十八話 王都襲撃~悪夢の始まり~
「お前!!こいつをどこで手に入れた!?」
ダグラスが剣と盾を持ちながら叫んだ。
「………さあな。」
ガルトはわざと濁らせる言い方をした。剣王の修行場で手に入れたことは伏せておいた方がいいだろう。あの場所にある、業物を狙う輩も少なくないだろうから。
「なんだよ………教えてくれねぇのか…」
ダグラスはしょんぼりとしてまた椅子に腰を掛けた。
「で、お前さん、こんなに良い武具を持っておいて、何で俺の店に来た?」
「…生徒達の武具を買いに来た。」
「生徒?先生でもやってるのか?」
「……まあな。」
「ガルトさん、教え子がいらっしゃるんですか?」
ジュラドが興味津々といった様子で聞いた。
「教え子といえるかは知らん。基礎の剣術を教えているだけだが。」
「な、なら!是非、俺も弟子にしてください!!」
ジュラドがいきなり土下座。綺麗な黒髪を土埃だらけの床に擦り付けた。
「………なぜ俺に?」
「………俺は、闘気がつかえないんです。せっかく神器【聖刀 神威】に認められたのに、俺の相棒ともいえるこの武器を使いこなせないんです。俺は、闘気を使って、この国を守りたい。だからどうか、弟子にして貰えませんか……!」
ガルトはジュラドの眼を見る。ジュラドの黒い目の奥には強い覚悟と、黒紫色に光り、煌々と燃える炎が宿っている。
(闇の闘気を会得している………!?問題は、解放ができていないことか。)
「……いいだろう。俺で良ければ稽古をつけよう。王都にはあと数日は滞在する予定だ。その間なら良い。」
「ありがとうございます!!」
床から顔を上げ、顔がとても明るくなるジュラド。
(それにしてもなんという才能なのか……普通、闘気は無色から始め、鍛えれば属性の色に変化するが………こいつは始めから【闇】の色が見えている………
鍛えればこの国最強の剣士になれるだろう。俺の何倍も強く、かつ、属性もつかえる……ジュラドは魔王を倒す大きな鍵となるに違いない。)
「そうだ、剣を貰おう。」
ガルトは壁に飾ってある、鋼色に輝く剣を手に取った。質がいい。そして何の飾りもない、シンプルな剣だ。流石は王都一の鍛冶屋。これならば良いだろう。
「これを4本くれ。」
「………いいのか?1本金貨五枚だぞ?」
1本金貨五枚………リナの家が一月暮らせる金額だ。決して安くない。
ガルトは王から貰った袋から金貨二十枚を取りだし、机に置いた。
「……まいど。」
ダグラスは一瞬驚いた顔をしたが、店の奥から4本の剣を持ってきて、一つ一つ鞘に仕舞い、俺に渡してきた。
「剣だけでいいのか?」
「あぁ。必要になったらまた買いに来る。」
「………へへへ、お前さんはうちの太客になりそうだな。ほれ、これも持ってけ。サービスだ。」
すると、ダグラスはナイフを4本出してきた。こちらも質がいい。
「生徒さん方へのプレゼントだ。大事に使ってくれよ?」
「ふむ、ありがたく頂戴しよう。」
「よかったですね。ガルトさん。」
アクエスが少し笑いながら言った。
(なんだ、こいつはこんな笑顔も見せるのか。)
………王都の時計台の上に、黒ずくめの男が居た。
「デスデス………王都襲撃デス………!」
「フフフ……この国の連中を、恐怖のどん底へ落としてやるわ……」
紅髪の女が笑いながら言った。
「では俺様も、存分に暴れるとしよう!!」
巨大なハンマーを持った、白髪の大男がニタニタ笑いながら、時計台を飛び降りた。
「フハハハハハ!!【デストロイ・ハンマー】!!!」
白髪の大男はスキルを使った。
ドーン!!という轟音が王都中に響き渡った………
「な、なんだぁ!?」
ダグラスの鍛冶屋まで届く振動。
(この揺れは………何かのスキルか……?)
「これは………いくわよ!みんな!」
ホムラはそういうと、真っ先に飛び出していった。
「俺もいこう。どうやらただ事では無さそうだからな。」