1.SSRだそうです。
これは、ある星のある大陸での物語。
その大陸には4つの国があります。
特に力は持たぬが繁殖力に優れた人間が住む人間国。
高い技術と科学力を持つドワーフが住むドワーフ国。
精霊の加護を受け、自然と共に生きるエルフが住むエルフ国。
そして、魔王によって纏められた、少数種族の連合国である魔王国。
魔王国は魔王の手腕により急速に発展した結果、人口が増加、食料難が起きました。
魔王は他国への進軍を決意、その領土を広げ始めました。
そんな中、ドワーフ国が万物鑑定装置を開発。
この装置の誕生によって魔王国以外の国は各々が自分の適性を認識し、戦争は激化してゆくのでした。
**************************
ここは人間国の王都でのお話。
「それでは、今年の<成人の儀>を開始します。」
ドワーフ国からの使者が拡声器を片手に声を張り上げます。
この国、人間国では年に一度、成人の儀が行われます。
その年に12歳になった子供が自分の適性を確認するためです。
「次はお前の番だ。プレミア。」
父が冷めた目でこちらを見ます。
目が合っているはずなのに、その目はどこかうつろです。
「恥だけはかかせないでくださいまし。」
お義母さまは扇子の隙間から私を睨みつけます。
その手には義妹が抱かれており、すやすやと眠っています。
エルフ国からと嫁いできた母は私を生んですぐに亡くなり、人間族の中から選ばれたお父様の嫁がお義母さまです。エルフ国からすれば、自国の姫が亡くなってすぐに人間の嫁を迎えたこの国の王は軽蔑の対象であるため、現在エルフ国との仲は非常に険悪なものとなっています。
お義母さまは未だ男子に恵まれておらず、このままだと私が婿を取る形で王位に就くことになります。それが気に入らないようで、侍女に命じて私の部屋のものを勝手に売ったり、突然やってきて私の部屋をを義妹の部屋にすると言い出し、私を元々庭園管理用具入れだった小屋においやったりと、嫌がらせに力を尽くしているようです。
例え、普段ボロ小屋に追いやられていたとしても、ご飯をもらえなくてもつらくなんてありません。
生きているだけで幸せなのです。
<成人の儀式>は位の高いものから順に行われます。
今回の最高位は王族の私。
「行ってまいります。お父様。お義母さま。」
私は笑顔で軽くお辞儀をして、機械の前へ進みます。
背丈は小さいものの、ひげをそった清潔感のあるドワーフの方に案内され、箱の中に手を入れます。
その瞬間、空中に大きな映像が映し出され虹色に輝きます。
「おい、虹色だぞ!」
「ついに、人間族にも勇者様が現れたのか!」
この演出を見た人々が次々に歓声を上げます。
この万物鑑定装置は何かを入れた際の演出で希少性や有用性がわかるようになっているそうです。虹色は以前ドワーフ国で現れた勇者が見せた色であり、それ以来、その存在は確認できていないそうです。
光が収まり始め、結果が映し出されます。
_____________
鑑定結果:SSR素材
名称:プレミア・ヒューマニア
使用可能部位:全て
・黄昏糸 ★★★★★SSR
プレミア・ヒューマニアの体毛。魔力を50%増幅させる効果を持つ。また、金属との親和性も高く、金属の硬度及び弾性限界を引き上げる。
・金剛眼 ★★★★★SSR
プレミア・ヒューマニアの眼球。空気中の魔素を吸収し、魔力として使用することが可能。
・万能血清 ★★★★★SSR
プレミア・ヒューマニアの血液。万病に対して効果を発揮する血清。
・魔力液 ★★★★☆SR
プレミア・ヒューマニアの体液。魔力を多く保有する。摂取することで魔力最大値の上昇、若返り等の効果が得られる。
・大地の骨 ★★★☆☆SR
プレミア・ヒューマニアの骨。植物の成長率を100%上昇させる。また、魔力を多く保有しており、土地の活性化にも効果がある。
・Pbの心臓 ☆☆☆☆☆
プレミア・ヒューマニアの心臓。精巧にできており、芸術的価値が高い。
_____________
映し出された結果は人間のそれではありませんでした。
「これは...一体」
訳が分からぬまま立ち尽くす私。
静まり返る人々。
目を細めるドワーフとお父様。
「プレミア様は素材としての適性があるようですね。」
沈黙を私の問いに答えたのはドワーフの使者でした。
ドワーフの使者は黒い笑みを浮かべて「以上です」と私を列から外します。
王族用に用意された席に戻った私は、よくない想像ばかりしてしまいます。
家畜のように殺され、食卓に並ぶ自分や、実験動物として監禁される自分が頭の中に浮かんでは消えを繰り返します。
私はいったいどうなってしまうのでしょう。
読んでくれてありがとうございます。
感想や評価を頂けると、作者の励みになります。
よろしくお願いします。