十七話 観光
「ハハハッ!!世界は広いな!こんなにも不思議な人がいるのだから!」
茶髪の男、ガイアスが高々と笑う。
そして、銀髪の女、ルシアが口を開く。
「あ、あの……前向きに国に仕官する気はありませんか…?」
「ふむ……俺は国に仕官できる程の大した逸材ではない。他を当たった方が賢明だ。」
「そ、そうですか…」
ガルトの返答に彼女はしょんぼりとして下を向いた。
「ちょっと!あんた強いならこの国を守りなさいよ!何のための剣技よ!」
「………復讐のためだ」
「え?」
ガルトは兜の中で鬼の形相であった。ガルトからは自然と覇気が出ていたのだろう。
……………数秒、沈黙が続く。復讐のために修行をしたというのは本当のことなのだが。
「………ふむ、復讐のためにそこまでの技量を……」
水の勇者、アクエスは真剣に話を聞いている。
「ま、まあ良いじゃないですか……この人はアストラル国にいますし、何あれば応援要請をすればいいし……」
闇の勇者が場をなだめた。………おそらく、いつも喧嘩などの仲裁役をしているのだろう。可哀想に。
「それもそうね。アストラルにはこの人がいるんだし。」
「……用がすんだなら俺はいくぞ?」
「え?どこか行きたいの?」
ホムラが興味津々といった様子で尋ねる。
「あぁ。何分王都に来たのは初めてでな。色々と寄りたいところがある。」
「それなら私たちが着いていって上げる!あんたの強さも知りたいし。」
ホムラがガルトの手を引いた。
「それは良い考えだ!!是非案内するよ!」
「ハハハッ!!中々良いアイディアだな!」
(………話が向こうでまとまってしまっている。まぁ、案内役を引き受けてくれるのならありがたいが。)
「あ、そういえばあんたの名前を聞いてなかったな、名前は?」
フウマが尋ねた。
「…ガルトだ。」
「なーんか変わった名前ね。まあいいわ。で、何処に行くの?」
「王都一番の鍛冶屋に。」
ガルトは貰った金で、リナ達に武器を買うつもりであったのだ。
「あぁ、【ダグラスの鍛冶屋】ね。あそこは王国の騎士団の武器も作ってる有名なところだからオススメ。」
(ほう………それは興味深い。リナ達に武器を買っていくのに丁度良いな。)
~移動~
「ここがダグラスの鍛冶屋です。」
店の扉を開け、ガルトたちは中へはいる。
奥から店主がのそのそとやってきた。
「ん…?なんだ、勇者共じゃねぇか?」
奥から出てきたのはドワーフだった。
ドワーフとは、亜人の一種で、主に鉱山などの山に国を作って生活している。
彼らの鍛冶技術はとても高く、鍛冶によって生計を立てている種族だ。
「んで、そこの騎士様は一体誰だ?」
「この人はガルトさんです。フォレストドラゴンを倒した、アストラルの英雄です!」
「ほぉ………」
ダグラスはガルトの体をジロジロと見ている。
「……筋肉はかなりあるな……これならフォレストドラゴンを倒せたのも信じられないわけはない。」
ダグラスはよっこらせ、と椅子に座り、口を開いた。
「で、お前さん、うちで何を買うんだ?見たところ持ち前の剣があるようだが………ん?そ、そいつは…!!」
「?」
ガルトがよくわからない表情をしていると、ダグラスは椅子から急に立ち上がり、走ってこちらに向かい、ガルトの腰の剣を抜いた。
「こ、こりゃあ、オリハルコンとエンシェントドラゴンの骨と血を混ぜた合金か?柄についてる赤い石は『地獄の石』だよな………」
今度はダグラスはガルトの背中にある盾を強引に奪い取った。
「こいつにも『地獄の石』が着いてやがる……!そしてこいつもオリハルコンとエンシェントドラゴンの合金か…………一体どのような鍛冶師がこの武具を………!!」
ダグラスは一人でぶつぶつ言っている。ガルトの話を聞こうともしない。
「あ、はは………鍛冶のことになると、ダグラスさんは周りが見えなくなるんですよね………」
「ほう。」
闇の勇者が苦笑いしながらそう言った。