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作者: 林修 大

家には窓がある。それは、当たり前のことだ。ひょっとしたら無い家もあると思うが、そんな家はほとんどないだろう。窓からはいろいろなものが見える。下校中の生徒であったり、散歩中のご老人であったり、時には車も通る。私の家は住宅街の中にあるため車は通勤以外ではほとんど見かけない。そして、田舎でもあるため歩いている人も少ない。そんなほとんど何も起こらないようなところだが、私はその光景を深く、深く、愛している。時には思いも馳せて。

2月の5時頃はなんとも言えない色合いに街は染まる。まだ夕暮れには早いが街は白くなり、ちょっとずつその日の幕を下ろす準備が始まる。その時間が私は大好きだ。特に晴れている日であれば、空の色が極度に薄めた青色のような淡い色になり、空と雲の境目がなくなる。その時、空気は澄み、窓を開けると独特な匂いが流れてくるのだ。意識しないと気がつかないような薄い、独特な匂い。私は、最近になって久しぶりにその匂いを嗅いだ。普段、家から出ることを面倒くさがり極力外出しない私だが、その匂いを嗅いだ時には外に出ずにはいられなかった。

玄関に行き、サンダルを履く。ドアに手をかけ足を踏み出した。外に出た私は、久しぶりに生きている気がした。息を吸い、目を見開いて周りを見る。周りの家々は雨戸を閉め始め、夜に備えているようだった。私はその音を聞いて勿体無いと思う。まだ外は明るく、生きているというのに。我々人間が先に寝てどうするというのだ。今、この時間を体感せずただただ「ああ、今日も、もう終わりか」などと思いながら夜に移っていくのはいささか損をしている。空は少し寂しそうであった。

家の中に戻り、また私は窓から外を眺める。人が通り、車が通り、時間が過ぎていく。確実に今日が終わろうとしている。徐々に黒色の幕が下ろされ人々に終わりを報せる。私は寂しくなった。先ほどの時間が永遠に続けばいいのに、そう思った。それでも、現実は止まらない。ぐんぐん進んでいく。私は置いてけぼりにされそうであった。しがみ付かなければ、この世界から振り落とされそうであった。

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