二十ニ話 氷の将軍
ガルトは王都の城壁の上へ立つ。アイシクル将軍が馬から降りて、魔物の大群を前に右手に矛を携え、仁王立ちしていた。
魔物の大群がアイシクル将軍を全方向から囲み、一斉に飛びかかった。
「さぁ、始めるとするかのう……」
その瞬間、アイシクル将軍は左手を固く握りしめ、その拳を地面に向かって降り下げた。
「【氷山】!!」
次の瞬間、アイシクル将軍の周りに鋭い氷の刃が現れる。小さな氷山のようにアイシクル将軍の周りを囲むようにして現れ、魔物達を串刺しにした。
「さぁ!かかってこい、魔物共がぁ!」
アイシクル将軍は氷山を飛び越えると、矛でバッタバッタと魔物を切り裂いていく。まさに、一騎当千と呼ぶにふさわしい戦闘力だ。
「………氷の魔法など、見たことがない。あれは一体…?」
(俺は氷のスキルは聞いたことも見たこともない。将軍が独自に生み出したのだろうか……?いや、属性は産まれたときから決められている筈…)
「【氷結錬成・氷兵士】!!」
将軍がスキルを使い、地面を思いきり叩くと、辺りに氷の騎士が数百と現れた。将軍は氷のゴーレムのような物を作り出すことができるのだ。
「さぁ!!出陣じゃ!!騎兵ゴーレムはゴブリン共を蹴散らせ!!盾兵ゴーレムはオーク共を囲んで時間を稼げ、槍兵ゴーレムはスケルトン共を蹂躙せよ!!」
アイシクル将軍が指示を出すと、ゴーレム達が動き出す。ゴーレム達は魔物達を蹴散らしていく。数もゴーレムの方が多いため、魔物側は劣勢と見える。
そこへ、一人の魔族の男が空から現れた。頭には黒い角が生えている。奴がこの魔物達をけしかけたのだろう。
「ほう……お主がこの魔物を誘導させた魔族だな?」
「ゲェッ、なんでこんな厄介な爺さんが居るんだよ……お前さえ居なければこの国は攻め落とせたのによ……ツイてねぇな…」
「………そうか。お主が元凶か。ならば儂は、お主の命を奪わねばならん。」
アイシクル将軍は矛を構える。同時に、魔族も爪を構える。この魔族は爪で戦う戦闘スタイルのようだ。
「フッ……ジジイは町でヨボヨボになって寝てな!!」
次の瞬間、魔族は空へ高く飛び、爪から雷撃が放たれる。
「【雷光弾】!!」
雷魔法が放たれると、辺り一面に砂埃がたった。
「ふぅ………老い先ジジイの癖に。大人しくしとけばもう少し長く生きられたのによ………」
砂埃が晴れ、魔族は自分の眼を疑った。
「………オイオイ、どうなってるんだよ…」
「……雷の魔法とは珍妙なものを使う奴だわい。儂と同じく、イレギュラーな奴じゃな?」
アイシクル将軍の前には、氷で作られた大きな盾が置かれていた。
「【氷盾】………どんなにスキル強かろうが儂の盾は砕けん。氷だからといって舐めるなよ?小僧。」
「………そうか。あんたも俺と似たようなスキル持ってんのか。氷なんて見たことがないしな。」
アイシクル将軍と、雷魔法を使う魔族が対立する………