スキル〈開錠の儀〉
改稿し、再投稿をしております。
なんとか頑張りたいと思いますので、お付き合いいただければ幸いです。
「何が出るかな、何が出るかな♪」
荘重な神殿で、フザケているとしか思えない女の朗らかな声が響く。だが、フザケているようでフザケてはないのだ。
彼女はカーテンのようなトーガにも似た薄布の衣装を身に纏い、ぽよんぽよんぷるんぷるんと、お胸もお尻も弾ませつつ彼女は聖句を唱えて舞っていた。
そのダイナミックな揺れには、毎度の事ながら出席したお父さんお兄さんが眼を奪われ、妻から、彼女から、そして姉や妹から詰られて家族会議の上に地位を下げてしまうのだ。それはこのパンドラ世界の一種の風物詩――。
――〈開錠の儀〉。
十二歳を迎えた少年少女は、〈パンドラ神殿〉に赴いてスキルを開錠された。この世界を守護する女神パンドラの力を借り、女神官は先が鍵状になった錫杖を振るって彼ら彼女らに秘められし力を拓くのである。
孤児院育ちの少年クリスも、今日、十二歳の誕生日を迎えた。
金髪青眼のとても可愛らしい少年で、もしも女装していれば、彼が男であることを見抜けたのは、鑑定、看破系のスキルの持ち主でなければ難しかったに違いない。
それほどまでに可愛らしい少年で、ただし、彼が男の娘である証拠として、揺れて弾む女神官のお姉さんの大きなおっぱいには、眼が釘付けとなってはいたのだが。それを孤児院のシスターのお姉さんは、笑っていない笑顔でにこやかに見詰めていた。
「何が出るかな、何が出るかな♪」
女神官さんの聖句とおっぱいの揺れももはや佳境。ダイナミックに弾んで暴れ、男の娘のクリスも思わず拳を握り締めてしまう。そうして彼の熱い情動が膨れ上がったところで、女神官のお姉さんは、先が鍵状になった錫杖を振り下ろす。
汗の飛沫が散って、切れ長の瞳はあまりにも蠱惑的。クリスも例に漏れず、汗ばんだ薄布の色っぽいお姉さんにドキドキと胸を昂ぶらせて、その先っぽを受け止めた。
「パンドラ、オープーン♪」
朗らかな声ではあったが、ひやりとする真剣さが。神下ろしの舞とはそうしたもので、彼の胸に突き付けられた鍵型はガチャリと捻られる。
荘厳な輝きに女神官は、
「クリスくんのスキルは~、――えっ?」
と、これまでにはない反応を見せた。クリスも、孤児院の先輩達や町の子供達の〈開錠の儀〉を見て来たことはあったが、このような反応ははじめてで。
「あの、ぼくのスキル、何かおかしいことが……」
「あっ、いっ、いいえっ、そう言うわけじゃないのよ、ただ、似合いすぎてて驚いてしまったと言うか……」
んぅ? とクリスくんは小首を傾げてしまう。
「うわぁ、すごい可愛い……」
「むっ、ぼくは男の子なんだから、可愛いなんて言われたくない!」
「あっ、ごめんね。じゃあ、クリスくんのスキルは――」
その時、女神官のお姉さんは少しだけ言い淀んで、
「クリスくんのスキルは、『姫騎士』です!」
「――えっ?」
「えっ?」
クリスの可愛らしい瞳が可愛らしい顔で見開かれた。その後ろの付添いのシスターのお姉さんは、鼻の穴まで膨らんでいた。
クリスの小さな躰がぶるぶると震え出してしまう。
「そん、な……、『姫、騎士』……」
「えっ、えぇ……」
窺うような女神官と、気を取り直して心配そうにするシスターのお姉さんの前で、
「嫌だぁああああああ~~~~~~~~~~~~~~ッ!」
クリスの慟哭が響き渡り、その姿もやっぱり可愛かったのだと言った。
お読みいただきありがとうございます。
以前よりブックマークしていただいている方は、再投稿の形となりたいへん申し訳ありません。
設定の根本的な部分から変更いたしましたので、このような形でさせていただければと思います。前回のままでは、ごちゃごちゃとしすぎていた点、また、上手く活かせてもいなかったと思い、このようにいたしました。前の方が良かったと言われないように、と願う所存であります。
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どうぞよろしくお願いいたします。