二十話 死気解放
「死気……解放……?グッ…………これは………!?」
(奴がスキルを使用した途端、周囲が黒い煙のような物で覆われ、空気が重々しくなる。【死】を間近に感じる。なんだこれは。)
ガルトは地面に膝をついてしまった。まともに立つことができない。
「ふふふ………まともに動けそうもないようデスね………おいで、僕の可愛い可愛いアーティファクト、【冥王の大鎌】。」
そういうと、デスは暗闇から大鎌をとりだした。
アーティファクトとは、失われた技術で作られた物だ。武器や、機械等がある。ガルトの【歴戦の剣】もアーティファクトの一つだ。
(冥王の大鎌………かつて冥王と呼ばれた者が使用していた武器か………そういえば……冥王は特殊な【気】を使うと書いてあったような………これがその特殊な気、【死気】なのだろう。この中ではもはやまともに動くことすら敵わん。)
「こうなったら僕のターンデス………」
「………どうやら手を抜くことは出来ぬようだ………」
ガルトはそういうと立ち上がり、剣を構える。
「?なんで動けるんデスか?」
「俺も少しは鍛えている。立つことぐらいは可能だ………」
ガルトは深く深呼吸をし、闘気を解放する。
「【闘気解放・無】………」
「闘気を解放したところで長くは持たないデス。もうお前の負け、僕の勝ちデス。」
「さぁ……それはどうだろうな。」
「?」
ガルトは闘気を脳に巡らせる。気分がいい。
(やはりこれは精神に干渉してくるタイプのスキル………ならば……)
「【闘気剣術 不動の型】………」
【闘気剣術 不動の型】……それは、ガルトが編み出した技の一つ。精神に闘気で壁を作ることにより、
精神に干渉するスキルを無効化することが出来る。
不動の型を使った途端、ガルトの体はずいぶん楽になった。というよりも、全く苦しく無くなった。
「な、何故動けるんデス!?というより、さっきよりも元気に………」
「なに、闘気で精神に【壁】を作っただけだろう。初歩的な闘気操作だ。」
「ハ、ハァ?闘気で壁……?何を言ってるんデス?……まぁいいデス。ここでお前を殺せばいいだけの話デス!!」
そう言うと奴は大鎌を振り上げ、ガルトをがけて飛ぶ。
「死属性の力、見せてやるデス!!死ぬのデス!!」
「奇遇だな。俺もお前を殺さねばならんようだ。一切の容赦をせず、確実に殺す。」
ガルトは飛びかかってきたデスを、盾で思い切り弾く。金属がデスの骨に当たる、鈍い音がした。
「グハッ…………なん…で…!!ここまで動けるなんておかしいデス………!!なら………!!」
(デスが魔方陣を出した。こいつは魔法スキルも使えるのか。死属性の魔法はどのような魔法なのだろう。俺の予想は、死んだ魔物を蘇らせ、自分の駒として使える能力を持っている可能性が高い………)
「来い………僕の可愛いペット達ィィ!!」
巨大な魔方陣が上空に現れる。同時に、地面から骸骨や豚のような骨、様々な骨の魔物が現れた。
(やはり、この骨の魔物はこいつの能力だったか。)
「【闘気剣術 斬撃無双の型】」
無数の斬撃で骨を砕いていく。数は多いが、1体1体が脆い。
(これならばすぐに倒せる。今の時点で、千体ほど倒したか。1/3程度は倒せたか。)
「な、なんなんデス………ここまで、僕の能力が破れるなんて………」
気がつくともう動いている骨は居なかった。
「………あとはお前だけだ。」
「こんなの……認めない、認めないデス!!!」
再び大鎌を振るう。ガルトは寸前で交わす。
剣を奴に当てようとするが、デスも速い。中々当たらない。
(ふむ………反射神経が良いのか?こちらの攻撃を全て回避している………才能か。)
「まだまだ止まらないデスゥゥ!!!【デス・カッター】!!」
(赤黒く、大きな斬撃を三つ飛ばす。なるほど。冥王と同じ技を使えるのか。あの大鎌の能力というわけか。)
斬撃を軽く避けると、今度はガルトが斬撃を放つ。
「【闘気剣術 一撃必殺の型】」
ガルトは白銀に輝く斬撃を、一つ飛ばした。【一撃必殺の型】は、斬撃としても使うことが出来る。応用が効くように編み出したのだ。
白銀の斬撃は、赤黒い斬撃を全て打ち消し、デスに届いた。斬撃は止まること無く、デスを後ろに吹き飛ばすと同時に、血が飛び散った。
「グワァァァァーーーー!!!」
デスは断末魔の叫び声を上げる。辺りが砂埃で見えない。だが、気配でわかる。奴はまだ死んでいない。
「グ、グフゥ………この……!!」
「………瀕死、といったところか。」
「き、今日は退散するデス………覚えていやがれデス………」
デスは黒い煙と共に消えた。同時に、勇者達の方向の敵の気配も消えた。奴らは逃げた。王都は守ることが出来たのだ。