二十八話 使者
ガルトがシュラと戦っていた同時刻、アイシクル将軍とライオネル・キングス国王、そして、家臣達が会議を行っていた。
「陛下、ここはやはり他種族へ協力を要請すべきです。魔将が現れた以上、魔族がいよいよ本格的に活動していることは明白。急ぎ協力を仰ぐべきであると、このアイシクル・ブリザードは意見致します!」
「ならん!!」
立ち上がって机を叩き、アイシクル将軍に向かって怒鳴り声を上げたのはのは防衛大臣のギルバス・ローグであった。
「…ギルバス殿、貴殿のご意見をお伺いしても?」
アイシクル将軍は冷静に話し合う態度を見せるが、ギルバスはそのまま続けた。
「確かに、アイシクル将軍の言うとおり、他種族へ協力を要請することはひとつの手と言えましょう。ですが、奴らが裏切らない可能性がどこにあると言うのだ!!魔族が攻撃を仕掛けているのだぞ!!他の種族が裏切らないという根拠が、どこにあると言うのだ!!!」
またしても机を叩いて話すギルバスに対して、アイシクル将軍が睨み付けた。
「他種族は魔族と違い、我ら人族と協定を結んでおる!!………貴殿の物言いは、他種族への信頼がかけていると見える…そのような人間に防衛大臣の任を任せることは、いささか如何なものでしょうか、陛下。」
「うむ………」
ライオネルが唸るが、ギルバスはまたしても声を張り上げる。
「陛下!このような者の言葉に騙されてはなりません!他種族は警戒すべきです!このままではアストラル国の破滅となりますよ!!」
「いい加減にせんか!!他種族をなんだと思っておるのだ!!」
アイシクル将軍も席から立ち上がり、拳を固く握った。すると、ライオネルが口を開いた。
「よせ。二人とも。ここは、アイシクル将軍の案に任せるとしよう、だが、ギルバスの意見も無視はできん。ギルバスは万が一に備え、国の防衛をさらに頑張ってくれたまえ。」
「し、しかし…………うむ……承知、致しました……」
ギルバスは小さくなり、席に座ってしまった。
「では早速他種族へ使者を送るとしましょう。誰が、適任ですかな。」
外交大臣が口を開いた。そして、アイシクル将軍が立ち上がった。
「儂に考えがあります。アストラル国の英雄、ガルト殿が適任かと。四種族までの道のりは険しく、並の者では辿り着けませぬ。ガルト殿であれば可能でしょう。」
「うむ。ガルト殿が適任だな。アイシクル将軍の案を採用としよう。早速、ミート村へ使いを送るのだ。」
ライオネルがそういうと、側に待機していた兵士が走っていった。
「ところで、まずはどの種族を訪問いたしましょうか?」
外交大臣の問いに対し、ライオネルが答えた。
「先ずは、一番信頼の強い、ドワーフ族へと要請すべきだな。ドワーフ族の英雄、ダイモンならば受け入れてくれるであろう。」
「おお、ダイモン殿なら引き受けてくださるでしょう!!」
外交大臣も賛成したことで、先ずはドワーフ族へと向かうことになった。
先程の会議から2日後、ミート村へ一台の馬車がやってきた。
「失礼する。国王陛下からの使いである。ガルト殿は居られるか!」
リナの家を訪ねてきた使いがドアを開けた。
「俺に何か用か?」
朝食を済ませたガルトが椅子から腰を上げた。
「国王陛下からの命により、ガルト殿は他種族への訪問を行われることとなった。出発は明日。準備なさられよ。」
「……何?どのような理由で俺が?」
ガルトの問いに対して、使者が答える。
「魔族の王都襲撃により、他種族へ協力を要請することが決定した。そのため、使者を送ることになったのだ。その使者がガルト殿が適任であると、アイシクル将軍が進言なされたのだ。」
(アイシクル将軍か………厄介な役を押し付けてくれたものだ。)
「………承知した。支度はしておこう。」