異変
それからガルトは日が暮れるまで授業をした。まとめると、この世界に魔力があり、魔法を使うことで人体から魔力は放出され、放出された魔力は動植物が吸収し、我々は主に食事によって魔力を回復していること、スキルの性質、魔物の特徴と対処法、自主トレーニング方法、等々……
「ありがとうございました!」
四人は元気良く挨拶をして帰った。いや、一人を除いて。結局リナは最後まで話を聞いていた。帰り道、ガルトたちは一緒にリナの家に帰った。
「………また怒られるぞ?」
「大丈夫です!やることはやりましたから。」
(………まぁ、げんこつを食らわないことを祈ろう。)
リナの家では、ゴン!という鈍い音が響いた。外にまで聞こえる程の音の大きさであった。
「痛い……」
「リナァ!!あんた一日中何してたの!!」
「ご、ごめんなさい………」
「あ、あわわわわ……」
………案の定殴られている。父親は後ろでうろたえているだけだ。その日はリナは正座してお説教をされていた。
(………俺も早く寝るとしよう。)
~翌日~
(昨日はリナはかなり怒られていたな。これで冒険者の夢を諦めてくれればいいのだが。………冒険者は危険な仕事、リナには無理だ。さて、そろそろギルドへ行かなくては。いつまでも食べさせてもらってばかりではいられない。なにか、俺も稼がなくては。)
そう思い、ガルトはギルドへと向かった。
「おい……どうするんだよこのクエスト……!!」
「おい!お前、Aランク冒険者だよな!?頼むから受けてくれよ!」
「は、はぁ!?お前が受けろよ!俺は死にたくねぇぞ!」
なにやらギルドが騒がしい。職員も慌てているようだ。冒険者達が依頼掲示板の所に集まっている。
ガルトは掲示板に近づき、それを見て驚いた。
「………グリーンドラゴンだと」
【グリーンドラゴン】。ランクはSだ。魔物の中では最強の部類に入るであろう魔物だ。基本的に【ドラゴン】という名前を持つ魔物は、単体で町一つ滅ぼすことが可能だ。
(しかし、グリーンドラゴンの生息地はここではなかった筈。何故このミート村に………?)
ガルトは不思議に思い、そこにいた冒険者に話を聞いた。
「このクエストは一体どうしたんだ?」
「あ、あぁ……突然グリーンドラゴンが、アストラル国中に飛んできたんだ。それも何十匹と。グリーンドラゴン達は村々を襲い、すでに何百人と被害が出てるんだ………」
「………そんな馬鹿な。グリーンドラゴンは群れでは行動しない筈。何故奴らが………」
「わからない。だが、これだけは言える。なにか、この国で異常事態が起きているんだ。グリーンドラゴンの群れなんて、ここ数百年目撃されていない。」
(ふむ………何故ドラゴン達がこの国中を襲うのかがわからないな………)
「あっ!ゲイルが帰ってきたぞ!!」
ふと見ると、ゲイルのパーティーがボロボロになって帰ってきた。
(………あの様子ではグリーンドラゴンは倒せなかったか。)
「大丈夫か!!ゲイル!!」
「あ、あぁ………死にかけちまった……」
「グリーンドラゴンは倒せたのか!?」
冒険者達やギルド職員が聞く。
………ゲイルは下を向いて申し訳なさそうに言う。
「………ダメだッ………あいつ、グリーンドラゴンなんかじゃねぇ………俺達じゃ倒せねぇ………」
「グリーンドラゴンじゃない?何を言ってるんだ?」
ゲイルは苦しそうに続ける。息切れが止まらない。ただの怪我では無さそうな程だ。
「あいつは………『フォレストドラゴン』に進化しやがった………!!もう、ミート村は終わりだ………!!」