二十七話 しびとⅡ
「【邪気解放・一】…!!」
シュラから【邪気】が溢れ出す。ガルトは感じた。この男の邪気は、デスの死気よりも上だと。
「…お前も闘気を極めた者か。」
ガルトはシュラに対して言う。しかし、シュラからは思いがけない答えが返ってきた。
「………貴様は闘気については無知なのだな。これが【闘気】の枠に収まる代物だと?」
「………そうか。」
この瞬間に、ガルトは理解した。シュラの邪気は闘気の枠を越えてしまっている。
(デスの【死気】、シュラの【邪気】…おそらくこれらは、闘気から外れた派生系の物……元を辿れば闘気だが、これらはもう既に全くの別物だ。)
ガルトはすぐに動いた。同時に、シュラも動きだす。シュラのスピードが僅かながらガルトを上回る。
「ここで散るが良い…我に邪気を使わせたことは天晴れと言えよう!!」
シュラはそう言い、邪気を纏わせた刀を上段から振り下ろす。ガルトも反撃をする。
「【闘気剣術・一撃必殺の型】!!」
ガルトは剣に闘気を流し込み、上段から振り下ろす。シュラの刀と、ガルトの剣の闘気と邪気がぶつかり、凄まじい風が辺りに吹き荒れる。
「グゥゥ……まさか、これ程とは………!!!」
「…お前は……ここで殺す……!!!」
両者、一歩も引かぬ気迫で相手を見つめる。
辺りに土埃が舞い、両者の姿は見えなくなってしまった。
「これは………惜しいな………」
シュラはそう言うと、ガルトを蹴飛ばした。
「………何故攻撃を止めた…!?」
ガルトから少し離れたところで、刀を納めようとするシュラが居た。ガルトは疑問しかなかった。何故この男は攻撃を止めたのか、理解できなかった。
「…貴様は殺すには惜しい。今日は貴様の強さに免じ、引き下がるとしよう…」
「何故だ?」
ガルトの問いに対し、シュラが刀を納めてから答える。
「…我も武人の端くれ。強者との戦闘を望んでいる。貴様の強さはまだ限界に達してはいない。故に、ここで殺すことは惜しく感じたのだ。」
シュラはそう言うと、スタスタと後ろへ歩いていってしまった。呆然と立ち尽くすガルトを残して。
魔王城へ帰る途中、シュラは考えながら歩いていた。
(あの者は強い。そして、まだ力の半分も出していないのであろう。邪気を全て出した我であっても、勝てるかどうか………)
「………フフ、フハハハハッ!!」
シュラは思わず笑いが込み上げてきた。
「面白い………!!ガルトか……その名を覚えておこう……!!」
高々と笑ったあと、シュラは疾風迅雷の速さで走り去った。
~お知らせ~
いつも読んでいただきありがとうございます!
今回はお知らせとなります。歴戦の騎士は今回で二十八話を達成しました。そして、読んでくださる方々も多く増えました。本当にありがとうございます!
本題に入りますが、歴戦の騎士の外伝を作ろうと思っています。外伝では各キャラクターの過去、回想、等々を書いていこうと思います。現在予定しているキャラクターは、
アイシクル・ブリザード
シュラ
の、二名のキャラクターを予定しています。