馬車の中
それから、ガルトがリナ達に剣を教え始めてから3日後、王都から馬車がやってきた。ガルトはリナ達には遠出をすると事前に伝えておいたのだ。
「…迎えが来たか。では俺は行く。俺が戻るまでの課題を覚えているか?教えたことを基礎に自分の技とするんだ。いいな。」
「はい!」
元気な返事を聴いてガルトが頷き、リナの家の扉を閉める。馬車へ向かうと、以外な人物が馬車から降りて来た。
「…ジュラド。お前が来たのか。」
「はい。ガルトさんの補佐として派遣されました。」
ガルトの補佐として派遣されたのは闇の勇者、ジュラドであった。
「支度は整っていますか?」
「あぁ。ここにある。このバックへ入っている。食料と水だ。」
ガルトは背負っているバックを親指で差して言った。
「王都からも食料をお持ちしました。支度は大丈夫そうですね。では、行きましょう。」
「あぁ。」
そして、ガルトが馬車に乗り込み、ヒフキヤマ王国へと馬車が出発した………
「そういえば、ガルトさんは何処で剣を教わったんですか?」
「ん…」
馬車が出発してから少しして、ジュラドが口を開いた。
「……誰からも教わってはいない。」
「え?」
「……我流だ。」
「が、我流でそこまで強くなれたんですか……!?」
「そうだが…」
ジュラドは驚き、口が開いたままだ。
「……あ!あと、この前のアドバイスを元に鍛えてみました。お陰で闘気を三段階まで使えるようになりました!」
「…ふむ、あともう一段階で属性を使えるな。」
(ジュラドが闇の闘気を極めることができれば。王都の警備をすることも可能であろう。)
数日前に現れた刀を持った魔族も現れたため、ガルトは警戒心をあげている。
(いや、あれは魔族だったのか………あの男の言っていった、【五百年】ということが気になる………)
「…ジュラド、お前にひとつ言っておきたいことがある。」
「なんですか?」
ジュラドはキョトンとした顔で聞き返した。
「…数日前、刀を持つ魔族と思われる者がミート村へと現れた。名前はシュラと言う。」
「えっ、でも、ガルトさんなら倒せましたよね?」
「…いや、奴は自分から去っていった。仕留めてはいない。かなりの手練れだ。もしかすると、俺以上の、な。」
「えっ…そ、それと、『魔族らしき者』とはなんなんですか?」
ジュラドはすこし額に汗を浮かべながら尋ねた。ガルトは口を重そうにして呟いた。
「…奴は、五百年以上生きている可能性が高い。奴は自身からそう言っていた。」
「…!?」
「…本来であれば、魔族が五百年も生きることはあり得ん。魔族は人族と対して変わらん。つまり、奴は魔族以外の種族の可能性もあるということだ。」
「長命の種族であれば、エルフ族でしょうか…?」
ジュラドが顎に手を当てながらそう言った。
「わからん。だが、ひとつ言えることは、それだけ長く生きているということは、生きている分だけ知識や経験も蓄えられているということだ。現状は警戒することしかできないだろう。お前も他の勇者も、奴に出くわしたら逃げろ。」
「えっ、なぜですか?」
ジュラドの問いに対し、ガルトはすこし声を低くしていった。
「…奴とお前らが戦えば、十秒もしないうちに終わってしまうからだ。」