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離島振興(6,852の島々)  作者: 平田 久
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宇久島の未来

【第一章 宇久島の将来】

平田信次は、昭和42年宇久島の零細農家の次男として生まれた。島の神浦中学を卒業すると、横須賀の少年工科学校に進学、防衛大学校を卒業して陸上自衛官の路を選んだ。


2016年、佐世保の相浦駐屯地に、水陸機動団が発足すると同時に同団に配属され、2022年相浦で定年(55歳)を迎えた。


駐屯地がある佐世保から宇久島までは船で約2時間、島では父は概に他界し、80歳を過ぎた母が一人暮らしをしていた。退職後は島に戻ることを決めていた信次は、月に一度は帰省していた。


退職をする前年の2021年、島はメガソーラー発電の設置で1,800人の住民を2分する騒動が起きていた。農業では生計が成り立たたず、高齢化した農家は一時的な補償目当てに賛同する人もあった。信次も当初は同じ考えであったが、いざ自分が定住を決断すると、島の変貌する様を想像し、反対の意志が強くなっていった。


島では毎年、同窓生と廃校となった神浦中学の運動場でバーベキューを行い、親交を深めていた。同窓生のなかに、三井重工でSMR(小型モジュール炉)を開発している旧友の悟がいた。このSMRは30年間メンテナンスフリーで、日本では三井重工、住友製作所、芝濱電機が開発をしていた。実用化は2030年頃と発表されていた。


「信次、島の1/4も潰して、ソーラー発電を設置するのを、どう思っているんだ。」


「俺も、最初は賛成派だったんだけど、・・・今は違う」

「潮風もあるし、台風もある、・・・何年持つのか・・・」

「その後は、・・どうなる・・・」

「今は、反対派だけど、・・・島は高齢化で・・・未来が見えない」

「産業を起こすにしても、・・・人材もインフラもないし・・・な~~」


「SMRのプロジェクトをやらないか」

「今、日本の3社はプロトタイプは出来ているが、長期の実証実験が出来ない」

「ソーラー発電の代わりに、SMRの実証実験を島で引き受ければ、毎年数十億円の資金が入る」

「ソーラー発電の設置を反対している人は、設置を撤回させても・・・その後のことは白紙だろう」

「使用する場所は、この廃校跡地でも可能だ」

「どうだろう、・・・一緒に計画しないか」


「それは・・・いい考えだ」

「マクロ発電ならば、実用化すれば自衛隊の移動電力としても活用できる。」

「それに、全国の離島(6.852)や山間部の電力として数百台は設置できるかもしれない。」

「その先兵をきれるなら、絶好のチャンスになる。」

「余裕のある電力を活用した、新しいビジネスも可能性がある。」

「是非、やろう、入って来る資金を活用したサービスを提案すれば、島民の説得は出来ると思う。」

「島のことは、俺に任せろ・・・」

「悟は、3社に向けた具体的提案と、実証試験の事業計画を頼む、」


こうして、二人は意気投合し、SMRの実証試験誘致に向けた活動を始めた。


これは、2021年夏のことである。

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