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ドブネズミ  作者: 山口 にま
第四章 スクープを求めてパキスタン辺境州
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国境での出来事

もう一本の映像は趣が違った。一騎のナレーションは入っていない。若干画像が不鮮明であったりブレがあったが十分視聴に耐えられるレベルだ。

映像にはショールを目深に被り、更にバンダナで目から下を隠した男達が映っていた。場所はごろた石ばかりが目立つ山間部。

字幕「ここはアフガンとの国境。村の名前は口外しないことを条件に連れて来てもらった」

国境とは名ばかり。アフガニスタンから来る車両はほぼノンストップだ。大型のトラック、日本製の廃車寸前のトヨエース、中古車を満載した車両運搬車がパキスタン国内に入って来る。

字幕は「日本の中古車。次は、韓国のヒュンダイ。続々と外国産中古車が入って来る。パキスタンでは中古車の輸入は表向き認められていない。新車を正規ルートで日本から輸入すると数万ドル、日本円にして数百万円以上の関税がかかるのでアフガン経由の密輸が後を絶たない」しかし画面には税関らしい建物はない。

一騎は路肩に停めた車から撮影しているらしい。一台のボロボロのライトバンがカメラの脇を通り過ぎた。一騎達の車はライトバンを追いかけるように発進した。


やがてライトバンが建造物の門を入ると、一騎達を乗せた車もそれに続いた。ライトバンからは二人の四十代ぐらいに見える男達が降りて来てライトバンの荷台を開ける。男達はアフガニスタンの民族衣装の灰色のマントを肩にまきつけていた。

ライトバンの後ろに一騎達の車は止まった。一騎の車からは三人のパキスタンの男達が降り、それに続いてカメラを持つ一騎も降りる。一騎はカメラをカバンに隠しているらしく画像が乱れている。

突然の異邦人の出現に驚いたライトバンの男達は、一騎の事を

「チャン?(中国人か?)」

と商売相手のパキスタン人に聞いている。

「ジャパニ」

パキスタン人が日本人だと答えた。

「アッサラーム」

一騎が挨拶をしながらアフガンから来た男達に握手を求めるも、男達は握手を拒んだ。ライトバンの荷台に段ボール箱が搭載されている。早速荷を解いて密輸品の受け渡しだ。アフガンの男達は一騎の前で箱を開ける事を嫌がったが、パキスタンサイドの男達が中身を見ないと金は払えないと言っているのか、何某かのやり取りがあり、アフガンの男が素早く段ボールを開けて中を見せた。パキスタンの男が箱の中に手を伸ばし、ビニール袋を開けて、更に新聞紙の包装も解く。中から現れたのは上部が平らに均された暗褐色の塊だった

字幕「アヘン樹脂」


パキスタンの男はその場でアフガンの男にパキスタン紙幣の札束を渡した。売り手は金額を確かめてから、持っていけと言わんばかりにトランクの中を指差す。バンダナで顔を隠したパキスタン人二人は自分たちの車のトランクに段ボールを運び込んだ。カメラを隠し持った一騎は長居は無用と言わんばかりに先に車の後尾座席に乗り込み、ガイドと思われる男もそれに続く。


車が発車した後に、一騎は運転席の男に聞いた。

「いくら渡した?」

男は答えなかった。


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