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歴戦の騎士  作者: 若葉
一章 放浪
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『森ノ怒リ』

 フォレストドラゴン。

 それは、我が国、アストラル王国に、古くから伝えられる【四大厄災】のひとつである。別名、『森ノ怒リ』と呼ばれる。


 また、フォレストドラゴンと同格とされるドラゴンが、後三体存在する。火山を生息地とするボルケーノドラゴン、地中を生息地とするアースドラゴン、海を生息地とするアクアドラゴン。それぞれ『山ノ怒リ』、『大岩ノ怒リ』、『海ノ怒リ』と呼ばれている。


 フォレストドラゴンは自身の周りに植物を生やす。中には希少な薬草もあるが、それ以上に危険な毒草もあるので、『厄災』と言われてきた。


 また、植物系の魔物を産み出すこともできるので、アストラル王国は厄災に長年悩まされてきた。


(そのような魔物が何故………?グリーンドラゴンからフォレストドラゴンに進化することは知っている。だが、あれは上位の竜の一部を、グリーンドラゴンが食べなければ進化しないはず、上位の竜なんて、早々居ない。一体何故進化したんだ………?)


 グリーンドラゴンのランクはSだが、フォレストドラゴンのランクはSSだ。F~Aランクが人間の対処可能な魔物、Sが最強の部類に入る魔物、SSが国家災害級の魔物、SSSが討伐不可とされる魔物、Lランクが神話級とされる魔物だ。つまり、フォレストドラゴンは国家の危機とも言える。


「うっ………」

「ゲイル!?どうした!?」


 ゲイルが苦しそうに腹を抑え、その場に倒れ込む。やはりただの怪我ではない。顔色が青く変色していく。


「はぁ………はぁ………」

「しっかりしろ!!」


他の冒険者がゲイルの体を揺する。しかし、ゲイルの表情は苦悶のままである。


「どけ。俺が見る。」


 ガルトは冒険者の間に割って入る。そして、ゲイルの装備を外し、腹を見ようとする。


「お前は……!!この前の………ウァァッ!!」

「あ、あいつ、ゲイルのパーティーをボコボコにしてた新顔か!?」


 周りが騒ぎ出す。そんなものに構ってはいられないため、ガルトはゲイルの鎧を取り外し、腹を見た。


「………これは…!!」


 ゲイルの腹には緑色の傷があった。そこから苔のようなものが生えている。その苔のようなものは少しずつ広がっているようにも見えた。


「『壊死苔(エシゴケ)』か………」


 壊死苔(エシゴケ)とは、皮膚や内蔵を壊死させる苔のような病だ。植物系の魔物と戦うと希に発症する。フォレストドラゴンと戦えばこうなるのも無理はない。


「エシ……ゴケ……?なんだ……そりゃ………グァァァ!!」

「ゲイル!!しっかりしろ!!」


 冒険者がゲイルを揺すって励ます。


「動かすな!!揺らすと余計に苔が広がる!!」

「じゃ、じゃぁ、どうしたら………!!」


 冒険者達も、ギルド職員も顔を見合わせる。どうやら壊死苔の治療法を知らないらしい。壊死苔(エシゴケ)は外傷を受けた魔物の体の一部を患部に塗ることで治療ができる。今回はフォレストドラゴンの角が必要だ。


「………壊死苔を治療するにはフォレストドラゴンの頭にある角を粉状にして患部に振りかける必要がある。」


 ガルトはその場にいる者達に治療法を伝えた。すると、冒険者達が叫んだ。


「………フォレストドラゴンの角だと!!デタラメを言え!ゲイルでも倒せなかったんだぞ!!………仮に角が必要だとして、誰が倒すって言うんだ!!」


 冒険者はパニックになっているのだろう。お互いに顔を見合わせる。皆、自分の命が惜しいのだろう。


「グァァァ!!」

「ゲイ…ル…しっかりしろ……グァァ…!!」


 ゲイルは苦しんでいる。ゲイルのパーティーメンバーもゲイルに必死に励ましているが、彼ら自身も壊死苔(エシゴケ)に侵されている。このままではゲイル達が死ぬのは、時間の問題だろう。


「………俺が行こう。」

「………はぁ?」


 ガルトはその場でフォレストドラゴンを討伐することを示した。騒いでいた冒険者達が一斉に静まる。


「………馬鹿を言え!!フォレストドラゴンは、ゲイル達でも倒せなかったって、何度言えばわかるんだ……!グゥ…」


 ゲイルの仲間、槍使いが叫んだ。痛みを堪えながら、必死に叫んだ。その目からは痛みに耐える意思と、怒りが見える。


「………俺ならば倒せる。フォレストドラゴンを倒し、ゲイルも、国も、俺が救うことは可能だ。」

「………ふざけるなよ、ゲイルを、国を、救うだと!?お前に何ができる!!」


 槍使いが拳を振り上げる。とても顔が赤い。強い怒りだ。俺が嘘をついていると思っているのだろうか。


「やめなさい!!」


 ギルド内に大声が響き渡る。ギルドマスターだ。


「………私は、ゲイルのパーティーに打ち勝った、あなたならば、フォレストドラゴンの討伐許可を、ギルドマスター権限を使い、許可を出そうと思います。」

「はぁっ!?ギルマス、こんな新顔に許可なんて……!!」


 槍使いが叫んだ。しかし、ギルドマスターは槍使い以上の声で再度叫ぶ。


「黙りなさい!事態は一刻を争います!いま彼が討伐に行かなかったら、誰があの厄災を止められると言うのですか!!ガルトさんは、ゲイルさんのパーティーを一度倒しています。たった一人でです!私が討伐許可を出します!!これは、ギルドマスターである、私の決定です!!」


 ギルドマスターが叫ぶと、冒険者達も、槍使いも黙った。


「………ガルトさん、フォレストドラゴンを、よろしくお願いします……。」


 ギルドマスターはガルトに深々と頭を下げて頼んだ。


「……あぁ。必ず討伐し、ゲイルも助ける。」

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