二十三話 雷魔将 ライデン
「オイオイ………中々渋い爺さんだな。」
「伊達に数十年もアストラル国の将軍をやっとらんわ。貴様のような魔族は何十人と見てきた。儂に小細工や不意打ちなどというものは通用せんよ。」
アイシクル将軍は笑ってそう言った。
(あの雷の魔法はなんなのだ?アイシクル将軍も、あの魔族も、先のテロリストも、六属性以外の属性を操っている。俺の知らない属性か………。)
「【闘気剣術・心眼の型】………」
(これは闘気を眼球に流すことで視力を大幅に上げる。また、心眼の型は相手の攻撃を予測することも可能だ。)
「氷に雷………か。」
先程から心眼の型で観察していたが、あのような属性をガルトは知らない。ガルトが知っているのは六属性のみだ。
観察していると、アイシクル将軍が再び矛を構えた。
「貴様はここで殺す。かつての魔将と同じように、な。」
「それはこっちの台詞だぜ、爺さん。冥土の土産に教えてやろう。俺の名はライデン。雷魔将ライデンだ!こいつは相棒のアーティファクト、【雷轟の大爪】だ!!!」
そう言うとライデンは両腕の爪を見せた。金色に輝くその爪は、雷の如く威圧感があった。
「ほう、貴様もアーティファクトを使っているのか。儂はアイシクル・ブリザード。儂の相棒は【氷河の大矛】。貴様の相棒と同じ、アーティファクトだ。」
【アーティファクト】とは、簡単に言えば過去に作られたもののことだ。武器だけでなく、魔法で作られた機械なども含まれる。ガルトの【歴戦の剣】もアーティファクトの一つだ。現代の技術で作製できないものがアーティファクトとされる。
ここで勘違いされがちなのが【神器】と【アーティファクト】の違いだ。アーティファクトは人族や、魔族などの生物が作り上げたものであり、神器は神と称されるものが作り上げたものだ。例を挙げると、勇者の神器だ。
これは各神獣が認めた勇者に神獣自らが与えるものであり、これこそが神器だ。
「【氷結槍】!!」
アイシクル将軍が巨大な氷の槍を作り、ライデンに向かって放つ。だが、ライデンも黙ってみているわけではない。
「【轟雷電】!!!」
ライデンは両手を突きだし、手の平から雷を放出した。アイシクル将軍の氷の槍は砕けてしまった。
「やはり魔将は一筋縄ではいかんか………」
将軍は矛を構える。そして、ライデンに向かって飛び上がる。
「ドリャァァァ!!」
将軍は叫び声と共に勢い良く矛を振りかざした。しかし、ライデンは飛び立って避けてしまった。地面にはヒビが入る。凄まじい力だ。
「ハッ……あんなの喰らっちまったら死ぬな、こりゃぁ………」
「ふむ……速いのう………ならばこれはどうだ………【氷結地獄】!!」
突如、アイシクル将軍とライデンの周りに白い煙のようなものが立つ。あれは……冷気か?
冷気が晴れ、ライデンとアイシクル将軍の姿が見えた。ライデンは凍った体をピキピキと音を立てながら動いているが、とても動きづらそうだ。
「どうじゃ?これならば自慢の速さも通用せん。」
「ハッ………だからなんだってんだ?【轟雷電】!!」
「ぬぅっ!?」
将軍はギガボルトを喰らい、後方に飛ばされてしまった。そして、ライデンは空へと飛ぶ。
「一人でこのジジイを相手にするのは不利だな。今日のところは引いてやる………」
ライデンは飛び立ってしまった。アイシクル将軍が起き上がり、ライデンを追おうとするが、将軍は諦めてしまった。
「ふぅ………ならなか強敵だったわい。【氷盾】がなければどうなっていたことやら…」
アイシクル将軍は、ギガボルトに触れる直前、【氷盾】でガードしていたのだ。そのお陰で、致命傷を避けることができた。
「全く………1日でここまで来るとはのう……テロリストに魔物の群れに魔族。もうたくさんだわい……」