炎魔将 フレイア
ジュラドが一人で戦っている頃、同時にガルトも赤髪の魔族と戦っていた。
「へぇ。お前が私の相手をするんだ。言っとくけど私は強いよ?なんたって私は、炎魔将 フレイアだから。お前に私が倒せるかな?」
そう言ってフレイアは背中から大剣を取り出した。
「【魔剣 イフリート】…魔王様自らがお作りになった【魔王の武器】の一つさ。あっちで戦ってる緑髪が持ってる杖も【魔王の武器】だよ。」
「…それが、神器と同等の武器か…」
ガルトは魔剣を見る。とてつもない業物だ。
(ほう…確かに勇者と同等のレベルかもしれん。ここまで来るこの圧迫感…【ボルケーノドラゴン】…?)
「…その魔剣の素材はボルケーノドラゴンか?」
ガルトがそう尋ねると、フレイアは驚いた表情を見せた。
「…凄いね、お前。私は魔王様に素材を聞くまではわからなかったのに。」
「…そうか。」
ガルトは鞘から剣を抜き、盾を構える。
「以外と無口な騎士なんだねぇ…私の性格と合わないや。もっと熱くなれないの?」
「…何を言っている?」
「いやさ、普通戦闘ってテンションが上がるでしょ?戦う前からそんなじゃあ、張り合いがないんだけど。」
(こいつは何を言っているのだろうか。俺は戦闘で気分が良くなったことはない。それ以上に集中の妨げになる。)
ガルトはフレイアを無視して斬りかかる。
「【闘気解放・無】…【闘気剣術・一撃必殺の型】!!」
ガルトは闘気を解放し、剣に流し込む。十分に闘気が溜まったところで剣を横に振り、斬撃をひとつ出した。
その瞬間、フレイアは広角を上げ、魔剣を構える。
「【獄炎斬】!!」
フレイアもスキルを使い、赤黒い炎が剣に纏った。そのまま縦に大きく振る。
互いの斬撃が激しくぶつかり、打ち消された。
「…私の一撃と互角ね…相当な猛者、か。もしかして、シュラ様が言ってたガルトって奴?」
「…そうだが。」
ガルトは軽く返事を返し、次の攻撃の準備をする。
「【闘気剣術・斬撃無双の型】!!」
ガルトは八の字に剣を振り、斬撃を何度も繰り出す。フレイアも対抗してスキルを使う。
「【炎障壁】!!」
フレイアが魔剣を地面に突き刺すと炎の壁が現れ、ガルトの斬撃は遮られてしまう。だが、ガルトはそれでも斬撃を繰り出し続ける。
「な、何この圧…【炎障壁】が破られる…!?」
とっさに後ろへと走るフレイア。フレイアが十分離れたところで、【炎障壁】が破られた。
「私の防御魔法を破るなんて…面白い、面白すぎる!!」
フレイアは再びガルトへ斬りかかる。ガルトもフレイアに向かって走り、盾を構える。
「姉ちゃんら…俺の故郷に手を出した代償は高いぜ………俺が叩き潰してやらぁ!!」
突如、怒声が響く。ダイモンだ。
「あぁ?あっちも結構苦戦してそうだなぁ。こいつを倒したら助けに行ってやるかぁ。」
一瞬戦いが中断されたが、ガルトとフレイアは再び動き出した。
フレイアが振り下ろした魔剣をガルトが盾で受け流す。受け流すと同時にガルトは剣の先端でフレイアを突こうとした。
しかし、フレイアは寸前のところで交わし、再び魔剣を振るう。今度は横だ。
同時にガルトがしゃがむ。ガルトは足を狙い剣を振るが、フレイアは飛んで交わしてしまった。
ガルトの上を一回転し、ガルトは背後を取られた。ガルトは素早く後ろを向き、フレイアの一撃を受け止めた。
「…凄まじい剣圧。見事なものだ…」
(パール村で戦ったバッカスよりも上。Sランクパーティーのゲイルよりもさらに格上だ。魔剣の能力かどうかはわからないが、少なくとも今の勇者たちでは太刀打ちできないレベルだ。)
ガルトはフレイアが一瞬油断した隙を突いて、フレイアの腹を斬った。
「グゥゥ!」
(…浅い。)
ガルトは続けて二回攻撃をするが、魔剣を盾代わりに使われ、防がれてしまった。
「やってくれたね…結構出血してるじゃん…」
「フレイア様!?大丈夫ですか!?」
ダイモンの攻撃から逃げてきたシルフィーが駆け寄る。
「あぁ、シルフィー。私は平気さ。そろそろ引き上げよう。目的の欠片は手に入ったからね。」
そう言ってフレイアは腰にかけてある布袋から、禍々しい紫色の欠片を取り出した。
「あ、あれは!!おい姉ちゃんら、そいつをどうするつもりだ!!」
「魔王様の求めているものを手に入れるために、これは必要なものなんだ。これは私たちがいただいていくよ!」
フレイアがそう言うと、シルフィーが魔法を使う。
「【飛行】」
【飛行】を使い、逃げていくシルフィー達を、ガルト達はどうすることも出来なかった。