ドワーフの英雄
「ほぉ。兄ちゃん、結構鍛えてんだな。見るだけでわかる。猛者って奴だな。で、今日はなんの話をしに来たんだ?」
ダイモンの問いに対して使者が答える。
「魔族による人族への攻撃についての話です。ヒフキヤマ王国を含めた他種族に協力を要請しに参りました。ダイモン殿にも協力していただきたいのですが…」
すると、ダイモンは急に真剣な顔つきへと変わった。
「あぁ、アイツらのことか。『失われた魔剣』とかいうヤベェ武器を復活させようとしてるってことも聞いたぜ。そいつが復活しちまったら世界はとんでもねぇことになっちまうんだろ?だったらこの俺が力になるぜ。俺の相棒、『グラビティハンマー』でぺしゃんこにしてやる。」
ダイモンは置いてあるハンマーを指差して言った。
「こいつはよぉ、このヒフキヤマ王国内でしか取れない希少金属、「グラビティ鉱石を精錬した金属でできていてな、鉄の数十倍の重さはあるぜ。まぁ、ドワーフ族以外で扱うことはむずかしいな。ドワーフの怪力がなけりゃあ、こいつを持ち上げることすらできねぇな。」
そして、ダイモンは「よっ」と言ってハンマーを持ち上げると、扉の方へと向かっていった。
「助けが必要なときはいつでも俺を呼んでくれ。このハンマーで敵をぺしゃんこにしてやるからよ。礼は酒でいいぞ?酒さえくれりゃ、力が沸いて、今度はアースドラゴンだって倒せちまうかもな。ガハハハハ!!!」
ダイモンは笑って部屋から出ていった。
「す、すまない、あいつの無礼は本当に申し訳ない…」
アカツチはガルト達に頭を下げた。
「陛下が謝罪なさらないでください。私たちは大丈夫ですから。」
使者が慌てた様子で言うと、アカツチは頭を上げた。
「こ、国王陛下!!緊急事態です!!み、南の採掘場に二人の魔族が現れ、作業をしていたドワーフが襲われています!!」
「…なんだと!?すぐに兵を送るのだ!」
突然慌ただしくなると、ジュラドが叫んだ。
「国王陛下、ここは俺たちも行きます!魔族は俺たちに任せて、皆さんは負傷したドワーフの方々の救助に当たってください!!」
「…人族の英雄殿よ、感謝する。では、そちらは任せるとしよう。兵達は負傷者の救助に当たるのだ!」
国王が叫ぶと、城中の兵士が南の採掘場へと向かう。ガルト達もその後を追いかけた。
~南の採掘場~
「グ、グゥ…」
「ドワーフとは弱いのですね。私の風魔法で簡単に倒すことができるのですから。さて、目的の『欠片』も手に入りましたし、この辺りで引き上げるとしましょう、フレイア様。」
「何言ってんだ、シルフィー。アタシらがここでドワーフを負傷させておけば、人族に流れる武具も減るだろ?どうせやるんだったら、鍛冶がしばらくできなくなるくらいにやっておかないとなぁ。」
指を鳴らしながらゆっくりとドワーフに迫る赤髪の魔族。それを後ろから見る緑髪の魔族。
そこへ、ガルト達と兵士が到着した。
「おお!たくさんドワーフがきた!まだまだ暴れたりなかったからちょうど良いや!…って、人族も二人居るし。もしかして勇者?」
赤髪の魔族がガルト達の方を向いてそう言った。
「ガルトさん、俺は後ろにいる緑髪の魔族を相手します。ガルトさんは赤髪の魔族の相手をお願いできますか?」
「了解した。そちらは頼んだ。」
ガルトとジュラドがお互いに頷くと、武器を抜いて前に走る。同時に、兵士達も負傷したドワーフの救助に当たった。
「ハァッ!」
ジュラドが緑髪の魔族に刀を振る。しかし、交わされてしまった。
「…君、可愛い顔してる癖に強そうだね。今の攻撃も速かったし…なんでこんな強い人間と戦わないといけないのかなー…私、今日はあんまり戦いたくないんだけど…」
「…はぁっ!?誰が可愛いって!?俺を馬鹿にしてるの!?」
「そう言う反応も可愛いなぁ…君が味方だったら良かったのに…」
そう言うと緑髪の魔族は空へ高く飛んでしまった。
「君に特別に見せてあげるよ。風魔将 シルフィーの大魔法をね…」




