復讐
「あぁ………?ここは……?」
「バッガスさん!目が覚めましたね!!」
バッガスはギルドの救護室で目覚めた。まだ頭がヒリヒリする。
「………俺はあいつに1本食らわされたのか」
「はい……」
バッガスは額を触る。まだ痛む。触るだけで電撃が走るように。
バッガスも全盛期は『雷剣』と呼ばれる凄腕のAランク冒険者だった。
バッガスが大剣を軽々と振る姿は、まさに雷神が暴れるかのような様であった。そしてバッガスの性格もすぐに怒鳴り散らす、雷のような男だったので、この名前がつけられた。
相討ちならまだしも、今まで己の攻撃が一撃も相手に当たらなかったことはなかった。
「………あの兄ちゃん、一体何者だ……?」
◇◇◇
「………ここに奴らがいるのか。」
ガルトは盗賊が拠点としている洞窟に来ていた。とても広い洞窟だ。
ガルトがバッガスを倒してバッガスが動けなくなってしまったため、副ギルドマスターが彼に盗賊討伐の依頼を許可したのだ。
「………ここに……」
(五百年。五百年も待ったこの時がやってきた。俺の手で父と母の敵を取る。今、この瞬間に。)
そして、ガルトは勢いよく扉を蹴破り、中へと入った。不思議と人の気配はしない。ガルトは洞窟の奥へと進んでいく。
洞窟の中からは盗賊たちの笑い声が聞こえる。ガルトは慎重に進んで行った。
「ガハハハハ!あの村の男は情けなかったな。最後は、『妻だけは助けてくれ』なんて言ってよぉ、ガハハハハ!」
その頃、盗賊たちは酒を飲みながら今日の略奪品の山分けをしていた。
「………お前ら、俺の分まで取るんじゃねぇだろうな。」
「も、もちろんでさぁ!お頭!」
「えーと、俺のはこれとこれとこれと……」
子分が略奪品を選んでいると、顔の横から低く、重い声が聞こえた。
「その品物はどこから奪った?」
ガルトはその男の懐に入り、すぐさま斬った。男は声を発するまもなく殺された。
「!?こいつ、どっから入ってきやがった!?」
「………お前ラァ、落ちつけぇ。」
親玉が動く。かなり体格がいい。ギルドマスターと同等である。親玉はガルトに視線を送り、口を開いた。
「………テメェ、ここがどこかわかってんのか?」
「………あぁ、よく知っている。人の皮を被った魔物の巣窟だ。」
「テメェ!言わせておけば!」
周囲の子分達が動く。同時に、各々の武器を持つ。
「ハァ!!」
子分達が武器を振る、ナイフ、剣、槍。様々な武器出る。しかし、武器の種類が増えようがガルトにとってはなんの障害にもならなかった。
(……しかしなんとも遅い。何の捻りも工夫もない。これでは交わす前に親玉以外をすべて殺せるな………)
ガルトは剣を抜いたと同時に十人ほどを斬った。辺りに血が飛び散る。最早、あの頃の純粋な少年の姿は無かった。
(残りは二十人弱か………)
ガルトは奴らの懐に入って斬る、入って斬る、入って斬る、入って斬る……を繰り返した。
気がつくと残りは親玉のみになっていた。
「………テメェ、貴族か何かか……?雑魚とはいえ、三分もかからずにこいつらを全員倒すなんてよ。並みの冒険者じゃあねぇな…」
「………お前、イレール村を覚えているか?」
ガルトは知りたかったのだ。この男は襲撃した村についてどう思っているのか。それ以前に、こいつは覚えているのか。
「はぁ?どこの村だそりゃ?略奪した村なんか覚えちゃいねぇよ………俺が覚えてるのは金の数と女だけだなぁ!ガハハ………グハッ………」
「………よくわかった。聞いた俺が馬鹿だったな。」
ガルトは親玉を斬った。親玉が笑い声を上げた、その瞬間に。
(こんな奴に聞いたのがバカだったな。聞くだけで吐き気がするような言葉だった。)
ガルトがこの感情を抱くのは人生で二度目だ。
………盗賊の頭は即死だった。急所を刺され、即死していた。
「………終わったか………」
(………復讐をするために五百年費やしたものの、あっけなく終わってしまった。しかしなぜだろう、復讐を果たしても気持ちが晴れない、あの悲しみや憎しみが消えない、何故………)
「………何故だ」
(俺は両親の仇を打った、なのに気持ちが晴れない、
仇を打つ目的は果たした、なのになぜ………)
自問自答を繰り返しているとと、一人の男が後ろからやってきた。
「………あれれ?君、もしかして盗賊かな?
その割には何のオーラもないみたいだね~」