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歴戦の騎士  作者: 若葉
三章 王都
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十九話 ローズ ~薔薇のテロリスト~

 ガルトたちは店を出て、騒然とした光景に目を見開いた。


 燃える家々、泣き叫びながら逃げる子供や人々。そして、その人々を襲う、骨だけで出来た魔物。


(あれは………!何故このようなところに)


「【闘気解放・無】……」


 ガルトはすぐさま闘気を使い、骨の魔物を斬りかかりにいった。


 ガルトの剣が奴らを切るとき、バキッという音がする。やはり、こいつらは死んでいる。それも、骨が脆くなっていることから、かなり昔の魔物だ。


「一体どうなってるの……?」


 ホムラが驚いたような、怒りのような、理解できないような、複雑な表情をしている。


「………ひとまず、こいつらをなんとかしないとヤバめな感じだな。」


 フウマが剣を抜き、二刀流の構えをとる。


「【闘気解放・風】」


 フウマの周りに風が吹く。同時にフウマが勢いよく踏み込み、骨の魔物達を蹴散らす。人間、豚のような魔物、古生物に近いような魔物………現代の魔物とは少し違うような骨の魔物を、軽く二十は倒していた。


「速く逃げてください。ここは俺ら勇者に任せて。」

「あ、ありがとうございます!」


 周りの住民を逃がした。勇者達が厳しい表情をしてお互いの顔を見合わせているなか、ガルトは向かいの家の屋根に気配を感じた。


(この気配………住民ではない。動きからしても、素人ではない。)


 その刹那、俺は飛び上がり、屋根の上に潜む気配を追う。


「えっ!ど、どこへ行くんです!?」


 ジュラトの叫びを無視して、ガルトは奴を追う。

 黒いフードの人間。どうやら奴も気づいたようで、俺から逃げる。


「逃がしはせん。」


 ガルトは闘気を剣に纏わせ、黒いフードの人間に斬撃を放った。奴はその瞬間に隣の家へ飛び移った。ガルトの斬撃によって、屋根が粉々になってしまった。


「む……位置関係が不利だな」

「なによあんた、こんなに強い奴がいるとか面倒なんだけど。勇者しかマークしてないっての……」


 黒いフードの下から女の声がした。

 女はフードをとり、真紅の髪を表した。


「あんた一体何者?この国にそんな強い奴が居るなんて聞いたこと無いんだけど?」

「………先に名乗るのが礼儀であろう。お前達は何者だ。」


 ガルトは女に剣を向け、鋭い視線を向ける。すると、女は鼻で笑いながら返答返した。


「へぇ………、ま、良いわ。私はローズ。コードネームだけどね。私達はこの国を壊したくて仕方がないだけよ。今回の騒動もその一環。」


 テロリストというわけか。この女、ただ者ではない。気配でわかる。勇者と一対一で戦っても勝てる程の強者だ。


「あんたに構ってる暇は無いから。すぐに殺してあげるわよ!!


【茨の舞い】!!」


 女がそう言うと、奴の足元から薔薇のようなものが生えてくる。スキル……なのか…?このようなスキルは見たことも、聞いたこともないが…?


(イバラバラに酷似している。奴はテイマーなのか?)


「喰らいなさい!!」


 女が指を鳴らすと、薔薇がこちらに向かってくる。棘のある茎を見ると、まるで鞭のようだ。

 俺は向かってきた7本の薔薇の茎を、剣で弾いた。


 弾けばまた鞭のようにしなる。弾く、しなる、弾く、しなる、それを繰り返している。


「ほらほら、いつまで持つのかしらね!!」


(………隙がない。この薔薇を避けながら奴に攻撃することは困難だ……ならば……)


「【闘気剣術 斬撃無双の型】!!」


 剣に大量の闘気を纏わせ、八の字に剣を振るう。無数の斬撃を薔薇に放った。この斬撃ならば茎を切ることが出きるであろう。

 予想通り、7本全ての茎を切ることが出来た。


「ッ!?私のスキルが、属性闘気でも無い闘気に破られた……!?」


 女が驚いている隙にガルトは女の真横に間合いを詰める。


「属性がなくとも闘気を極めることは出来る。そんなことも知らんのか。」

「なっ……速……」


 ガルトはそのまま斜めに剣を振り下ろした。女から血が吹き出た。しかし浅い。直前で後ろに飛び、致命傷を避けたか。


「このォ…………この借りは返す、覚えておきなさいよ!!」


 女は煙玉を取り出すと、どこかへ逃げてしまった。

 追うことも可能だが、先程の揺れの元凶ははこの女ではない。ということは、まだ敵が王都に居るということだ。


 ガルトは剣を仕舞い、ふと、王城の正反対の方向を見る。


「………砂埃が酷い。敵は向こうか。」


(おそらく、勇者達が戦っているのだろう。だが、どうにもおかしい。骨の魔物を操っている者が何処に居るのかがよくわからない。勇者達と戦っている者はおそらく違う。どこだ。何処に居る………)


 ガルトが敵を探していると、ガチャガチャという不気味な音を立てながら逃げる骨の魔物達を見つけた。


(全て、ある1ヵ所へ向かっている。おそらくそこに操る者がいるのだろう。)


 その1ヵ所とは、王城だった。

 がは王城へ走る。


(かなり距離があるが、俺の脚力と体力であれば、十五分程度で着く。間に合うといいが……)









「ハァァ!!」

「こいつら、骨だけで動いている!!」


 王城では近衛騎士団達が戦っている。だが、いかんせん数が多いため、苦戦を強いられているようだ。


 王城へ着くと、ガルトはある奇妙な気を感じた。


(()()()()()()()()しかし、どこか違う。)


「デスデス………もうすぐこの国は僕らの物デス………」


 見つけた。あの黒いフードの男。ガルトはすぐさまその男に向けて斬撃を放つ。


「おっと……闘気の使い手は厄介デスね……」


 男は高く飛ぶと俺のところまで飛んできた。ガルトから少し離れたところから話しかけてきた。


「………貴方何者デスか?勇者ではないようデスが。」

「………お前らテロリスト共は自分から名乗るという礼儀を知らんのか。」


 そう言うと、男はフードをとり、ニイッと笑って答えた。


「これは失礼。僕は『デス』デス。コードネームデス。で、貴方は誰デスか?」

「……ガルトだ。」

「ガルト………聞いたことの無い名前デスね………ここまで強い戦士ならその名は有名な筈デスが……ま、いいデス。ここで僕が殺すので。」


 ガルトは剣を抜き、闘気を解放する。これまでに類を見ない強敵だ。油断はできない。


「ふふふ………【死気解放】デス!!」

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