フォレストドラゴン
ガルトはリナの家へと帰り、支度をし始める。
井戸へ行き、家に置いてあった砥石を借りて、剣を研磨していく。
くすんだような色だった刀身が力を取り戻し、光輝く。我ながらいい具合にできた、とガルトは思った。
「良し、これならば良かろう。」
磨いだ剣を腰の鞘に納め、左手に盾をはめ、フォレストドラゴンの討伐に行こうとした。
「ガルトさん!?」
リナだ。リナが慌てた様子で向かってくる。
(もしや、フォレストドラゴンがもうここまで来たのか………!?)
「フォレストドラゴンを討伐しに行くって、本当なんですか!?」
「……あぁ。これから行くところだ。このあたりにも少々被害が出るやもしれん。リナは家族を連れて逃げろ。ギルドに行けば多少は安全だろう。」
「そんな、無茶です!フォレストドラゴンは、たとえガルトさんでも危険です!!」
リナはガルトのことを必死に止める。だが、フォレストドラゴンを倒さなくては、ゲイルを、国を、救えないのだ。
「………フォレストドラゴンを倒さなくては、この国も、この村も、リナの両親も、リナも、救えない。だから、俺は倒さなくてはならない。」
「だからって………」
リナの目には涙が浮かんでいる。今にも目から溢れそうな程に。ガルトは彼女に優しく言った。
「………心配するな。フォレストドラゴンなどは何度も倒している。これくらいでは死ぬことはない。必ず帰る。約束しよう。」
「………わかりました。」
リナは涙を拭い、走って家に入ってしまった。
(………リナのためにも、奴を倒し、帰ってこなくては。)
ガルトはフォレストドラゴンの居る、ミート村から離れた、森の中を目指した。
「………見つけた。」
フォレストドラゴンだ。鼠色の爪、鋭い牙、そして、とてつもなく大きい翼。
頭部にある角から魔力を放出し、魔物を産み出している。気配を消しているので、ガルトにはまだ気づいていない。
ガルトは剣を抜き、ゆっくりとフォレストドラゴンへと近づいていく。フォレストドラゴンも魔力を止め、こちらを向いた。
「………闘気解放・無」
灰色のオーラが身体中から沸き上がる。同時に、フォレストドラゴンも牙をむき出しにし、戦闘態勢へ入った。両者、戦闘準備は万全となった。
「………行くぞ、フォレストドラゴン!」