屋を後にした。


「あの人、絶対旅行気分でいますよね…」


ガルト達も宿やから出ると、ダイモンが居た。今日はハンマーを持っていない。


「お、きたきた。おはようさん。今日も観光に連れていってやるよ。王都には観光地がたくさんあるからなぁ。まずは腹ごしらえだ。」


そういってしばらく歩いた。そして、昨日と同じ酒場へとたどり着いた。


「…また飲むんですか?」


ジュラドが目を細くして言う。ダイモンは笑いながら答えた。


「まさか。いくら酒好きのドワーフでも、朝からは飲まんな。」


そして、ガルト達は中へと入っていった。席に着いてダイモンはメニュー表を見ながら言った。


店内は朝だというのに、冒険者とドワーフで溢れかえっている。流石に朝から酒を飲むドワーフは居なかった。


「朝から肉は重いよな。よし、パンにでもするか。兄ちゃん、お前さんは昨日と同じブドウジュースでいいな。ガルト、お前は何にする?」

「俺もブドウジュースでいい。」

「よし、おーい、ブドウジュース三つと、パンを三つくれ。」


ダイモンがカウンターに叫んでから数分後、テーブルにパンが三切れと、ブドウジュースが並んだ。ダイモンはすぐにパンを口に入れ、ブドウジュースを一気に飲んだ。


「うん、うまい。肉もいいが、朝はやっぱり重くないものがいいな。」


ガルトとジュラドもパンを口に入れる。そして、ガルトが口を開いた。


「今日はどこに行くんだ?」

「ん?あぁ、今日は鍛冶屋と【王立ドワーフ歴史博物館】へと行くぞ。この世界で六つしかない大規模な博物館だ。楽しみにしてろよ?ドワーフの博物館にはな、凄い技術で作られた剣や…まぁ、兵器が飾られているんだ。」

「兵器ですか?」


ジュラドが聞き返すと、ダイモンは少し苦い顔をした。


「…あぁ、昔使われたであろう、兵器がな。この辺りの地下深くから出土したんだ。歴史書にも乗っていない、【古の大戦争】の遺産だといわれてる。」

「古の大戦争?」


またもジュラドが聞き返すと、ダイモンは驚いた顔をして返答を返した。


「兄ちゃん、古の大戦争を知らないのか?」

「はい…ガルトさんは知っているんですか?」

「あぁ。」

「ガルト、こいつに古の大戦争について教えてやってやれよ。」

「ふむ…」


そして、ガルトは語り始めた…


…【古の大戦争】、それは、現存する最古の歴史書よりも遥か昔の出来事であり、現在からおよそ三千年前に起きた戦争である。


その当時、高度な技術を持った文明があった。その文明は動く砲台や、空を飛ぶ巨大な金属の鳥を用いていた。当時から六種族の国は存在していて、その文明が六種族を支配していたのだという。


しかし、強大な力で支配されることに抵抗する者達が六種族のなかで現れ、次第に六種族全体がその文明と戦争をすることとなった。それこそが、【古の大戦争】である。


「…と、これが現状明かされている記録だ。何しろその当時の歴史が記録されたものがひとつも見つかっていない。見つかっているのは当時使われたであろう兵器だけだ。その兵器から年代を推定したところ、三千年前であると言われている。」


ガルトが語り終えると、ダイモンが補足をした。


「その通りだ。俺たちドワーフの先祖、古代ドワーフ族はその文明の支配を受けていたからな。当然兵器を作ることも出来た。だが、あまりにも危険な代物だったらしいから、古代ドワーフ族は兵器の設計図を燃やし、完成していたものまでも壊して地中に埋めちまったらしい。」

「そんな歴史があったんですね…」


ふとダイモンがカウンターの前の時計を見た。


「いけねぇ、話をしてたらこんな時間になっちまったな。そろそろ行くとするか。」


ダイモンはカウンターに金貨をおいて酒場から出ていった。ガルトとジュラドも後に続いた。


それからしばらく歩き、鍛冶屋に到着した。


「ここが、ドワーフ族一番の鍛冶屋だ。」


そう言ってダイモンは鍛冶屋へと入る。


鍛冶屋の中は六人ほどのドワーフが忙しそうに働いている。店の奥には鉄、ミスリル、オリハルコン等の希少金属が大きな箱に詰め込まれていた。


「す、すごい…ミスリルにオリハルコン…!?それに、こんなに沢山!!」


目を丸くして驚くジュラドに、ダイモンは笑って言った。


「そりゃあな、ドワーフ一番の鍛冶屋に金属が置いてなけりゃ話にならねぇ。ここは世界中の希少金属が集まるところだ。…まぁ、エルフの国のものは別だけどな。」


ダイモンとジュラドが話をしていると、店の奥から一人のドワーフがやってきた。ダイモンはそのドワーフに挨拶をした。


「よぉ、スミス。お前さん、まだ現役で仕事してるんだな。とっくに引退したと思ってたよ。」

「やぁ、ダイモン。俺はもう現役ではない。たまに作業場に顔を出してるだけだ。今日はたまたま、だよ。」

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