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改憲を議論する場合に必要なもの

反撃能力が政策転換だとか、ちょっと何言ってるのか分からない件

 盛んに「反撃能力」だとか「敵基地攻撃能力」というモノが、歴史的な政策転換だと報じられている。


 一体どこが?


 イマイチ何言ってるのか分からないのだが、やはり、言葉の暴走が起きているのだろう。


 反撃能力などというモノがそもそも存在しないが、そうした選択をこれまで採って来なかったのが。憲法だとか専守防衛だとか言ってること自体が異常な認識としか言えない。


 国際的な自衛権というのは、三つの要件からなり当たっている。もう、300年とか昔に言われ始めた話で、昨日今日始まったものではない。


 じつは、この点でも日本の認識は異常なのだが。


 自衛権というのは、


 ・急迫性、攻撃を受けた、あるいはまさに今攻撃されようとしている事。日本の新三要件では、ここに集団的自衛権が入るらしいが、国際司法の見解では、全く掠りもしない。集団的自衛権はまた別の要件に拠る。


 ・妥当性、起きている事態に対して、外交手段などではすでに対処が出来ず、武力行使以外にない。


 ・均衡性、攻撃の排除が最小限度を超えた武力行使に至っていない。


 この三つ。


 で、反撃能力ウンヌンという話は、最後の均衡性の話になる訳だが、均衡性。つまり、相手が無人島へ上陸しただとか、巡視船に砲撃しただとかいう段階で、相手国の港や首都へミサイルぶち込む事が正当な訳ではない。


 反撃能力が最小限ウンヌンといった説明は、起きた事態の内容で決まるのであって、平時に定義できるものではない。あくまで、事態が起きて初めて、その事態の内容によってどのような反撃が可能かが決まる。


 10年ほど前、朝鮮半島ではヨンビョン島砲撃事件というのが起きているが、三要件を当てはめれば、北朝鮮から島への砲撃が行われたというのが急迫性。当然、砲撃を受けているのだから悠長に相手国政府へ問い合わせしている暇などない。まずは、砲撃を止める必要があるという事で、武力行使が妥当と判断できる。そこで、島に駐留した部隊によって「反撃」が行われた。


 ここで均衡性の話が出てくる。


 では、韓国軍はどこを攻撃した?


 大規模侵攻があると言って全面北進をしたのか?平壌を空襲をしたのか?


 必要最小限という言葉はここで登場する。


 北朝鮮はあくまで対峙する半島や島の砲台から攻撃をしているだけだったので、ヨンビョン島の部隊が、砲撃地点の砲台へと「反撃」を加えた。



 反撃能力というのはこういうモノだよ?


 例えば、尖閣諸島周辺で、中国の海警船が巡視船を砲撃した。


 「反撃能力」を行使して北京を攻撃する?海警船が母港とする港を攻撃する?


 何をバカな。


 起きた事態は海警船による砲撃なのだから、最小限の「反撃」は、砲撃を行う海警船への攻撃だよ?



 反撃とは、このように起きた事態によってその規模は全く違うので、最悪に備える対地攻撃能力それ自体が、いかなる時にでも用いるモノという話ではない。


 なのに、巡航ミサイル保有がすなわち反撃能力であり、反撃とは巡航ミサイルによる相手国への攻撃だという安直な思考回路は、言葉の暴走以外の何になるだろうか。


 言ってみれば、統帥権干犯と同じ誤りといえる。


 ロンドン条約で統帥権干犯という批判が起きたが、よくよく考えてみれば、それいぜんにも軍縮条約は結ばれている。なぜ、それは統帥権干犯では無かったのか?


 大臣は天皇によって任命されているので、統帥権干犯というのであれば、天皇が任命した大臣の決定に否を突き付ける将校たちこそ、干犯に当たりはしないか?


 冷静に考えれば、アレだっておかしい話だった。


 今回の反撃能力だとか、敵基地攻撃能力についても全く同じことが言える。



 まず、なぜ、そんな能力を日本が持てるのか?



 それは簡単な話で、21世紀に入る頃から射程500kmとか1000kmといった対地ミサイルが核大国以外でも開発や保有が可能なほどに技術が発展したからに過ぎない。


 そして、技術の発展で射程が伸びているのは攻撃ミサイルだけでなく、対空ミサイルの射程も伸びて、つい最近までは100~200kmという認識だったモノが、いまや400km程度にもなる。すでに500km近いものも開発されているという。


 対空ミサイルがそれだから、対抗するように、攻撃する側も射程が伸びたという話。


 すでに北方領土から北海道の東半分は対空ミサイルの射程圏内。


 開発が進めば中国沿岸から石垣島や宮古島周辺まで射程に入ってしまう。


 

 そんな事が現に起きている。起きようとしている時に、ミサイルなんて核や毒ガスを積んだ弾道ミサイルしかなかった時代の話をして意味があるのだろうか?



 均衡性という要件がここで出てくる。


 相手は日本の領空すら対空ミサイルの射程に収め、はるか安全な自国領域から攻撃ミサイルを飛ばして来る。


 こんな状況で、「憲法があるから相手国の領土は攻撃しない!」だとか「専守防衛は相手の国を攻撃しないんだ!」といって何の意味があるだろう?

 まず、その対空ミサイルやレーダーを破壊しないと自分たちの安全すら確保できないというのに。


 反撃能力という言葉ありきの暴走ばかりで、専守防衛や憲法解釈が定義された時代とは全く違う現実の環境がまるで認識されていない。



 こんな状態で時代遅れな議論ばかりを行って、何が安全保障なのだろうか?


 反撃能力などと粋がっていても、実は何の事はない。


 ようやくNATO加盟に足を踏み出したばかりのフィンランドなど、日本の様なバカげた議論などなく、時代に即して射程1000kmにもなる巡航ミサイルの導入を粛々と決定している。

 時代の流れ、兵器の進歩に合わせた決定でしかない。政策転換だとか、歴史的なウンウンは全く関係ない話なのだが。




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― 新着の感想 ―
[一言] 根本的な話として、何をしたいのか、それがわかってない馬鹿だから、自分が何を言っているのかもわかっていないという状態なんだろう。 そもそも論として、国家戦略がないんだから、そらぁ軍備の有効利…
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